10代から20代に書いた詩(1)

天川裕司

10代から20代に書いた詩(1)

「無題」

孤独、それを消してくれるものは何? 男であるが故に女を愛せず、僕という個人は、狂人みたく、なってしまった。何故、何にもないのに、壁をつくるのだ。それをやめられないのは、この世の汚れた悪事が消えない故。

・・・それを愛とは笑わせる。(笑)


「無題」

笑わせる。まったくもって笑わせる。俺は男さ。この場所に生まれた〝サガ・ユウジ〟って名前の男なんだ。それなのにヘンに悩んでばかりいて、ちっともこの生命を自分のために利(い)かせてないじゃあないか。(笑)春夏秋冬、どれが来ても思い悩むことは同じ。他人ばかりを見上げて、他人の人生に溶け込もうと努力する。ふと我に返ればその自分を殺そうとするだけ。こんな繰り返しをいつまでするのか、俺の寿命が尽きるまでに終えそうもない。やがては、この世間を呪うハメになるんだから。


ただ僕は、幸せが欲しい。


聴く、人の歌は一人でいい。何人もいれば影響されるだけで面倒だ。


怯えてるじゃないか。〝自分はもう大丈夫〟などと言いながら、誰にもかれにも怯えているじゃないか。何故に憶病になるのか。〝この臆病に意味はない〟などと言いながらまた、何者かに怯えてるじゃないか。すこしでも怖いものがあれば、何の計画もできない自分が、自分で消してしまいたい程のおぞましさだ。


治りかけた頭の傷を、またむしかえし、まばたきさえできずに目の前だけをただ見つめている。〝明日のことは明日のこと〟などとほざきながらまた恰好のつけ方を狙っている。〝いっそその性格を忘れたい〟、何度思い込んだことか。何故、こんなにも臆病になったのか。わからない。


この世で僕が本当に愛することができるのは、両親だけか。いや、それだけでも神様の前で、幸福だと思わなければならない。そう思いたい。


人間は思惑の自由の中で生きている。ちょっとした正義ヅラに出逢えば、それに影響され、またちょっとした悪人ヅラに出逢えば、それに影響される。


人は神を見ることができるのか。この悩みを解決した、などとは誰も言えないのだ。見たとしても、その奇跡を他に自らが立証することはできないのだから。やはり人と神の間にはそれなりの距離がある。


「善人」

どんな善人でも、三日間、一睡もしていなかったら疲れるのだ。

言葉を忘れた牧師は、どういう行動に出るか。――一歩、譲る行動に出る。


新しい靴を気にしながら歩いてきた。新しい環境に影響されながら、自分を守ろうとしてきた。なんとかもう少し生きてみようと、食べものを求め、生きつないできた。男であることを誇りにしながら生きてきた。自分は女ではないと肯定し、下を向いてきた。街の流行を、心なしか消そうとして生きてきた。これから行くところもない。自分で、自分の身を守ろうとしてつみ上げた、壁を窮屈に思い始めていた。

自分の知らない狂気が思う以上に激しいことを、〝生(せい)〟の不条理が隠していた。何も邪魔が入らないということは、自分を失くしかけることと、ようやく気がついた。最期に思うこと、結局、自分を神様にあたためてもらいたいのだ。


酒を飲み、声を上げて泣きたい。思いきり泣き叫びたい。でも親が生きている間は、それはできない。してはいけない。だから、ある意味で、両親がいなくなれば僕は強くなれるんだ。そんな気が、親がいる今はしている。


愛する人を〝愛する人〟と呼びたい。


……理想の人とは?〝この世にはいない〟と。誠か。


「人間」

(芸術家)すべての、この世にいる漫画家、評論家、歌手、詩人に言いたい。

―――――――――――――――――――――もういいよ。(笑)


「人間」

「何故、お前は人を殺したんだ?」

〝自分をそいつより強い人間だと示したかったから。〟

「でも、お前はとり返しつかないことをした。それについて、道徳を聞かせてほしい。」

〝道徳とは、その個人によって違うものだ。そこまでは人間は誰も踏み込めない。この世間だから云おう。神でさえ、それができないのだ。もしもそれができていたなら、僕のような罪人は過去にも現れなかった筈だ。〟

「それはお前の架空にすぎない。現実はお前の思っているのとは別の世界だ。」

〝ああ、だから、君達が僕の世界と違うんだ。郷に入りては…、そんなこと何の根拠で誰に決める資格がある。君もただの人間なのに他人(にんげん)を語ろうなんて努力をするんじゃない。〟――――――



―――人間(ひと)の本質ははじめからヘビに負けるものだ。神はそれをはじめから知っておられた。それなのに、エデンに毒木を置かれた。人間(ひと)を罪人の道へ落としたかったのだ。エデンを出たその人間(ひと)が、いくら叫んでも神の声は聞こえなかった。…そしてやがて、持ち前の〝生(せい)への執着心から人間(ひと)は暗闇ながらに電気というものをそこから見出し、その作られた光の中で愛を語り始めた。そして子供を生み、子孫を増やしていった。そして神はその人間(ひと)遊びを飽ききれずに、またその人間(ひと)の道を続けられた。イエス・キリストをこの世へ送られたのだ。……そしてこの会話の始まりに戻る。


いつまでも、自分を見本にできない自分がいる。

そのため、うぬぼれることもない。これは辛いこと。良いこと。


僕があと半年の命で思うこと。―――――

―――――運命、やさしさ、冷たさ、この世の美しさ、どうしようもなさ。

               最後にあたためてもらいたいこの僕。

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10代から20代に書いた詩(1) 天川裕司 @tenkawayuji

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