第一話 日常の終わり

朝の光が差し込む部屋の中で、アラームがけたたましく鳴り響く。神宮寺 零(じんぐうじ れい)は、重い瞼を開けてスマートフォンのアラームを手探りで止めた。今日もいつもと同じ日常が始まる。


「ふぁあ……また学校か」


零はベッドから起き上がり、カーテンを開けて外の光を浴びる。高校一年生になって数ヶ月が経ったが、毎日が同じ事の繰り返しに感じられていた。朝起きて、学校に行き、帰って来てからは趣味のゲームと日課の筋トレをする。それが零の日常だった。


零は両親を知らず、養護施設で育ち、高校生になってからは一人暮らしをしていた。そんな彼を支えてくれているのが幼馴染の東雲 美由(しののめ みゆ)だった。零は美由に合鍵を渡しており、美由は毎日のように彼の為に朝食を作ってくれている。


「おはよう、零。寝てると思って勝手に家に入っちゃった。今日の朝食はトーストとオムレツよ」


ミディアム程の長さに茶色く染めて軽く巻いた髪の毛。ピアスなどのアクセサリーを身につけ着崩した制服。そんな今風のギャルのような容姿の美由が家のキッチンで朝食を準備している姿を見て、まるで嫁が居るみたいだなと思ったが少し照れ臭かったのでそれは口には出さなかった。


「おはよう、美由。いつも助かる。美由の朝ごはんがあるから、毎日生きていられるようなもんだよ」


「大袈裟ね。さ、食べて学校に行きましょ」


美由は微笑み、朝食を共にした。そして諸々の準備を終え、二人は高校へと歩き始める。学校までの道のりは、いつもと変わらない風景が広がっていた。


しばらく二人で歩いていると、後ろから大きな声が聞こえてきた。


「おはようさん!二人とも!!」


馬鹿でかい声で挨拶をしてきたツンツン髪の金髪のこの男は、與猶 寿人(よなお ひさと)。中学校からの付き合いで、零の唯一と言ってもいい親友だ。


「おはよ、寿人。相変わらず元気だな」

「そうだ、今日の放課後空いてるか?この間オープンしたショッピングモールに行ってみようってちょうど美由と話してたんだ」


「おお!緑山町に出来たあのショッピングモールか!行ってみたいが今日も部活だ!!」


俺らの家や学校があるのが荒川町で緑山町は電車で二駅隣の町だ。

寿人は中学校の頃に引き続き、高校でも陸上部に所属している。


「また部活かよ。サボっちまえよ、そんなもん」


と零は吐き捨てるようにぼやいた。


そんな二人の会話を黙って聞いていた美由が口を開いた。


「零はずいぶん部活を嫌うわよねぇ。貴方も中学校の頃は野球部に入っていたじゃない」


美由の言ったことに対して零はその話はしたく無いという嫌そうな顔をしながら話を逸らした。


「そういや部活といえば、寿人のとこの部長はなんであんなにしつこく俺のことを勧誘してくるんだ?」


「栗山先輩はお前の足の速さに惚れてるからな」


寿人が自分のことのように嬉しそうに言った。


「栗山先輩って、あの桐崎 桜(きりさき さくら)先輩と学校一のマドンナの座を争っているって言われている栗山 千咲(くりやま ちさき)先輩?」


(なんだよマドンナって!なんか古臭い表現だな)

とツッコミを入れたかったが口には出さず黙って二人の話を聞くことした。


「そうそう!俺は勿論、栗山先輩派さ」


「そもそも何で栗山先輩は零の足の速さを知ってるの?」


美由が不思議そうな顔で寿人に問いかけた。


「一ヶ月ぐらい前に、零が車に轢かれそうになった小学生の女の子を助けたことがあってな、栗山先輩はその現場を見ていたらしい」

「なんでも栗山先輩の話では、その時の零は光のような速さだったらしいんだよ!」


「なるほどね」


美由は苦笑いしながら納得したようにそう言った。


俺は光のような速さという表現に再びツッコミを入れたかったが、あの先輩は顔が良い天然な人なんだなと俺も納得しておくことにした。


学校に着くと、クラスメイトたちが何やら騒がしかった。どうやら今日は何か特別なことでもあるらしい。


一年生のクラスは1-Aから1-Fまでの全6クラスある。

寿人は隣の1-Cクラスで俺と美由は1-Dクラスだ。

さっそく美由はクラスの女子達に話を聞いてきたらしく俺の方に報告にきた。


「今日から新しい先生が来るんだって!」


「へぇ、割とどうでもいい話だったな」


興味が無いような反応をしたが内心いつもと違うことが起きるのは少しワクワクした。


担任の教師が教室に入って来たので俺らは大人しく席に着いた。担任の教師が教壇に立ち、新しい教師を紹介するために声を上げた。


「皆さん、今日から新しい教師が来ます。山下健(やました たける)先生です」


山下先生が教室に入ってくると、静まり返った教室に鋭い視線を投げかけた。彼の眼光は何か鋭いものを感じさせ、普通の教師とは異なる雰囲気を持っていた。


「初めまして、山下だ。これからよろしく」


変わった雰囲気は放っているが見た目はインテリメガネって感じの真面目そうな先生だった。


その日、授業は順調に進んだが、零は山下先生の目が何かを探るように生徒たちを見ていることに気づき不信感を感じた。


放課後、零は美由と一緒に帰宅する途中、ふと山下先生のことを話題にした。


「美由、あの先生、何か挙動が普通じゃ無いというか変だと思わないか?」


「うん、私も感じた。普通じゃない気がする」


その夜、零はいつものようにゲームに没頭していたが、どうしても山下先生のことが頭から離れなかった。


翌日、学校が終わった後、零、美由、そして寿人の三人は新しくオープンしたショッピングモールに向かった。寿人の部活が無いということで予定を今日に変更したのだ。


「うわぁ、ひろーい!」


美由は目を輝かせながら言った。モール内は最新のデザインで、美しい内装が広がっていた。様々なショップやレストランが並んでおり、買い物や食事を楽しむ人々で賑わっていた。


「何から見る?」


零が問いかけると、寿人が提案した。


「まずはフードコートだろ!腹が減っては戦ができぬってな」


「何と戦うんだよ」


と言ったものの俺も腹が減っていたので少し早いが夜ご飯を食べることにした。


三人はフードコートに向かい、各自好きな食べ物を注文した。零はハンバーガー、美由は和食御膳、寿人はカレーを選んだ。


「これ、美味しい!」


美由がご飯を頬張りながら言った。零もハンバーガーを食べて満足げに頷く。


「うん、好きなチェーン店ばかりだし何回来ても飽きなそうだ」


食事を終えた後、三人はモール内を歩き回り、様々な店を見て回った。


「ねえ、あれ見て!」


美由が指さした先には、最新のゲーム機が展示されている店があった。零と寿人は目を輝かせて店に駆け寄った。


「これは……最新機のFS6!」


零は興奮しながら最新のゲーム機を見つめた。


「良いなぁ。これ、欲しいなぁ」


寿人も同様に感心していた。


「まあ、これは買える時に買えばいいさ。今日はモール内を見て回ろうぜ」


零が言い、美由も頷いた。


「そうね。次はどの店に行く?」


「そうだな、VARAとかどうだ?ちょうど新しい服が欲しいと思ってたんだ」


VARAは好きなファッションチェーン店の一つで俺はよくこのブランドの服を購入している。


「良いわね。零に似合う服、探してみよ!」


三人はファッションショップに入り、いろいろな服を試着しながら楽しんだ。美由は零に似合う服を見つけるのが楽しくて仕方がない様子だった。


「このシャツ、どうかな?零に似合うと思うんだけど」


「いいね、試着してみるよ」


零は美由の選んだシャツを試着し、

試着室から出た。


「どう?」


「すごく似合ってるよ!それに、このパンツも合わせてみて」


美由がパンツを渡し、零はそれも試着してみた。


「うん、これもいい感じだな」


と服を選んでいると

寿人が笑いながら言った。


「お前らこうやって見てると夫婦みたいだな!」

「幼馴染って良いよなあ、羨ましいよ」


それを聞いた零は呆れた顔で言った。


「バーカ、お前には美人の彼女が居るじゃねえか」


高校に入学してすぐ寿人に一個上の彼女ができたと聞いた時には驚いたものだ。


「そういうことじゃないんだよ、彼女とは何か違うというかさ、俺は異性の幼馴染が欲しいんだ!!!」


また大きな声でアホなことを言い始めたと俺はクスクス笑った。


「なぁわかるだろ?美由ちゃん!」


寿人がそう言うと美由は


「全然わかんなーい」


と適当な反応で返した。


こんなくだらない話で笑い合えることが最高に楽しかった。

俺は美由が勧めてくれた服を買うことにした。

レジにて購入を終えると美由も手に袋を持っていることに気づいた。


「何か買ったのか?」


「うん、香水!!」


そういうと美由は手の甲に買った香水をワンプッシュして俺に手を近づけた。


「この香り…金木犀か!!」


「好きなんだぁ金木犀の香り、嫌な事とか不安な事、全部忘れてリラックスできるんだよね」


そう嬉しいそうに語る美由の横顔を見て何故か俺も嬉しくなった。

そんな感傷に浸っていると急に美由が大きな声をあげた。


「あ!ゲーセンあるよ!プリクラ撮ろうよ!」


「おお!撮ろう!撮ろう!」


美由は兎も角、妙にテンションが高い寿人を見て心の中で軽く引いたが、偶にはこういうのも悪くないと思えた。


「ほらー零、はやくはやくー」


「早く来いよ零!」


子供のようにはしゃぐ2人の元へ俺はゆっくりと歩きだした。


そうして俺達はくだらない話をしては笑い合いながら、ショッピングモールを満喫した。


楽しい時間を過ごした後、三人は帰路に就いた。道中、美由がふと話題を切り出した。


「そういえば、山下先生のこと、やっぱり気になるよね」


零もうなずく。


「ああ、あの挙動は普通じゃない」


寿人も考え込むように言った。


「何か裏がありそうだよな。俺たちで調べてみるか?」


「調べるっていっても調べようがないだろう、俺らの気にしすぎってことにしておこうぜ」


俺はそう言い、山下先生の事はもう気にしないことにした。


翌日、学校に行くと、クラスメイトたちが騒然としていた。どうやら山下先生が夜の間に不審な行動をしていたらしい。


「零、聞いた? 山下先生、夜中に校舎の周りをうろついてたんだって」


美由が少し怯えたような顔をしながら俺の元へ来てそう言った。


「何のために?」


全く、人がせっかく忘れることにしたというのに普通では無い山下先生の行動に気が気では無かった。


そんな不安が募る中、放課後に急に全校集会が開かれることになった。なんでも例の山下先生がみんなに話したいことがあるらしい。


「なんか怖いね」


俺の前に立つ美由が不安そうな顔で言った。

こういった集会ではステージを正面に見て右から1年生、2年生、3年生と並び、Aからクラス順で並んでいる。

そして各クラスの名簿は男女混合の苗字順の為こういった列で並ぶ時は俺の前にはいつも美由がいる。


「まあ何にしても、あの先生の不気味さの理由が少しでも判明するといいな」


山下先生がステージ上に上がると、体育館の電気が全て消え、急に暗くなりひんやりとした冷たい空気が体育館中を流れ始めた。そして教壇付近が白く光始めた。山下先生が何かを呟きながら手をかざしていた。


「アウラ……解放」


その瞬間、体育館の中が眩い光で満たされ、零は思わず目を閉じた。次に目を開けた時、そこには信じられない光景が広がっていた。


山下先生の手から放たれた不思議な力で、なんと体育館のおよそ半分が崩壊していた。生徒たちは恐怖で悲鳴を上げ、パニック状態に陥っていた。

体育館は炎で燃え上がり中央に2年生達のほとんどがその場に倒れ込んでいた。


「さて、お前達の中に何人いるかな?私たちの役に立てる良い素材が」


零は現実感が無いこの光景に戸惑いつつも山下に問いかけた。


「良い素材?一体何を言ってるんだあんたは」

「そもそも何なんだよ!お前!!」


零は声を荒げこの数日間思っていた山下への疑問をぶつけた。


「お前たちに説明する義務はないが、今日は特別だ。これはアウラという力。そして私はお前たちの中にその力を持つ者がいるかどうかを探しにきたのだ」


普段ならこんなことを言われたら厨二病かと笑い飛ばすところだが、先程の不思議な光と目の前に広がる悲惨な光景からして山下の話を信じざるを得なかった。


「何を言っているんだ?アウラ?訳がわからない」


「わからない奴に用は無いさ」


そう言うと山下は再び手をかざし、アウラという不思議な力を今度はこちら側に向けて放った。

辺りが眩しい光に包まれる。全身に今まで感じたことのないような痛みが走った。頼むからこれは俺の夢で、ファンタジーかなんかであってくれと思っていたが、夢とは到底思えない確かな痛みがあった。


俺は全身の痛さと脳が揺れるような感覚の中かろうじて目を開いた。

視界が歪み、目眩をしているような感覚だった。

だが目を開けられるということは、どうやらまだ死んではいないらしい。

ぼんやりしていた視界が落ち着き焦点が合うと、そこには同じように血まみれになった生徒達が転がっていた。そして、その中には美由と寿人の姿もあった。


「美由!!」


目の前に倒れていた美由の元へ駆け寄り、意識の有無を確認した。


頼む!生きててくれ!心の奥底からそう唱えた


「良かった、気絶しているだけだ」

「でもこの出血量じゃ…」


このままでは大切な人たちを失ってしまう。そんなどうしよう無い状況に絶望を感じているときだった。

体育館の天井付近が急に光り扉が現れた。


「おいおい、今度は何だってんだよ」


すると扉から二人の女性が飛び降りてきた。

白い服を着た黒髪の女性とカジュアルな格好をした毛先とインナーが赤い茶髪の女性だ。

俺らより歳は上だろうがずいぶんと年齢は若そうに見えた。黒髪の女性の方は腰に刀のようなものをつけていた為すぐにこの人たちも普通では無いということがわかった。


「どうやら遅かったみたいね。友美!貴方は生徒たちの治療をお願い!」


黒髪ロングの女性の方が茶髪の方の女性にそう言った。


「わかったわ、舞」

「気をつけてね!おそらく最近噂の黒の教団だよ」


「ええそのようね」


黒髪の女性が舞で、茶髪の女性の方が友美というらしい。それにしても「アウラ」やら「黒の教団」やら急にファンタジーの世界に転生でもしたのかと思うぐらいに俺の脳はまだこれを現実だと受け入れきれてないようだ。しかし、どうやら2人は味方っぽいことが判明して先程の絶望的な気分から一転し少しほっとした。


「ッチ、黎明隊(れいめいたい)か。しかもアウラの総量からして隊長か?流石に部が悪すぎるな。ここは一旦引くしかないか」


どうやら山下はこの場から去ろうとしているらしい。

奴がこの場から居なくなった方が良いと頭ではわかっていたが美由や寿人を傷つけられたことがどうやら俺は相当許せなかったらしい。気づいた時にはもう口から言葉が放たれていた。


「待てよ!逃すと思ってんのか?」


山下は目を見開き驚いた表情を見せたが、ニヤっと笑いこう言った。


「何を言ってるんだ?お前にとっては私が此処から去る方が都合が良いだろうに」

「これだからガキは嫌いだ、後先も考えずに口ばかり、ここでお前を殺すぐらいは容易なんだぞ?死ね、クソガキ」


そう言うと山下は零に向かいアウラを放った。とっさに助けようと舞が動きだしたが


「速い!駄目だ、間に合わない!」


零は山下が解き放つアウラから目を逸らさず、自らの全てをぶつけるつもりでアウラに向かっていった。


「山下ぁー!!!」


するとその瞬間、山下が放ったアウラが消え去った。

それを見ていた山下も舞も目の前の光景に驚き言葉が出ない様子だった。

山下の放ったアウラがが消え去ったと同時に零から水色のオーラが放たれ始めたのだ。


「青い炎??」


舞は驚いた顔で零を見つめた。


「これはこれはダメ元だったがとんでもない逸材が居たみたいだな」


山下が嬉しそうに声をあげる。


「相も変わらず部は悪いが隊長を足止めするぐらいの時間稼ぎは出来るだろう」

「その間に私はこいつを力づくで連れ帰るとしよう」

「フッフッフ、念の為深夜に仕込みをしていたのは正解だったようだ」


そう言うと山下は教壇の上に手を翳した。

すると教壇の上に黒い紋章なようなものが浮かび上がり不気味に光始めた。


「神器も所持しているのね」


舞は何かを察したようにそう言った。


不気味な光は体育館の周りを囲む様に広がり光の中から30人程の黒い装束を着た人間達が現れた。


零が周りを気にしているのも束の間、山下は先程までとは違うレーザーのような細いアウラを3発、零に向かって放った。


(何だこの感覚は山下の次の動きが手に取るようにわかる、全てが見える!)


零はまるで何処に攻撃が来るのかをわかっているかの様にレーザーの用に速い攻撃を3発とも紙一重でかわしてみせた。


舞はその光景を黙って見ていた。


「アウラの動きを全て読み切ったのね」


舞は心の中で何かを決心したかのようなニヤついた


「ねえ君!あいつの相手は貴方に任せるわ!

その代わり、さっき出てきた黒い奴らは私に任せなさい」


舞が零に向かってそう言うと零はそちらを見て軽く頷いた。舞はそれを確認すると黒い装束の奴らがいる方へと向かっていった。


山下は攻撃がかわされたことに驚きながらも、怒りと焦りでさらに追撃をしかける


「調子に乗るなよ、クソガキがぁ!」


これまでとは違う大きなアウラの塊を零に向かって撃った。


「今の俺になら何でも出来そうな気がするぜ」


そういうと零は体に纏っていたオーラを右手に移動させた。


「はあああああ!」


覇気のある声と共に右手を振り払い山下が放ったアウラを吹き飛ばした。


「アウラのコントロールまで」


黒装束と戦いながらも零と山下の戦いを気にしていた舞は笑みを浮かべながらそう言った。


怒りに満ち溢れた山下は先程までとは比べ物にならないアウラの集合体を作り始めた。


「これならどうだああ!」


怒りのままに声を荒げながら山下は零に向かいアウラを放り投げた。


(今までとは比べ物にならない程のエネルギーを感じる)

「だが!止めてみせる!!」


零はさらに水縹の炎を解き放ち両手で山下の放つアウラを受け止めた。


「うぉおおおお!」


零はさらに炎を大きく纏いアウラを押し返していく。


だが、次の瞬間いきなり勝敗はついた。

零から滲み出ていた水縹のオーラが急に消えたのだ。


「え?」


零は自分自身に何が起きたかわからない様子だった。山下が解き放ったアウラは零もろとも体育館の壁を突き破り外へと飛んでいった。


「限界だったようね」


残り僅かの黒装束を倒しながら舞が呟いた。


「殺してしまったか、あいつを連れて帰れないのは痛いがどうやら他にも何人かいる様だな」


かなり疲弊している様子の山下がそう言うと。

再び体育館の上空に扉が現れ黎明体の増援が駆けつけた。


「どうやらこれで型がつきそうね」


舞はそういうと傷ついた生徒たちを回復させていた友美の方へ駆け寄った


「ねえ友美、後の事は任せていいかしら?

私はあの子のことが気になるからちょっと見てくるわ」


友美は何のことを言われているのかわからないという顔で舞に返答した。


「あの子って誰のこと?って聞いてないし!!」

「もおーー」


舞は友美の返答など聞かず零が飛ばされた方向へと駆け出して行った。


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