第16話 魔王と勇者と、お友達

「リスナーの皆ごきげんよう!魔を滅する聖なる勇者、如月きさらぎ ネコル様のご登場だよ!」


・ごきげんよう〜!

・ネコちゃんやっほー

・今日も猫耳がピョコピョコしてますねぇ


「猫耳だけじゃなくて尻尾も揺れてるぞ〜!ほら、ふりふり〜」


・揺れとる揺れとる

・相変わらず元気やなぁ


「今日は同期とのコラボ!つい先日に私のお仲間になったあの子と、僕の対極の子を連れてきてるよ〜!」


・お仲間…まさか!

・またあの猫耳が見れるのか…?

・対極……

・しれっと敵さん来てるくない?

・勇者だよねネコちゃん…?


「それではまずは私の新しいお仲間から!どうぞ!」


 ───────────



「皆さんこんばんわ!ネコルさんと今日コラボをさせてもらう、永遠を生きる魔女、永遠乃とわの メルトです!」


 久しぶりのソロ配信から2日後、今日は本社で、同期である如月きさらぎ ネコルさんと、グリモ・ネクローゼさんの2人とオフコラボ配信をしています!



「こちらこそ!今日はよろしくね〜!」


「はい、こちらこそよろしくお願いします!」


・メルちゃんだー!!

・そーいやまだコラボしてなかったか!

・よろしくー!

・あれ、猫耳じゃないの…?


「そうそう、僕もてっきり猫耳で着てくれると思ったんだけどなぁ…」


「いや…あれは私も恥ずかしくて…」


・えーー…

・猫耳可愛かったのに…

・もう1回ぐらい使ってあげようよー



「…Live:storyライブ ストーリーって僕以外に猫耳持ってる人いないからさ?一緒に配信できたら良いな〜って思ってたんだけど……ダメ?」


 そう言って、ネコルさんは潤んだ瞳で私を上目遣いで見上げてきて……同期の頼みを無下にする訳にはいかないですし、仕方ないですね…



「…これで…良いですか…にゃ?」


「うん!ありがとうメルトちゃん〜!」


「わわっ…?!」


 アバターを猫耳付きに変更すると、ネコルさんは私にお礼を言いながら抱きついてきた。


「ちょっとネコルさん、いきなり抱きついたら危ないですよ…?」


「ごめんごめん、メルトちゃん凄い可愛いから止められなくてさ〜♪」


「……そうですか……」


「あっ!照れてる〜!」


「て、照れてないですから!!」


「本当かな〜?」


 そう言って、ネコルさんはニヤニヤと笑いながら私の顔を覗き込んでくる。


 …画面の向こうの永遠とわリス達と違って、ネコルさんの場合は私の目を正面から見て伝えてくるから、可愛いの言葉が凄く恥ずかしくなります…!



・…見守る事しかできねぇ

・美少女の絡みって尊いしか出てこないよな

・照れてるメルちゃんも、からかうネコちゃんも可愛い…

・禍辻とは大違いだよ…

・ライスト内では珍しい綺麗な百合の花が咲いてる……


「そ…そんな事より!もう1人コラボ相手いるんですから、ちゃんと紹介しないとですよ!」


「むむっ…上手く話を逸らされたなぁ…まぁ、確かにそうだね。今日のもう1人のコラボ相手は、メルトちゃんと同じく同期の魔王様!どうぞ〜!」



「………………」



「…あれ、グリモさん…?」


 意識を切り替えたネコルさんが、もう1人のコラボ相手のグリモさんに呼びかけても、返事が返ってこない。


「さっきまで此処にいましたよね…?」


 配信画面から視線を上げて、つい先程までグリモさんが座っていたはずの椅子に視線を向けても、そこにグリモさんは居なかった。


・グリモ・ネクローゼちゃんか

・ネコルは勇者、グリモは魔王…

・その2人が同じ部屋で一緒にいる…

・つまり…どうなるかわかるかい?メルちゃん


 突然消えたグリモさんを疑問に思っていると、コメント欄にそんなコメントが流れてきた。


「ま…まさかネコルさん…魔王のグリモさんを…!」


「いやいや、何もしてないからね?!」


 私がそう言うと、ネコルさんは慌てて無罪を訴えてくる……。



「…ふふっ。冗談ですよ、別に疑ったりしてません」


「な…なにぃ?!…ぼ…僕が揶揄からかわれた…?!」


・仕返しされちゃったなネコちゃん

・メルちゃん冗談とか言うんやな

・何気に初めて?

・でもそんな所もー?

・可愛い!!


「まぁ、そんな事より…グリモさんを探さないとですね」


「そんな事よりって…僕への扱いが雑だよー!改善を申し立てます!」


・却下します。

・却下ですねぇ

・無理かなぁ……


「だそうですよ、ネコルさん」


「お前ら僕の味方もしろよー!」


 コメント欄を見たネコルさんは、ぷりぷり怒りながら部屋の中にあるロッカーの前まで大股で進んでいって…


「ねぇ、グリモちゃんもそう思わない?!」


 その中に隠れていた、グリモ・ネクローゼにそう問いかけた。


「ひぃっ?!」


 ネコルさんは隠れていたグリモさんを強制的にロッカーから引きずり出して、グリモさんの椅子に座らせる。


「…よく居場所がわかりましたね…ネコルさん」


「前に僕とコラボした時も同じ場所に隠れてたからね〜…グリモちゃん凄い人見知りみたいでさ」


 そう私に言ってから、ネコルさんは椅子の上で丸まっているグリモさんの方に、視線を向けて話しかける。


「ほら、グリモちゃんも挨拶しよ?」


 その言葉を受けて、グリモさんが膠着状態を解いて話し始める…どうやら、1度会ったことのある人には耐性ができるらしい。


「魔王城にて孤独を生きる魔王、グリモ・ネクローゼです…よ、よろしくお願いします…!」


・よろしく〜!

・魔王ちゃんは相変わらずやなぁ

・まぁ人見知りにコラボは辛いよな

・頑張って


「あ…あの…永遠乃さん…隠れたりして、ごめんなさい…初対面だと、どうしても緊張しちゃって…」


「全然気にしてないので大丈夫ですよ。だからグリモさんも気にしないでください」


「あ…ありがとうございます…!」


 そう私が口にすると、グリモさんは安心したように表情を緩ませる。


「それじゃあ3人揃った事だし、そろそろ配信始めようか!」


「は…はい…!」

「わかりました!」


「という事で、今日は武蔵野さんを抜いた、僕たち同期3人でコラボ配信やってくよー!視聴者の皆よろしくねー!」


・よろしくー!

・武蔵野を除いたのは何故?

・ここに混ざったら燃えるからナイス判断だろ

・百合に挟まる男は重罪、これは昔から決まってるんや……

・仕方ない事やな



 その後は無事、認められたお陰で私に対しても耐性を作ることに成功したグリモさんと一緒に、ネコルさんのリードでスムーズに会話を広げながら、今日のオフ配信を終えました…。



 ───────────

 <配信終了後>



 グリモさんは配信が終わってすぐに帰ってしまっていて、この部屋には私とネコルさんだけが残されていた。


 配信がちゃんと終了している事を確認してから、私も帰る準備を進めていると…


「メルトちゃん、お疲れ様〜!」


 …ネコルさんが私に労いの言葉をかけながら再度抱きついてきた。



「…ネコルさんって本当に抱きつくの好きですね…これで何回目ですか?」


 配信で会話してる間にも、ネコルさんは何回も私に抱きついてきたせいで次第に慣れてきてしまって、今では最初のような気恥しさは感じなくなっていた。


「メルトちゃん可愛すぎるんだもん〜!これは仕方の無い事なんだよ!」


「可愛い可愛いって……ネコルさんだって可愛いですよ…?」


 何回も言われた仕返しのつもりで、そう言葉を返してみた。

 多分ネコルさんの事だから「当たり前でしょ〜!」とか、「照れるな〜!」とか言ってくるんだろうな。


 …と思ったけど、何故か抱きついているネコルさんからの反応が返ってこない。



「…ネコルさん?」


 抱きつかれた腕が緩んでいたので、一旦ネコルさんから距離を取って顔を覗き込む。



「…へ…?」



 つい先程まで笑顔で私に抱きついていたネコルさんは、今は顔を耳まで赤く染めて、呆然とした顔で私を見つめ返していました。


「顔、赤くなってますよ…?」


 私がそう言うと、ネコルさんは私からバッと距離を取って、顔を手で覆って赤くなった顔を隠してしまう。



「あ…赤くなってなんかないよ!」


「…私には散々可愛い可愛いって言ったのに、自分がされるのは弱いんですね?」


 私をからかってきたネコルさんの意外な弱点を見つけて、自然と口角が上がってしまう。


「そ…それよりも!!」


 そんな風に赤くなったネコルさんを見つめていると、急にネコルさんが大声をあげて話を切り替えた。


「その…あの…」


「……?」


 ネコルさんは何か言いたい事があるのか、挙動不審になりながらも、ゆっくりと私にスマホを差し出してきた。



「…これ、僕のリアルのアカウントなんだけど…も、もし良ければ…友達に…ならない…?」


 配信の時とは違って、自信なさげにそう私に言ってくる彼女を見て、今度は仕返しとか関係なく、本心でネコルさんの事を可愛いと思った。



「…はい、なりましょうか。友達」


 そして、この人と過ごす時間を楽しそうだと、そう感じた…だから、私は数百年ぶりに友達を作ることにした。

 ……配信上の付き合いではなく、現実での友達。



「ほ…ホントに良いの…?配信とか関係なく、遊んでくれる…?」


「友達ですからね、それぐらい付き合いますよ」


 私がそう言うと、自信なさげで不安そうな顔をしていたネコルさんの顔は喜びの感情で満たされていって、凄い嬉しいって思ってくれてるんだな…と、聞かなくてもわかった。



「…如月きさらぎ ネコルこと、猫間 希咲ねこま きさきだよ!これからよろしくね!」


永遠乃とわの メルトこと、メルトリーゼです。こちらこそ、よろしくお願いします」


 配信の時のような元気を取り戻した彼女の自己紹介に、私も自己紹介を返す。



 こうして、私には久しぶりにお友達ができました。




 ✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -

 もしも読んでくれた人がいるなら…


 初心者の執筆なので、言葉の違和感や誤字などがあるかもしれません。もし見つけたら遠慮なく指摘していただけると助かります。


 更新頻度も不定期ですが、続きが気になるって思ってくれた人がいれば嬉しいです。


[作者コメント]

 永遠を生きるメルトちゃんに、配信だけの付き合いじゃない、ちゃんとした友達を作ってあげたくなったんです…


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