第3話 スタートからそれほど遠くもないゴールへの道

 それほど高くない山の、それほど高くないところへ着くのには、それほど時間はかからなかった。


 およそ15分くらいか。


 ふむ、ちょうどコンビニに行く感覚で正解だった。


 岩肌いわはだがゴツゴツしているけれど、それほど登るのに苦労はしなかったし。


 体力に自信なんてない、だが農業をやっていたおかげで、人並み以上のスタミナはついていたようだ。


 あんがい農家も悪くはないかもな。


「さてと……」


 のっぺりと切り立った、しかしそれほどハードでもない岩壁がんぺき一角いっかくに、大きな、しかしせいぜい大人がすんなり入れる程度の穴っぽこがいている。


「これじゃあ、入ってくださいと言わんばかりだな」


 もしかしてこれは、魔王ガモチョスとやらの『わな』なのでは?


「しかしまあ、せっかく来たんだし」


 入ってみよう。


 俺は居酒屋いざかや暖簾のれんをくぐる軽さで、洞穴どうけつの中へ足を踏み入れた――


   *


「暗いな……」


 まあ、洞窟どうくつの中なんだし、当たり前か。


「おっ……」


 明かりだ。


 それほど遠くないところに、ぼわっと明かりが見える。


 もっとも、ここに来るまでの道のりも、それほど長くはなかったのだけれど――


「とにかく、行ってみるか」


 あそこに魔王ガモチョスがいるのかもしれない、そう思うと、さすがに緊張してきた。


「うーん、クソ。もうヤケだっ!」


 俺はそれほどでかくない勇気を出し、光の中へ飛び込んだ――


「いらっしゃいませーっ!」


 ……


 へ……?

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