第6話 社長室での会話②と優しき2人の裏話


「それでは改めて…夜遅くに来てもらって悪かったわね、メルトちゃん」


「ぜ…全然大丈夫です…!」


 怒号が響いてから少しの時間が経ち…


 今の柏木かしわぎさんは、つい先程まで社長に向けていた般若はんにゃの面が外れて、優しい表情を私に向けてくれています。

 …それでも、さっきの気迫や般若の面を思い出して少し怖く感じてしまいます…社長さんだって、部屋の隅で涙目になってますし…


「それじゃあ…そろそろ、本題に入るわね」


「…はい」


 そう言うと、柏木さんが纏う雰囲気を瞬時に真面目な物に変えて、こちらに真剣な眼差しを向けてきた。

 これは、こちらも真剣に答えないといけない。


「…コレの事なんだけどね」


 そう言って、柏木さんは何枚かの書類を見せてくる。


「あっ、これ…」


 その書類は、私が最初に企業に書いて送った、志望理由などが記された履歴書だった。


「コレに記されてることで、2つだけ質問に答えて欲しいのだけど…いいかしら?」


「質問…ですか?」


「そう、本当は以前に来てもらった時にやる筈だったんだけどね…どこかのクソ社長が、私のいない時に勝手に対応してたみたいなのよね」


 そう言ってから、柏木さんは再度、隅で縮こまっている社長を睨む。もうやめてあげようよ…社長さん泣いちゃってますよ…?


「…念の為に言っておくけど、今からする質問には正直に嘘偽りなく答えてちょうだいね」


「…わかりました。何でも聞いてください」


 私がそう答えると、柏木さんは1呼吸ついてから、履歴書を広げて質問を始めた。



「まず1つ目…特技の項目に魔法が使えると書いてありますが、それは真実ですか?」


「はい。間違いなく真実です」


「まぁ、そうよね…一応、それを証明する事はできますか?」


「魔法が使える証明…ですか」


 ここで使っても良いのは…これぐらいかな。


「これで証明できますか?」


 柏木さんに向けて人差し指を立てて、その指先に雷を発生させる。

 殺傷力0の少し痺れるぐらいの威力で、もし暴発しても問題ない魔法である。


「…それで十分よ、もう消していいわ」


「なら良かったです」


 無事に証明ができて良かった…これ以上となると、流石にこの場所では少し危なかった。


「改めて思うけど…本当に本物なのよね、メルトちゃん」


「はい。正真正銘の不滅の魔女、メルトリーゼです」


「そうよね…本当に本物…」


 そう自己紹介すると、何故か柏木さんは深い溜め息をついてしまった…私、なにかしちゃったのかな…?


「それでは、2つ目の質問です。…こちらが1番重要ね…」


 柏木さんは、より一層真剣に変わった…鬼気迫るとも言える表情で私を真っ向から見つめてくる。一体、どんな質問を…



「…貴女が、この会社を志望した理由はなんですか?」


「…え?」


 志望理由…?えっ、そこに書いてあるはずですよね?


 どんな事を聞かれるのかと身構えていた分、少し拍子抜けしてしまった私と違って、柏木さんは終始真剣な眼差しを向けてきている。


「そちらに書いてある通り、お金が欲しかったからです」


「…えっ、本当にお金が欲しかったからなの?」


 そう正直に答えると、何故か柏木さんは先程までの真剣な表情を崩して、驚いた顔で聞き返してきた。


「はい。最初は別の方法を考えてたんですけど…何故か使い魔に止められてしまったので、あまり家から出なくても大丈夫らしいVTuberになろうと思って志望しました」


「別の…?その、最初に考えてた別の方法って、どんな内容だったのかしら?」


「えーっと…最初は何処かの国を襲って、お金を奪ってくるのが手っ取り早いと思ってました」


「………危なかったぁ…本当にギリギリセーフだったのね…」


 最初に実行しようとした別の方法の内容を伝えると、何故か柏木さんが身体を脱力させて安堵の息を吐いた…

 小声だったから何を言ってるのかは聞こえなかったけど、体調でも悪いのかな?


「…使い魔くんにノーベル平和賞でもあげた方が良いと思うわね…」


「…あっ、それ僕も以前そう思った。本当に人類の救世主だよね使い魔くん」


 いつの間にか部屋の隅から戻ってきていた社長さんと柏木さんが、私から距離を取って会話を初めてしまった。…なにを話しているのか聞こえなくて、少し不安になる。


「あ…あの…」


「あっ、放置しちゃってごめんね。メルトちゃん」


「べ、別に謝らなくても大丈夫ですよ?」


「話してる相手を放置するのはダメなことなのよ?でも、そんな風に言ってくれるなんて、メルトちゃんは優しい良い子ね…」


 質問をしていた時の鬼気迫る真剣な表情から、聖母のように柔らかい表情に変わった柏木さんが、私のことを撫でてくれる。


「わっ…いい子いい子なんてされるの、久しぶり…です…」


「これで質問は終わりよ。遅い時間なのに質問に付き合ってくれてありがとうね」


「…全然大丈夫です……」


 わざわざ質問に答えたお礼までしてくるなんて、やっぱり電話の時に感じた通り、柏木さんは気遣いのできる優しい人です……



 それに、撫でられるのも…心地よくて…眠たく…なってきま……す………





 ─────────

 <柏木 菫かしわぎ すみれ 視点>



「…寝ちゃったわね、メルトちゃん」


 私に撫でられたまま寝てしまったメルトちゃんを、ソッと近くのソファに寝かせる。


「まぁ、こんな遅い時間に呼んじゃったからね…初配信終わった直後だったってのも1つの理由だと思うよ」


「…元はと言えば、事前に志穂がちゃんと伝えてくれてれば、わざわざこんな時間に呼ぶ必要もなかったのよ?」


 そう言って、私に話しかけてきた…Live:storyライブ ストーリーの社長こと、遊波 志穂ゆうなみ しほに鋭い視線を向ける。


 本来ならば、間違いなく私より偉い社長にこんな眼差しを向けるなんて許されない。

 けれど、学生時代からの幼馴染である私と彼女は、立場は変わっても、他の社員がいない時は昔とほぼ変わらないような関係で接している。


「それは何回も謝ったじゃん…流石に反省したよ」


「…その反省がずっと続く事を祈るわ…」


 反省をしたと告げる志穂に言葉を返してから、すやすやとソファで眠っている、永遠乃とわの メルトちゃんに視線を移す。


「メルトちゃん…優しい良い子だけれど、これからの配信活動が少し不安を感じるわね…」


「やっぱり、菫もそう思う?」


 どうやら、志穂も同じ事を思っていたらしい。可愛くて優しい、魔法が使えるとゆう他のライバーとは違う特異性もある。…でも…


「…良い子すぎるね」

「…良い子すぎるわ」


 良い子なのは間違いなく良い事ではあるけれど…魔法が使えてしまうメルトちゃんに、今後なにか悪い考えを持った誰かが接触する可能性は低くない。

 その時、優しいメルトちゃんが悪い考えを持った人に唆されてしまえば大変な事になってしまう。


「…メルトちゃんを守る盾が必要だね」


「そうね…同期の3人や、1期生、2期生の中で何人か声をかけましょう」


 配信に慣れて、ある程度の常識を身に付けるまでは、メルトちゃんにはコラボとして盾を用意した方が良いだろう。


 お互いの考えが共通した私達が、善は急げと行動を開始しようとした時…


「…それ、最初に私がやってもいい?」


 扉の前に、1人の女性が立っているのが見えた。



 …よりにもよって、コイツに見つかったか……



 ✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -

 もしも読んでくれた人がいるなら…


 初心者の執筆なので、言葉の違和感や誤字などがあるかもしれません。もし見つけたら遠慮なく指摘していただけると助かります。


 更新頻度も不定期ですが、続きが気になるって思ってくれた人がいれば嬉しいです。


[作者コメント]

ライバーの案が湧かないよォ…元々ネーミングセンスあまり無いんです…

皆さんの♡や☆で凄いモチベーションもらってます!本当にありがとうございます!


✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -✂

 <作者> 誰か1期生、2期生のライバーの案くれません…?もしかしたら採用するかも

 武将の武蔵野 玄冬むさしの げんとみたいに、○○(役職or名称)の○○(名前)って感じで書いてくれると助かります。

✂︎- - - - - - - -キリトリ- - - - - - - - - - -✂


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