プレイ1:キャラメイク

何というか、可愛い声だな。


それが、ナビゲーターの声を聞いた第一印象だった。


「そういや、【ユートピア・オンライン】を作ったのって、合成音声をメインに発売していた会社だっけ?」


確か、合成音声を発売している会社の方では大手だから、ゲーム業界に入ってきた時は、ネットニュースになってたっけ?


.......俺のゲーム用ヘッドギアの音声も、こんな風に可愛かったらいいのにな。


と、そんなことを思っていると


〈プレイヤー名を入力してください〉


俺の目の前に、名前の入力欄とキーボードらしき端末が現れた。


「名前かぁ....」


とりあえず、いつもゲームで使ってる『ハチ』にしようかな。


〈プレイヤー名を『ハチ』で登録しますか?〉


「YES‼︎」


そう言った後、決定ボタンを押す俺。


その瞬間、名前の入力欄とキーボードが消え.....次に現れたのは、種族選びのディスプレイだった。


〈次に、職業を選んでください〉


来た!!ファンタジー系のVRMMOでよくある職業選び!!


このゲームだと、職業を選ばなくてもスタートできるから......とりあえず、今は【無職】のままでスタートしようかな。


〈次に、武器を選んでください〉


武器.....


「とりあえずこれも無しで」


何をするかは、ゲームを始めてから決めようかな。


〈次に、出身を決めてください〉


「出身?」


あ、そっか。


【ユートピア・オンライン】では、生い立ちも設定しなくちゃいけないんだった。


えっと......何々?


「平凡な生まれに貴族の生まれ、孤児に忌み子に王族の生き残り......何かバラエティ豊かだなぁ」


孤児とか、忌み子とかはともかく、王族の生き残りっていうのも設定できるのか......


「でも......何か違うんだよな」


何というか、全部王道っぽい感じがするんだよな......


と、そんなことを呟いていた時、俺はある文字を見つけた。


「......ホムンクルス?」


ホムンクルスってあれだよな?

魔法の世界版のクローンみたいな感じだよな?


そう思いつつ、ホムンクルスの説明欄を見る俺。


【ホムンクルス】

あなたは、錬金術によって人工的に作られた生命体。

しかし、主人である錬金術師がいなくなってしまったため、自由の身となり、外の世界への冒険に出ることに。

魔法によって生み出されたホムンクルスであるが故に、普通の人間よりも魔力が多く、耐久力も高いが、一方で寿命が短いという儚い一面もある。


ふむふむ、この文章から察するに....ホムンクルスはMPと防御力が高いけど、その代わりにHPが少ないって感じなのか?


でも、こういう風に旅立ちのキッカケ的な背景バックストーリーがあると、何か世界観に没入した感じになるから良いな。


「んじゃ、出身はホムンクルスにしよっと」


〈次に、外見を作成してください〉


「いよっ!!待ってました!!」


ナビゲーターの中に対し、そう叫ぶ俺。


何気に、外見作成の時間を楽しみにしてたんだよな〜


「おぉっ!!こんなにたくさんパーツがあるのか!!」


派手な髪色とか、髪型とかはともかく......エルフ耳に猫耳、コウモリの翼みたいなやつもあるのか!!


そりゃキャラメイクで時間を掛ける奴が出てきても仕方ないよな!!


「さてさて.......俺好みの見た目を作りますかね!!」


まずは......髪型はハーフアップにして、髪色はあえての黒!!瞳の色はグレーにして、身長は高校生ぐらいの大きさに調整!!


うんうん!!我ながら良い感じだ!!


自分で作ったアバターの見た目に対し、満足げにそう思う俺。


そして、ある程度アバターの見た目を見た後、決定ボタンを押すと


〈これで全ての設定が完了しました〉


ナビゲーターの声が聞こえたかと思えば、俺は、再び光に包まれるのと同時に、こんな声が聞こえた。


〈あなたの旅路に幸あれ.......〉


その声を聞いた時.....俺は、いよいよ【ユートピア・オンライン】がプレイできるのかと興奮しながら、光の粒子となって、その場から消えるのだった。

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