ミステリは意外と慈悲深い
たきるか
1.
チェンバロの鳴る朝の庭 薔薇の庭
早朝のメール「桜桃忌に死ぬよ」
太陽と愚者の正位置春の闇
養花天なんどやってもいる悪魔
遠雷やリュートつまびく放浪者
雷鳴に無きものとされ懺悔の詩
生かされている首筋を蜘蛛の糸
これも嘘あれも嘘よと蚊食い鳥
バッカスに絡んだ朝顔だけ赤い
二度と同じあかには焼けぬ大夕焼
八月 神様が心中してくれる
タピオカを吸うやりくちで吸う無月
誰かいた気配を堪えている夜長
落葉やわらか土踏まずの潤む
秋に埋めた猫の鼻みたいななにか
幸せな王子の朽ちて星月夜
フライパンから落ちて潰れた月が綺麗
ホームズとポワロに似せた雪だるま
あたま割れ目玉散らばる雪あかり
薔薇みたいな男が薔薇を喫っていた
ミステリは意外と慈悲深い たきるか @takiruka
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