カテキョ

天川裕司

カテキョ

タイトル:カテキョ


俺は家庭教師。

とある大学に在籍中、家庭教師協会から電話がかかってきて、

「太田くんの家庭教師をしてくれないか?」

と頼まれた。

ちょうどアルバイトしたかったので俺は快く承諾。


でもこれが少し、奇妙な体験を招くきっかけになった。


(太田くんの家)


父「息子がお世話になります。ご報酬は弾みますのでどうぞよろしくお願いいたします」

「はい、お任せください。これから一緒に勉強していこうな♪」

太田くん「うん」

こうして俺と太田くんとの、2人3脚が始まった。


お父さんはたいてい昼間家にいたが、時々出かけることもある。


「今日はお父さんいないの?」


太田くん「うん」


「じゃあ思いっきり勉強できるね」


太田くん「うん」


その日は用事でどこかに出かけていたらしく、

俺と太田くんは静かに勉強していた。

国語、英語、理科、算数、いろいろ教えるが、

必ず毎日、宿題を出してあげるのがカテキョの日課。


その宿題をどこにしようかなぁなんて思っていた時、

部屋のドアがノックされた。


母「今日、おゆうはん食べて行かれますか?」


「え?あ、はい!あ、いや、でも大丈夫です!」


よく考えると俺がカテキョに入って

初めて聞いたお母さんの声。

太田くんは黙々とただ勉強している。


それからしばらく経ち、

「あ、もうこんな時間か。太田くん、そろそろこの辺にしとこうか。今日の宿題はね…」

と切り出したところ…


母「おゆうはんできましたのでどうぞ♪」

とまたお母さんの声。

幾ら家庭教師と言ってもそこまで甘えられない。


「太田くん、ごめん。お母さんに謝っといて。今日、用事があってちょっと早く帰らなきゃならないからって」


と言ったところ、


太田くん「うん。…でも僕の家って、父子家庭だよ?さっきから言おうと思ってたんだけど、誰と話してたの…?」


しばらく沈黙が流れた後、俺は部屋を出て、

お父さんが帰る前に家を出ることにした。

その時、家から階段を降りて玄関まで行く途中、

ちょうど見えるキッチンの方を見てみると、


「うわぁ…」


豪勢なご馳走が並んでた。

でも太田くんにはそれが見えなかったらしい。


「ねぇ太田くん、ほんとにお母さんいないんだよね…?」


太田くん「うん」


「こんなこと聞いて…答えたくなかったらいいんだけど、…どして?」


太田くん「… 3年前に事故で亡くなったから…」


「………」


息子の将来を気遣い、降りてきたんだろうか。

これは数年前に体験した、夢のような本当の話。

世の中、理屈で片付けられないことがあるって、

この時から俺は学んだのだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=SgdqvU_XiPM

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カテキョ 天川裕司 @tenkawayuji

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