~集大成~(『夢時代』より)

天川裕司

~集大成~(『夢時代』より)

~集大成~

 浮き足立つ調子に銘打ちながらも俺の孤高は益々膨らみベッドに寝て居り、我楽多ばかりを俗世に拾って眠りに就くは到底始末の利かない蛇足に成るなどひょっと出て来た運気(うんき)に倣って仄(ぼ)んやり俯き、人間(ひと)の常識(かたち)を巧く捨て得る新たな感覚(いしき)を捜して在った。なにぶんベッドの上にて布団に包(くる)まり外界ばかりが派手に着飾る空気を憶えて白々して行き、自己(おのれ)の独創(こごと)を何処(どこ)まで経っても硝子に透った既知に観るのは底を観知らぬ盲点ばかりに裸体が散らばる伽藍であって、俺の背後は死点(してん)の無いまま軽く透され無機へと落ち着く。常識人(じょうしきびと)の怒声にも似た規矩がふわふわ地上を翔(と)び活き堂々巡りに拍車を掛け得る新生(いのち)を愛で行く薄仰(はっこう)等とは、凡そ経験談から宜しく伝わり訓(おし)えられ得た旧い被(かぶ)りを見付ける故にて試行が成らずに、如何(どう)すりゃいいのか自分の仕業(しぎょう)に散々迷って悪態吐(づ)き活き目立った古巣を欲張り程度に上手く見据えて落ち着き始めて、〝自分こそは…〟と自尊(プライド)ばかりが逸って興り他人(ひと)を見下すサンバのリズムは自適に騒いで人間(ひと)を狂わす。毛頭拙い結句の流行りは他人(ひと)に見取れた憂慮に始まり浮足立つまま何処(どこ)へ行けども着地の成らない人間(ひと)の本音が自然に成り立ち生き活きし始め、模範が無いのを〝無意味〟と捉えて暫く独歩(ある)き、そうした偏見(おもい)を図太利(ずぶり)と言うほど真向きに捉えた他意に慕われ貫(ぬ)かれた後(あと)では自身(おのれ)の両脚(あし)など益々浮き立ち逆立ちなどして、血気盛んな自慢の程度は牙城を宜しくがらがら壊して呑気に詠った初春(はる)の歌などの牙に捕えて算段して在る。堂々巡りの人間(ひと)の嗣業に薄く汚れた灯(あか)りの仄かがぽっと湧き出て自粛を告げ活き、初春(はる)の遠退く初夏の頃には自宅で憶えた作詞の手数(かず)など運好く見定め極致に見据えた自己(おのれ)の限度を新たな精(せい)への篝(かがり)と成るのを孤独に覚って気分を睨(ね)め採り、愈々苦しく試算を言うのが人間(ひと)の限度(かぎり)と久しく言うのは目下打たれぬ吝嗇(けち)な花弁に青い未熟をすっぽり切らした独創(こごと)の連呼が在るからだとして、俺の宴は人間(ひと)を透って万遍無い儘、堂々巡りの人材(ひと)の業(ぎょう)からぽっと浮き出た奈落を背負って独走(はし)って行った。限界(かぎり)の程度の人間(ひと)の手により如何(どう)決め得るのか等、裁定する側される側にて大して目立った茎には成らず、言文一致に久しく慣れ得た現代人(ひと)の感無(オルガ)は規矩(てほん)に沿いつつ震々(ふるふる)震え、お手本無ければ〝全ての記憶に意味など付けない。以て生れた人間(ひと)の感無(オルガ)は他者を配して初めて在るのだ。暫く経てども過去へ戻れど、こうした理論は罅を呈さず他意足る危惧など追随させ得ぬ全き本意に傾倒して在る。こうした境地へ辿り着くのに幾年久しく掛かったことか。誰も知るまい…。何も知るまい…。〟など具に唱えて朦朧して行き、吸えない酸素を宙(そら)へ逃(に)がして当の従者は新たを捜してほっこりして在る。やがて落ち着く腰を持ち上げ男女は互いに異性を想って悶耐(もんたい)して行き、煩悶足り得ぬ記憶の密度に明々灯った無知の感無(オルガ)に後退しながら自質(じしつ)を捕えてゆったり身構え、中途半端に成した覚悟を奇麗さっぱり泡(あぶく)で埋めて果(さ)き行く結果は想いに任せて本能(ちから)を呼び込む。そうした俗世の程度に人間(ひと)に生れて嫌気が立ち込め、散々喚いた没我の情(じょう)など具に崩して実(み)を解体させ行き、独白(ここ)に成るのは人目と人気(ひとけ)をくっきり排した描写(写実)であるなど、独り言(ごと)にて物々言うのは他者を嫌った自宅(やしろ)の内にて完遂している。小言に呈した哀れな骸は人間(ひと)から生れて個人(ひと)から成り立ち、何にも成し得ぬ五月蠅い小人を地獄で殺して再び湧き立ち、現行(ここ)にてめっきり冷え込む片手を覚えて成就へ向くのは一端透った大人であるなど小人の罵声は結果物言う。

 帳が外れた白夜の内にて「雪国」なんかを枕元(もと)へと置きつつ以前に気になり贔屓にしていた川端翁(かわばたおきな)の懐(うち)へ這入ると、これまで倣った他人真似(ひとまね)等には相当根付いた悪癖(くせ)が成り立ち〝これでは行かぬ〟とお茶を啜って珈琲呑み干し、ぎらぎらした眼(め)を書斎へ向けつつ、あとは仄(ぼ)んやり日暮れを気にしてしんと佇み、端座に被(かぶ)った発想(おもい)の頭数(かず)などメモに寄越して自分はのんびり哄笑している。「見知らぬ言葉は未知のもの故自分の文には成立せし得ず意味を知るのは自分の感覚(いしき)で他人の本意に伏しては居らず、それ故如何(どう)でも、言葉を成し得ぬ惰気(だき)の組織は一旦外れて俺の死角へ転がり込んで、経過(とき)を介して精錬され得た独語の限りが雪崩れを打ち活き俺の枕元(もと)へと自然に還る。こうして観るのは俺から外れた悪癖(へき)の成る業(わざ)・嗣業と相成り、人間(ひと)へ対する説明文など糞ッ喰らえで全て破いてスポイルして活き、到底適わぬ自己の感無(オルガ)を手中に残して旅立ち逝くのは、二度と還らぬ俗世人(ぞくせびと)への挽歌と馴らされ平らであった。しとしと降ってる雨は初春(はる)でも、自然(あるじ)の温(ぬく)みを付けたり消したり波立つ内にて司業(しぎょう)を試み、人間(ひと)から発する苦笑の晴嵐(あらし)は昼夜の下(もと)にて散々馴らされ俺にとっては迷惑とも成り機敏で在って、何時(いつ)しか慣れ得た他人(ひと)の文句を付けつつ優雅を知るのは俺の悪癖(くせ)から抜け落ち始めた。さあてそれでは、川端翁の〝雅文(がぶん)〟の並びを麓に据え置き、漱石、太宰に三島の規矩など猛気(もうき)が覚め行く頃まで眺めて遣ろうと一寸毛立った感覚(いしき)の華麗を上手に掴んで宥め果てつつ、俺の徒労は空想(おもい)に飛び乗り毅然としたまま白紙に根付いた歪な臭気にわくわくしている。夢想(ゆめ)を観るのはこうした頃か…」等々覚った調子に上昇し始め、浮いた自分の下方に知るのは白い布団と木枠のベッドで、ちょいと以前(まえ)まで自分を包(つつ)んだ僅かな弛緩を充分味わい寝就いた場所にて小さく笑われ、俺の感覚(いしき)は各地に寝就いた名書(めいしょ)の内にてうっとりしたあと現行(ここ)へ戻って無体を着せられ無関と成り着き、思惑(あたま)の内(なか)では滔々流行(なが)れる初春(しょしゅん)の息吹を感じていながら遠い晩春(はる)へと謳って逝った。悪態吐くのは調子外(ちょうしぱず)れな用具の内にて書斎へ赴く自分の傍(そば)には火種と成り得る明るい手本が必要なのだが一向経っても外界(そと)から何処(どこ)から教書と成り得る素材のいろはは結局足り得ず、如何(どう)して書斎へ赴き得るのは立派に佇み思考へ暮れ得ば初春(はる)の斜光(ひかり)が小窓を叩いてすんなり降り立ち、明るくされ得た俺の麓は心行くまで明度を保って熟(じゅく)して行って、既成に止まった人間(ひと)の小声(こえ)など余りにか細く衰退して行く自分の姿勢(すがた)をこれ見よがしに知った表情(かお)して嘯くからだと暗に知り得て倒木を観る。斯く言う自分も俗世を放してまだ日が浅く、朗々唄った孤独の発声(こえ)など未だに背後へぴったりくっ付き生き活きしたのち俺へと囁き、苦楽を手にした悪口・擬音に真似した日々とは見事に大きく到底大口開(あ)けても呑めない糧へと丈夫に知り行き乱れて失くされ、思い余ってしたり顔して分身(かわり)を追い掛け値踏みをすれば、先ほど倣った用具のいろはがにゅっと顔出し俺へ寄り付く懶惰を灯して色付き始め、揚々咲き行く初春(はる)の日々などこれ又醒めない夢中へ堕ち逝く苦楽の果(さ)きなど手に取る程までしっかり縋った無頼の調子に徘徊している。

 生き活きし出した俺への光明(あかり)は一寸嘲笑(わら)って愉快に落ち着き、ふらふら独歩(ある)いた華(はな)の景色を自分の背中(あと)へと逃がしていながら目前(まえ)に見上げた陽気な舞台は久しく会わない過去の砦と相成り始めた。夢想(ゆめ)を伝ってるんるん気分に愉快に遊び、堂々巡りの現行(いま)を離れて放蕩して活き辿り着いたらどんな御殿が擁して在るのか、企図に見採れぬ微弱(よわ)い過失に依頼しながら、俺の思惑(こころ)は否応無いまま次第に仕上がる夢想(ゆめ)の御殿へ埋没せられて果てを知り得ぬ夕日の内へと七色(いろ)を手に取り絶叫して行く。歓待され行く我が身の化身は分身され得た肢体(からだ)を運んで知己を見知らぬ華の盛りに沿うていながら、燈火(あかり)の点き得たか細い路地など見当無いうち次第に薄まる白亜の壁など夢想(ゆめ)に紛れてくっきりし始め、輪郭(かたち)を静かに呈する内にも俺の心身(からだ)を具に見て取り、矛盾を習わぬ旧い手法に存分足るほど自体を浸して轟々唸り、「明日(あす)」の朝にはしっかり分れた自身(おのれ)の屍(かばね)哀れに表(あらわ)し俺の夢想(ゆめ)など手近に彩る。苦し紛れに闊達して行く浅い眠りに今日の宴を故縁(こえん)へ灯して知己に見取った二人の老女を無心に色付け解体して行き、改造され得た二つの躰は凡庸成るまま俺へと居座り、身近へ遠退く情(じょう)の隆起を可笑しい形成(かたち)に暫く留めて自分の居場所は昼夜に在るとの指令を承けつつ自分の結果(かたち)は何処(いずこ)へ見捨て、夢想(ゆめ)の内(なか)ではとても優しい二人の老女が仮面を被って美人と化した。俺がこれまで何気に沿い得た一本道には暫く徒労を金へと化(か)え得る職場が遊泳(およ)いで徘徊して在り俺の目前(まえ)では今にも向かって新参者(しんざんもの)へと気性を変えつつ、俺の内では如何(どう)にも解け得ぬ労途(ろうと)の行方をずっと捜して追わせ続ける強い機会が散在して在り無声(むせい)に有り付き、暫く睨(ね)めたらゆっくり拡がる職場の白亜は滔々流行(なが)れる白雲(くも)に紛れて尻込みして行き、二人の美人は俺に現れ軽い会釈に微笑を燃やして漏らさぬ女性(にょしょう)を具に凍らせ悪魔の笑いに回顧して生(ゆ)く。伊原静江(いはらしずえ)と小畑明美(こばたあきみ)が明るく居座り白亜の内窓(まど)には一閃灯った難儀が小躍(おど)って隠され在ったが、如何して斯うして、俺の下(もと)へと駆け寄る両脚(あし)には暗(やみ)に伏し得た新たな技巧が上手く飛び乗り俺の興味(こころ)をぐいと惹き付け有利に在ったが、俺の悶絶(なやみ)はそこには小躍(おど)らず奇麗に痩せ得た旧来(むかし)の技腕(ぎわん)に鋭く対してにやりと微笑み、二人の僕を俺の元へと呼び寄せ得るのが夢想(ここ)に生れた幸福(しあわせ)なのだと軽く頷きどんどん進んだ経過(とき)の麓で小さく棄(な)げ得た俺の分身(かわり)は無欲を投げ捨て興(きょう)の向くまま気の向く態(てい)にて、二人の背後で項垂れていた。そうした二人にぱっと明るい人工照(ライト)が照らされ真っ赤な両頬(ほほ)には一目散へと怜悧が片付く女性(おんな)の情(じょう)など仄かに表れ温存され活き、その際遠目に立ち得た小畑明美(こばたあきみ)は取り付く島無く暗(やみ)に隠れて静かに在って、俺の目前(まえ)では特に白々、脱(ぬ)けた躾(からだ)に男性(おとこ)を取り寄せウィットに倣った紅(あか)い潮など表皮を引き裂き表目(おもてめ)に出て、暫く何処(どこ)かへ隠れて落ち着き果て得た未熟の容姿は矛盾を解(かい)せず知己に並んでふわりと翔(と)び活き、俺の傍(そば)へと充分添い遂げ哀れに謳った人の相(そう)など微塵にも観ぬ哀れな具体(からだ)に伊原静江は自分の無情を久しく捜して無感(オルガ)を奪(と)り得た。

 白い柔らに両腕(かいな)を通し、歩く姿勢(すがた)は男性(おとこ)を透して無体と成り着き、淡い口許(くち)には早々煎じた無感(オルガ)の個体(かたち)を生き写しにしてだんまり決め込み、焦った跡には華(あせ)に塗れた薄い紅(べに)など仄かに灯って好色して居り、充分足るほど俺に居着いた彼女の姿勢(すがた)は幼女にも似た厚い上気が俄かに立ち得て華麗でもある。俺に対して当ての外れたような優しさを保(も)ち、精神(こころ)に潰えた伊原静江は自分の棲家を捜して行くのに酷く葛藤した後(のち)俺の麓に在り処を見付けて落ち着き始めて、人間(ひと)を離れて二人の無感(オルガ)を探して見ようと素朴に頷き俺の手を取り、何処(どこ)にでも在る道端まで行き忍んで抱き合い、俺と静江は青い初春(はる)など改め観ながら二人の仕種を経験していた。そうする二人の周囲(しゅうい)に程好く誰かに言われて来たのか、集(つど)った(二人にとっては)知人の群れなど疎らに居着いて気配を投げるが、二人にとっては然程に大きく成らずに口笛程度に透って鳴りつつ、二人の居場所を邪魔する若輩(やから)は現れないまま経過(じかん)は活き得た。

 しかしそうする内にも〝活き得た経過(けいか)〟は徒党を組み出し新参者(しんざんしゃ)を呼び、俺と静江の気配を勝ち取り俺の側(がわ)から右方に現れがらがら鳴らした靴音(おと)を肴に固い成(な)りしてやって来て居り、堂々足るや、口は大きく開口し続け活舌良いまま鈍い言葉を沢山並べて小躍(おど)って在って、俺と静江は一旦退(さ)がって状況(ひかり)を読み取り、如何(どう)する間も無く胸中(うち)に叫んだ欲求不満をそこかしこに観て現行(いま)の泡(はしご)を危うく独歩(ある)く。そうこうする内、自然に表れパパイヤみたいな表情(かお)を掲げた黄色人種が〝二人の仲間〟と腹を鳴らして滑走して活き二人の周辺(あたり)に散在し始め、硝子に透った浮気な情(こころ)を軟く延ばして状況(ひかり)を囲み、静江に向かった俺の姿勢(すがた)と俺に向き得た静江の姿勢(すがた)を大きく小さく囲い続けて〝二人の挽歌〟と小さく鳴らした胸中(むね)の高鳴(おと)など誰に報せず謳い続けて如何(どう)とも言えない困った身振りを新参者(かれら)へ目掛けて投げ掛けていた。新参者(かれら)の流行(はやり)に良い顔しないで固く見据えた大きな黒目は未熟を見据えて真綿に包(くる)まれ、どっち付かずの仲立ちなんかに振る舞い始めて二人の側(がわ)からすっと立ち活き一糸纏わず無意味な態(てい)にて安産して居た。〝向こうへ行け〟との通知を承け得た新参者(かれら)の意思には挙句の果てほど稚拙に満ち得た鬼畜は生れず、白い悪魔が背汗(せあせ)を掻きつつぼつぼつ生れたエロティシズムは新参者(かれら)の一声(こえ)にも水を漏らさぬ寡黙を灯して黙々呈され何処(どこ)へ行けども新たな価値など一向経っても孤独を知らない。未知に生き得る人間(ひと)の孤独は歳を取っても空回りに在り、無理強いして在る人間(ひと)の労苦は小声を呈して堪忍袋(ふくろ)に仕舞った朝陽を捜して矛盾を解きつつ、哀れに対して黒い表情(かお)する小人の行方は黄土色した人間(ひと)の皮膚にも進んで埋没して行き臭くなりつつ丸まり続けた人間(ひと)の人徳(モラル)に屈食(くっしょく)したまま虚空(くうき)に解け得て放蕩して在る。沸騰して行く人間(ひと)の生気がぼんくらながらに現行(ここ)にて透り、死者は生れず環境(あたり)を擁する急いだ体(てい)には小言に叫んだ人間(ひと)の労苦が無関に伴い感覚(いしき)を欲しがる死相に富んだ。何に向かって活き得る人間(ひと)の勝気は堂々巡りに騒ぎ始めた人間(ひと)の経過へどっぷり浸かって学習して活き、能力(ちから)を求めて脚力(ちから)を温存(あたた)め、熾烈窮まる虚空(こくう)の自然(あるじ)に相当向かった努力の結果を改竄して生(ゆ)く。俺の脂肪は周囲(まわり)に燃やされ蒸発して活き、長い物語(はなし)に問答して行く焦りの極致に独走し始め、新参者(かれら)の代わりに蒼く成り得た苦労の夢想(ゆめ)には密かに灯った指針を拵え早口拵え、周囲(まわり)の熱気に熱く成り得た無様な心地が膨らみ始めて黙殺され活き、微笑(わら)った感覚(いしき)は俺の思惑(うち)にて活性され生き珍事にも似た暴挙の型(かたち)が飛び出て行って新参者(かれら)を跳ね退(の)け自分を通し、悪循環にて他人(ひと)から得られた有利な言葉を我が物顔して歪め始めて、型(かたち)を破れる感覚(いしき)と人間(ひと)との二重性には一向経っても読破出来ない長い孤独が二人の目前(まえ)にも並んで在った。こうした展開(ながれ)も必要無くなり旧く成り得た可笑しな世代は亀の形質(かたち)に丸まり仕舞えた俺の成果も軽く射(い)なして湿気に隠し、ひゅうひゅう煽てて二人を冷やかす新参者(かれら)の視線に色目を使った身重の俺には醸し出された新参者(かれら)の生理に空転して生(ゆ)く無膜(むまく)の政治に昏睡して活き、俺の偏見(まよい)は新参者(かれら)を跳び越え頭上を見下げて漠然足り得る人間(ひと)の熱気に程好いウェットを牛耳り死に活き初めに飾った覇気の揺れには機微を採り得た。

 そうした新参者(かれら)が空気の内にて歪められ活き暴走して生(ゆ)く凡庸等とは誰にも知れない妙な噂を具に手に取り辛気(しんき)に晒して有言足り得る孤独な労途は瞬く内にも活性され得て見知った手合を俺の元へと投げて寄越して節制して行き、節制され得た無刻の経過(じかん)は断固として成る人間(ひと)の流動(かたち)を悠々足るまま廊下へ拡げて型(かたち)の成らない俺の正義に嫌気差すまで濁流(にごり)を入れた。新参者(かれら)の内にて俺の姿勢が見知った者とは俺の心身(からだ)が中学まで行きそこにて拾った男子生徒で、名を田原浩二と真顔に呟く新たな肢躯(しく)には優れて見得ない無性(むせい)の心理が描写され活き胡坐を組んで、俺の屍(かばね)を緑(あお)い草原(のはら)へ項垂れながらに吊るして置き遣る堅い感覚(いしき)が輝(ひか)って目立つ。目立った自然(あるじ)は俺へと取り憑き初めに廻した〝経過(けいか)の木馬〟を従順ながらに苦労を見せつつ手に脂を敷き詰め努めて明るく舞って在ったが、如何(どう)する間も無く次の展開(ばしょ)にて二人に始まる新たな擬音は高鳴りにも似た気性の晴嵐(あらし)を努々眠らぬ人群(むれ)の内にて威力を講じて無為に輝き、男輩(おとこ)の生器(せいき)を奇麗に取り去り男性(おとこ)の機能を落して行った。田原の表情(かお)には勝気に伴う透った脚力(ちから)が観えない儘にて肢体(からだ)は如何して斯うして俺より大きく観えない気色を具に隠して自適に有り付き、有言実行、泡(あぶく)の成る儘、到底止まない人群(むれ)の温度を浅くしたため自分に科された見得ない未知へと独歩(ある)いて行った。一人暮らしの寡の態(てい)して黒く燻(くす)んだ背中の軸には〝中学鞄〟のバンドに遣られた薄い赤身が現行(いま)にもはっきり残って在って、ゆうらゆうら高みに覗いた自明の内にはこれまで独歩(ある)いた彼(かれ)の姿勢(すがた)が漸く表れ毒吐(どくづ)き始め、〝俺には関係無い〟など強く呟く情(こころ)の内には優雅に灯った人間(ひと)の緩みが虚無の許容に冒険し始め、立派に強請った人間(ひと)への生活(くらし)を勝手に手に取り嘯く姿勢(すがた)は以前(まえ)にも以後(あと)にも、この経過(とき)ばかりが最後であった。彼の姿勢(すがた)は心身(からだ)に埋れて宙(そら)を飛び交い、気質の籠った強い味方を未知(やみ)に宛がい白く色付き転倒し始め、俺の目前(まえ)から完全黙秘に夜毎を紡いで攪乱されつつ、終(つい)には起き得ぬ死相を紡いで表情(かお)に載せ活き、人間(ひと)から始まる音頭の撓みに二度とは還らぬ脚力(ちから)を身に付け遊び始めた未知(さき)へのシグマに転がり続けた。寡黙に居座る田原の寝息は言葉を忘れて孤独を捨て去り、二人に止(とま)った淡い初春(はる)には一糸乱れぬ古装(こそう)を取り次ぎ雄弁とも成り、熱い両眼(まなこ)は二人へ示した神秘(ひみつ)を彩(と)っては空気(やわら)を枕に堂々在って、視線を超え得た未熟の曇りにちょいと摘(つま)んだ生気が傾き真向きに対した二人の無感(オルガ)は放棄され得た古書の体(てい)して彼の肌には伽藍を被(こうむ)る。

 お堅い空気を宙(そら)へ返して無言に流行(なが)れる夢想(ゆめ)の梯子は次第に固まる淡さを取り上げ脚色(いろ)を付け活き俺へと返り、俺の心身(からだ)はふわりと飛んで〝堅さ〟を失くした宙へと赴き無重を感じた丈夫な浮力(ちから)は俺の自宅へ知らずに還って自然に有り付き、ちっとも不思議を負わない儘にて学校・職場のか細い廊下は〝自宅〟の前にて姿を消した。自宅の内では父と母とが献花を摘み取り柔らに飾った居間の内にて暫く佇み、そうした部屋とは父と母とに夫々当て得た二間(ふたま)に分けられ俺の自宅は揚々傾く屋根を見せつつ現在(いま)に流行(なが)れる温(ぬく)みの内にて寛(ひろ)さを醸して手足を延ばし、俺の自宅(いえ)には沿(そ)ぐわない程異質の人気(ひとけ)が仄かに生れて俺と両親(おや)との強い絆を冷気の内にて一層鎮めて立脚させ活き、潜(くぐ)った門出を何度も行き来している人気(ひとけ)の鬱には朗らに染まった見知らぬ活気が自宅(いえ)に倣って四肢(てあし)を並べて寛(ひろ)さを講じた。父と母とは俺の目前(まえ)では初めて講じる式を取り上げ俺の興味を強く惹き付け気丈に成り立ち、遠くに染まった昼間の陰から上手に着飾る古風な無感(オルガ)を真綿に包(くる)めて透って行って、結婚記念を久しく夢見た両親(おや)の両眼(まなこ)は力味(りきみ)を落したデリケートな身に何気に奏でる協奏曲など無為に鳴らした厚手の冷気に歓待し始め粛(しゅく)して落ち着き、言動(うごき)を程好く俺の目前(まえ)にて呈して居ながら気丈に静まる夫婦の熱気は勝気を越え行き魅惑を灯して、俺の目前(まえ)では狂々(きょうきょう)小躍(おど)った快楽等を襖の陰からちらと覗かせ、信心深い親子の絆は思考を忘れて遊泳(およ)いで在った。

 過去の経過に右片麻痺した母の躰は分身して活き病躯を差し置き、残ったもう半身には古来(むかし)に灯った人の熱気がこよなく濡れ落ち見事に再生したまま古来(むかし)に生育(そだ)った母性(はは)の姿勢(すがた)を再現して活き、〝怪我〟をしてから二度は上(のぼ)らずにいた家屋へ敷かれる二階へ辿らせ異形(いけい)を観(み)せ行く急な階段(はしご)を物ともせずに巧く上(のぼ)らせ母の心身(からだ)に父から成り得た弱い記憶と限界(かぎり)を連れ添い全体成り立ち、思うにこれまで、こうした行事も景観などさえ久しく無かった人気(ひとけ)を封じる家屋の奥間(うち)では記録せるほど目立った事変で俺の心地は少年(こども)に塗れた薄い気色に現行(いま)を覗かせ浮き浮きし始め嬉しく成り得て、共存され得た家族の絆が〝絆〟と呼ばれて可笑しくないなど自答に暮れては夜明けを眺め、今日(きょう)の末期(まつご)を体たらくに観た孤高の延びには俺の空想(おもい)が五分(ごぶ)と空けずに散らばり始めて漸く手にした無重の界隈(せかい)を異様に眺めて称賛していた。両親(おや)の背後(あと)から続いて上った俺の目前(まえ)では湿気に包(くる)まる微温(ぬる)い経過が眠る姿勢(すがた)で俺から離れて曖昧成るまま距離を保たせ、距離を保った俺と両親(おや)には未開に咲き得た無色の程度が両手を振り活き人間(ひと)の気配を上手に消し去り両親(おや)をも消し去り、消された両親(おや)には経過(とき)が背後(あと)から俺の代わりに追い掛け夢想を探し俺の元では他人の表情(かお)してどんな事変(こと)でもすんなりし終える弱い教理(ドグマ)を自由に訓(おし)えて俺の周辺(あたり)を暗く灯した。俺の心身(からだ)は知らず知らずに二階へ上がって永らく住み付き褐色にも似た自室の支柱(はしら)を隈なく撫で活き翻(かえ)した心身(からだ)は期待に灯った熱気を携え再び病躯を携え加減に活き生(ゆ)く母を捜すが、気配だけ彩(と)り姿勢(すがた)を呈さぬ母性(あるじ)の姿勢(すがた)に理屈を崩して躍起に取り付き俺の心身(からだ)は不安成るうち駆け足携え独歩(ある)いて行って、自室を越え得る頃には暗(あん)に伏しつつ黙って従い母を支える父の姿勢(すがた)を何処(どこ)かに捜して周辺(あたり)を見廻し、気付いた果(さ)きには伽藍にも似た真っ暗闇にて独歩(ある)ける限りの土台を保(も)ち得た急な階段(はしご)の儚い姿勢(すがた)を、俺の目前(まえ)にて家屋が講じて成体せしめ、笑える限りの嗜好の程度を見詰めさせ得た。俺の心身(からだ)は急に強張り堅(かた)まり始めて果(さ)きへと続いた階段(はしご)の在り処を畏れた一歩に確認してから浮わ浮わ下(お)り行き二人を捜し、捜すついでに新たな景観(けしき)に物憂い姿勢(すがた)の異形(いけい)を求めて心身(からだ)を震わせ恐々(きょうきょう)伴う志気の程度は周囲に窶れた孤独を取り付け立身して活き、姿勢(すがた)を失くした旧い家屋は奥間に仕舞った古来(むかし)の母性(はは)など隈なく掘り出し俺の目前(まえ)にも奇麗に並べて端座して在る。闇に紛れて暗(やみ)が先立ち、様子を探って予想に差し込む人間(ひと)の記憶は奇麗に折れ行き自心(じしん)へ傾き予測も折れ行き、漆黒(やみ)に固まる表面図形にほとほと憑かれた俺の両眼(まなこ)は一心不乱に行儀を象り自身の在り処を盲と決め込み瞼を下(おろ)し、片眼(かため)にはなく両眼(りょうめ)を塞いで立ち行く滑稽激には新たな譲歩が真横に遊泳(およ)いで新参して居り他には成し得ぬ真面目な無意味が活歩して行き威風を操(と)った。段が急にて新たな一歩が震々(ふるふる)震えてか細く佇み、頼り無いのを暗気(あんき)に晒して十分味わい未定に定まる活歩の果(さ)きには他人(ひと)に知られずこっそり打ち出た神秘(ひみつ)の歯車(しかけ)が体(からだ)を細くしのっぺり立って、俺が居座る恐怖の暗(やみ)から光を抜き去り足踏みした儘、俺の還りを待つ姿勢(すがた)をさえか弱く呈した。無茶を嫌った俺の姿勢(すがた)は宙(そら)へ浮んだ記憶を頼りに一歩に脚力(ちから)を程好く踏み込めおどろおどろに独歩を決め込む無感の譲歩が哀れにも成り努めて振るった若い力は誰の目前(まえ)にも表れないうち未遂に活き得る覚悟の程など俺の目前(まえ)から姿勢(すがた)を化(か)え活き明るみへと立ち、誰に訓(おそ)わるでもなく自然(じねん)に徹した問いの内から、次第に固まる三又(みまた)の熟慮を遠(とお)に見据えて断行した後(のち)、代わる代わるに毛立(けだ)った環境(あたり)は俺に対して当りの無いまま苦言を呈して弱まり始めた。俺の心身(からだ)四肢(しし)を拡げて他人(ひと)を寄せ得ず、段に降り立つ一つの声には彼女を見据えたか細い名残が当然顔して七つに灯り、当人同士の会話の限度(かぎり)も、環境(あたり)を見渡し鳴々(めいめい)謳った静けさ等さえ恐々(きょうきょう)したまま喉を鳴らして枯渇に熟れ込み、自然に灯され勝気を帯び得た段の痩躯は俺へと還って総身を脱ぎ捨て静かな暗(やみ)にて空間(すき)だけ残して現行(いま)から消え果て、そろりそろりと震えながらに下(おろ)した痩躯は熱気を失い萎びた態(てい)して自身の感覚(いしき)に何にも触れない新たな気色を呆(ぼう)っと取り去り、無限は迷って幻惑(まよ)い始める眩暈の境地へ静々鳴るまま遁々(とんとん)出掛けた。俺の心身(からだ)は足を取り終え一投足(いっとうそく)にて幻惑(まよ)いの階段(はしご)を全く駆け下り気丈を保ち、薄ら眼(め)を開(あ)け見渡す限りは余程に拡がる空間(くうかん)ばかりで小踏(こおど)りもせず、俺の〝覚悟〟は真綿に包(くる)まれ涼風(かぜ)に吹かれて暗(やみ)へと旅立ち、経過が伝(おし)える背後(うしろ)の暗(やみ)には既に望遠され得る人間(ひと)の恐怖が音を失くして独歩(ある)いて在るのを結果を知り得た俺の感覚(いしき)に不意と投げ掛け司祭(あるじ)を失くした俺の企図には煙の立たない吹き抜け廊が自ずと拡がり荘厳足り得た。薄ら眼を開(あ)け俺の心身(からだ)が〝吹き抜け廊〟から理詰めに湧き立つ涼風(かぜ)を捕えて環境(あたり)を見遣れば、俺の躰は四肢(てあし)を拡げて広がる廊下に姿勢を崩してのんびりして在り、足の前方(まえ)には障壁(かべ)と成り得る小さな破片は何処(どこ)を睨(ね)めても一向探れず平らにあって、好く好く静かに足先(さき)を見遣れば、足先(あし)はぶらぶら宙(ちゅう)に高まり身柄を脱ぎ捨て、木製にて成る欄干(てすり)に遊泳(およ)いで自由で在って、暗(やみ)から抜け出て開眼したまま見据えた景色は高鳴り、〝足の先にも裏にも何も触れずに独歩(ある)ける理屈は、此処(ここ)にて見得れば当然か〟と知らず知らずに沈む気配に俺の心身(からだ)は暫く佇み棒立ちして居り、新たな気色は両親(おや)の背後(うしろ)にこそこそ隠れて暗闇(やみ)の吐息は堂々足るまま奥間の冷たい異形(いけい)に戻って行った。

 澄ました表情(かお)して奥間から脱(ぬ)け、昼下がりの暖気に塗れていながら何処(どこ)へ行くでも脱(ぬ)けるでもなく、冷たい寒気に少々覆われ奥間には無い常識(かたち)の傘下に気色が在るなど、疲れ眼(め)にして仄(ぼ)んやり見付けた階下の廊下に普段は金魚を飼う為父の手により薄ら敷かれたプラスチックの水槽なんかが自由の表情(かお)して在るのだけれども、そこに在るのは水槽ではなく、父と母とが先程見掛けた結婚記念の用途の為にと自ら仕立てた正装・礼服、行儀の堰など仄(ぼ)んやり成り立ち透って行って、薄ら曇った暗気(あんき)を跨いで俺の心身(からだ)は大きく成り立ち、界隈(そと)の気配にそれほど注意を損なう間も無く鬱陶しいほど感無と無感を取り違え得た未熟の思想に死相を呼び込み〝如何(どう)でもなれ〟など脆(よわ)い野望は一目散へと古巣へ遠退き祈山(きざん)を越えて、「未熟」を謳った脆(よわ)い効果は両脚(あし)を鳴らして明度に落ちた。「明日(あす)」への志望は何にも知らずに孤高に咲き得た溜飲などにも頭が上がらず、疾風怒涛に黄泉を気にする白紙の宴は突風から成る鎮守の初歩(いろは)に木の目を牛耳り怪奇を先取り、蛻の心身(からだ)にきちんと据え得た小さな遊戯(あそび)に至極遊んだ思春の程度は大手を振りつつ大目を観ている。父と母とがこうした着飾(かざり)に総身を任せて単純・自然(しぜん)に微笑(わら)って在るのは自宅(いえ)が開けて生れて此の方一度も漏れずに宙(そら)を彷徨い「大目」へ隠した両親(おや)の功から久しく得られぬ未熟な相(そう)にて稀有でもあって、俺の思惑(こころ)は空(くう)へ遊泳(およ)いだ得体へ対して固まりながらも縋る情(こころ)にどっぷり浸って四肢(てあし)を拡げず、淡い行方に努々呈さぬ死力の末路は人間(ひと)の沖へと散々流行(なが)れて彷徨う間も無く周辺(あたり)へ散らばる止まり木等へと還って在った。初めて見据えた父と母とがこうした暗気(あんき)に久しく流行(なが)され得体を掴めぬ「用途」でいるのは人間(ひと)に生れて大事に此の方難無く悔やんだ活気の性(さが)にてうむとも言得(いえ)ず、単純至極に流行(なが)れ去るのは空想(おもい)に活き得ず独創(こごと)の賛歌へぴたとも止れぬ若輩達にてどっぷり浸かった夕日の禿冠(かむろ)が飛んだ後(あと)にて老いへ生れた思春と相成り労力(ちから)は尽き活き、温床(ねどこ)を澄ませる悪鬼の努力は私闘に塗れて算段され得ず、何処(どこ)かの未知にて到底勝て得ぬ「未熟」の猛火と相対(あいたい)するのだ。

 俺の背中がふとした調子に気障を採りつつ階段ばかりに自由に飛び活き老気(ろうき)を観たのは、躍起に絡まる若気の次第を如何(どう)でも好いほど露無く棄(な)げ去り、堂々巡りに明け暮れ始めた目下の異界で降り立つ教義(ドグマ)の姿勢(すがた)も微塵に感じず死臭に打たれて虚無さえ生れ得(え)、創作足るのに人間(ひと)の思考は思惑(こころ)を通して小躍(おど)って観せてもちっとも気色の具合は目立ちもせぬまま愚弄の程度(うち)にて収まり得るうち模型(かたち)を化(か)え得て人間(ひと)から隠れ、アダムとエバとが木の葉にその身を騙して活(ゆ)くのが仔細に採れ得る聖書の内では、人の愚行が現行(いま)に活き得て継承され生(ゆ)く立派な文句に総身を取り付け、「明日(あす)」への試算に立派に鳴るのが幼児(こども)の身にさえ丈夫に伝わり不動と成り活き、若い衣が何を言えども不変の成就は久しく無かった人間(ひと)の音頭を再び執りつつ未来(さき)へと誘(いざな)う〝二つの木の葉〟へ透して持ち活(ゆ)く。恐らく宙(そら)から垂れ得た薄いベールが両親(おや)を取り巻き長じて在って、次第に和(やわ)いだ軽(かろ)い悪夢(ベール)は褥に包まる無慮(むりょ)の吐息をくすねて掴んで経過を計り、薄い縫衣(ベール)が俺の目前(まえ)にてちらりと揺れれば両親(おや)の中味を見取れる程度に下地(したじ)を拵え明るく成りつつ、〝息子に覗ける程度は具合が良くない〟等とも二人の体温(ぬくみ)に公表され得た立派な道理の行方が少々暈(ぼや)けて呆(ぼ)んやり佇み、息子の同居を決して許さぬ〝無縫天衣(むほうてんい)〟の範囲(かこい)の内にて二人の身柄が起され生(ゆ)くのは絶対高度の高身(たかみ)に在り得た。暗黙(ベール)の暗い内にて薄ら灯って除き得たのは両親(ふたり)に灯った早熟(ねつ)に始まる思春の機械(ひみつ)を廻す程度で、両親(ふたり)に落ち得た冷たい機会(チャンス)は経過に贈られ眠たく成り得て、次に奥間へ待機している時流の牙さえ相対(あいたい)して行き許容(かこい)が呈した根深い暗(やみ)には二手(ふたて)が届かず障らぬ態(てい)にて結集(かたち)が付き得ず、廻りに廻った無双の大蛇(おろち)は蜷局を巻くまま腹(なかみ)を隠し、直走(ひたばし)りにして常識(かたち)の総てを燃やして行った。「白紙」に書(描)かれた人の倣いは玄夢(ゆめ)を持ち上げ立派に立ち活き自己(おのれ)の成長(かたち)を早熟(ねつ)に仕立てて大人であったが、人間(ひと)から伝(おそ)わる無体の空箱(はこ)にて成長(かたち)の付き得ぬ徒労の一線(レベル)が人へと表れ無意味に成り立ち、何が真(しん)だか偽(ぎ)だかも結局成り得ぬ人間(ひと)の協力(ちから)が固陋に膨れて充満して活き、旧(ふる)さに徹して新たを排する虚無の〝宴〟に高踏(こうとう)し出して憶する間も無く早熟(みじゅく)を配した新たな正味(なかみ)を吟味(あじ)わう事せず暗(あん)に巻かれた地の無い土台へ小躍(おど)り狂って跳躍して生(ゆ)く。濁った「時流」を分けへ取り除け、両親(ふたり)の目鼻は気丈に成り立ち互いに近付き、ディープキスだかフレンチキスだか何方(どちら)にも好い衝撃(ショック)を伴う熱い接吻(キス)など姿勢を象り上手く手向けて俺の目前(まえ)では不動に落ち着き呈して在って、堅い空気に好く好く観遣れば互いの口唇(くち)には鋭利が先立ち唾液を介さぬ脆い優雅が提灯(あかり)を灯して震えて成り立ち、俺の情感(きもち)にやおらに寝そべる風味を食べさせ無難を装い、それから暫く互いが寄り添い堅い空気を益々固めて土台を馴らし、確立され得る新たな新生(いのち)を両手に乗せ得て円満不乱に立ち活(ゆ)く姿勢(すがた)が何処(どこ)からともなくふっと這入(なが)れてふっと浮き立ち、俺を寄せ得る新たの興味を自在に創(かた)った二人の有志に俺の未熟は程好く気取られ前進して行く新たな脚力(ちから)を自然に立ち得た二人の肖像(ゆめ)から俺の情(こころ)は透って手にした。俺の情(こころ)は〝俺の両親(おや)でもこんなになるまで不毛を費やし、出来心(あそびごころ)に親しく小躍(おど)って「跳び子」の態(てい)して長生きするのか。これまで倣った両親(おや)の程度に斬新成るまま俺に向かない新たな「新生(いのち)」を隠しているのか?もしそうだったら俺に生れた情(こころ)の余韻は両親(ふたり)へ跳び付き決して越えない新たな牙城(とりで)を二手(ふたて)に捌いて捩じり取りたい。そうして両親(ふたり)のレトロな体温(おんど)に辿り着くなら俗世を見棄てて一向止まない未知の雨さえ浴びてもみたい。〟と規律正しく並んだ虚無にも怯まず向き得た自己(おのれ)の容姿に暫く見惚れて無為を味わい、鉄砲水から漏れ出た勇気に死太く倣った孤立の伝播を至極大事に懐(うち)へと入れて、俺の挙動(うごき)は初めから成る空(から)の〝音頭〟に孤高を忘れて両親(ふたり)へ寄せられ、次第に宙(そら)の内にて径が縮まる出口の輝枠(きわく)を存分眺めて宙(そら)へ渡った俺の自活(かて)から遠く離れる新たな試算を手にして在った。しかし次第に〝虚無〟に再び捕われ現行(いま)に立つのが危うく成り立ち俺の回顧はレトロに倣わず遠い死地へと心身(からだ)を誘(いざな)い不敵に居座り、現行(いま)にて得など頻りに畳んだ俺の情(こころ)の程度は何にも向かずに寝返るでもなく真向きに捉えた〝虚無〟の内にて微動に有り付き新参し得ず、滔々居着いた終の棲家を現行(ここ)へと決め得て自分の温床(ねどこ)へ当分返れぬ我が身を見た後おんおん泣き出し、遂には待たない一刻(とき)の高音(たかね)に焦燥憶えて如何(どう)する間も無く密室(へや)の空気を適度に冷まして自分の住み好い新たな寝屋へと構築していた。そうした新劇(あらた)にまんまと遣られた俺への調和は透った緻密に斬新であり、人間(ひと)に生れた無駄な知積(ちせき)が程好く熟(じゅく)して人を喰い出し人間(ひと)に在っても幼い無関(オルガ)を貴重に観せて世界を立たせ、新生(あらた)が生れる紛れの境地で人間(ひと)の表情(かお)など紅(あか)らみ始めて静かと成るのは分り合えない活気の道標(しるべ)がぽつんと置かれて在る故とも成り、老いも若いも男女も獣も、自分で着付けた軽い帯など腰から外して天(そら)へと還り、地上(げかい)など観て〝曇天返(どんでんがえ)しが興らぬ華の都は総じて得てして興味も湧かずに、在るのは大抵「模範」に咲かせた至極(しぎょく)の華。〟だと鼻先擦って狡(こす)い様(さま)にて、両親(ふたり)へ寄り着く未開の傘下は激しい雷雨が刺さる故にて従順(すなお)に寄り添う気になど成れぬ…、と調子を落して自分を牛耳り、他人を見知らぬ旧い奈落(はしご)へその実(み)を堕として窶れて在るのだ。

 走行鳴る内、両親(ふたり)の仕種を黙って観て居た俺の元まで母の視線が真逆(まさか)に落ち得てきらりと輝き、

「○○(○○には俺の名が入る)、お父さんの花を取って来て」

とひもじい欲心(こころ)をついとも観(み)せずに俺の背後(うしろ)へぐるっと廻した柔手を擡げて静粛に在り、どんどん気体が遠退く我が身に〝これぞ〟と見果てる母の寝息は絶えて掴めず意外と成り活き、「明日(あす)」の我が身を心配するのはくっきり浮付く父の牙城(とりで)と相成り生(ゆ)くのを俺の両眼(まなこ)は開口したまま母を呑み活き、父をも呑んだ。

 俺の孤独は満を持し活き、矢庭に図った企図の在り処を自信に認めて後退して行き、

「あっいっけね、忘れてた」

と笑う調子に自活を取り寄せ追い付く両眼(まなこ)を丈夫に生育(そだ)てて闊歩を忘れず、母の願いに了解した後(のち)、曲がり歪(くね)った壇に上(のぼ)って周辺(あたり)を見廻し、恰幅良いまま独走(はし)って行ったら空室(へや)が並んだ階下の廊下を隈なく探した我が身に当ってふらりとよろめき、何を言うのも動揺するのもその時向かずに尻尾を出さず、〝初め〟に観ていた新劇(ばめん)の具に「花」の在り処を難無く知り得た俺の言動(うごき)は母を忘れて廊下を忘れ、壇を忘れて宙(そら)へと昇り、高身(たかみ)に立ち得た孤踏(ことう)の記憶に思春に満ち得た予測を講じて自室へ入り、「花」を拾って還る際(きわ)には所々が破けた木目(きめ)など自宅の要所の彼此(あちこち)に見た。

 花は全体余りに黒い包装紙に依り緊(きつ)く巻かれて余所行き顔して、俺の目前(まえ)では母と夢想(ゆめ)見た幾多の都会が青い光に数えられ得て白く結えた結びの跡にはとても鋭い白金(プラチナ)等にも全体揺れない頼り無さだけ素直に喜び歌ってあって、「余所行き顔」には他人の這入りは許すけれども俺の這入りは事毎注意を投げ掛け疑問に問うては無心に居座る強い教理(ドグマ)が赤く光って端座に纏まり、花は全体総身を灯して薄明りの中凛と切り断ち用意され得た大事の用途をきちんと呈して静かに誇る。俺の表情(かお)には花の色葉(いろは)が自身の区切りに身悶えしながらそれでも現行(いま)を活き抜く調子の羽振りを暗(あん)に灯して誇って在るのを数刻程してじわじわ認(みと)めて生気を灯し、陽光(ひかり)を遮る黒壁(かべ)の隅でもきちんと揃えた生(せい)への歩速(ほそく)は衰えないまま根深(ねぶか)に刺さった花の新生(いのち)に逃亡させられ強い人工照(あかり)が奇麗に遮る「俺の言動(うごき)に誘(さそ)われ始める自然の摂理」に動揺して行き、加減を見知らぬ〝真綿の檻〟には突き止められ得ぬ身分が下がって「明日(あす)」の行方が曇って流行(なが)れ、初めに認(みと)めた〝遥かな感無(オルガ)〟は取り付く島など一向無いまま日本の底から上手く外れて、日本人(ひと)の間(なか)には緩まなかった。勝手を知らない俺のけじめは日本を跳び越え山をも越えて、川に架かった橋の下では奇麗な鰯が凡庸成るまま間(うち)から新生(うま)れて悪態吐(づ)き活き、何に対する結果を待たずに黒壁(かべ)を跨いで白い浜へと素っ飛び始めて、今まで過した母語を呈して俺を宥めた数多の作家に別れを告げ活き独走(はし)って生(ゆ)くのは俺から生れた〝二股大蛇(ふたまたおろち)〟の成す業(わざ)だった。勝手を知り得ぬ俺の麓(もと)から喜び勇んで達観するのは「昨日」も知り得ぬ鳶の体(てい)にて優雅に廻り、虚空の数など「手数(てかず)」と捉えて滑降するのは人間(ひと)との徒労に暫く堕ち得た哀れな胡瓜を大根下して齧って美味しく、〝きらいを覚った素朴の規則(ルール)に如何(どう)でも成るまま自分の規律を運好く拵え独語(ことば)を創り、錚々たる日を自分に返して勇んで嘯く日用詩吟(にちようしぎん)に使いを寄越して俺の表情(かお)にはこの時最早、母の新生(いのち)に傾いて在る。そうした茎には花の新生(いのち)が涼んで有り付き、冷えた全体(からだ)は包装紙により時計を集めて問言(もんごん)して活き、俺の目前(まえ)では冷やした細身(ほそみ)を冷蔵庫に入れ暫く固めた氷粒(ひょうりゅう)にも似た小さな光沢(ひかり)が冷えた儘にて薄ら在るのを仔細に教えて俺へと靡き、俺の感覚(いしき)は如何(どう)する間も無く母への用途を忘れないまま柔らに隠した母の秘密を得意顔して認(みと)めて在った。

「きっと母さんはこの日の為に大事に取って冷蔵庫に入れ、家族のみんなに破(ば)れぬようにと誰にも知らせず黙ってたんだ」

と俺の記憶は勝手に決め付けゆったりして居り、薄明りに観た部屋の何処(どこ)から光沢(ひかり)が差しても何も変らぬ無感の知識を程好く射止めて徐(やおら)に在って、潔い儘、母へ届けるブーケを採りつつ、たったったったっ…、二階へ続いて階下へ続く浅い段など暫く踏み締め身構え程々、下りる途中でふっと和らぎ、母へ届ける花の香りに盗んで見えない仄香(ほのか)を嗅ぎつつ沈黙して居た。沈黙するうち興味が廃れて街へと下(お)り出し、自宅(いえ)の向きから従順(すなお)に飛び立ち自然であって、俺の思惑(こころ)はテレビで良く観る「花の香りをふわっと嗅ぎ付け、表情緩めるちんけな少女」にすっかり見惚れて気を揉み解して、正純らしい感動場面に自分も身を添え味を知ろうと足を留めてふっと息抜き、どんなものかと、態々垂らした花の裾などくんくん嗅ぎ分け正味(あじ)を知り得た俺の胸中(むね)には小さな小花(こばな)が咲き活き密葬され得て、小馬鹿にしていた少女の香りに〝無想(レトロ)〟を覚えてつんとした儘、静まり返った壇の上にて〝ああ、やっぱりこれか、〟と芳香(かおり)に燃え立つ淡い自然(あるじ)にくっきり灯った縁(えにし)を見せられ善いも悪いも問えに内にて俺の情(こころ)は寸断され得ず赤い糸にて結ばれていた。

「この匂い…確かに好い匂いがするなぁ…」

など散々散らした花弁の香りに反省しながら企図に有り付き神々しい儘、絡んだ想いの数々観ながら絶対解け得ぬ未知の表情(かお)見て尚温もりが勝った平和を取り添え、自分が射止めた芳香(かおり)を手にする母への「花」を段を下り得て直後に対した父へ贈った。程好い芳香(かおり)に包まれながらに俺の心身(からだ)は父から離れてこれまで倣った幾多の映画を思惑(こころ)の内にて沢山携え、今の今まで見知った実感等から次第次第に焦点(ピント)が外れて揺ら揺ら蠢き躰が浮付き呆(ぼう)っとし始め、自分の躰が空気に浮んで可笑しく成ったか、或いは他人(ひと)から言われて躰の調子が単独(ひとり)で先行き俺の身元を失ったのかとはらはらし出して左目に在る仄(ぼ)んやり加減を酷く嫌って悠々在ったが、何分(なにぶん)拡がる可笑しな妖気に心身(からだ)も脚力(ちから)も惨(まい)って仕舞って何にも問えずに明るい白紙に光の青さを激しく認めて昨日迄の身を愛しく想った俺の志気には自分の生気がどよめいていた。

 粒々(つぶつぶ)薄ら透った影には父の在り処が静かに並んで俺へと対し、俺の両手は父を巡った数躯(すうく)の連想(ドラマ)が次第に膨らむ連動(うごき)を憶えて動揺成らずも大事を抱え、「花」を渡した俺の目前(まえ)には父の体躯(からだ)が分裂し出して活性され生き、堂々巡りに花を承(と)るのが体裁好くない仕種であるなど仔細に照らした人工照(ライト)の灯(あか)りに体(からだ)を揺らして静まり返り、俺の目前(まえ)ではそれでもお堅い父の萎縮を一層大事に訓(おし)えて在った。父の心身(からだ)は微動に揺らめき俺から貰った美形の花へと一旦気を遣り静かに在ったがそれでも流行(なが)れる暗黙(だまり)の内には息子に対する遠慮が生れて美味を味わい人間(ひと)を味わい、直ぐさま運動して行く思惑(こころ)に乗じて暗黙(だまり)を透して息子を見据え、「じゃあこれを…」と俺の気を引き、二人に通じる一室まで行き、何時(いつ)も使った調理器具から人工照(ライト)を受けても反射出来ない俎板など出しそれへ目掛けて「花」を置き遣り、

「天麩羅にするから…」

と料理作法や手順に対する細かな配慮をしっかり見据えて俺へと訓(おし)え、容易く取れない俺の気を取り、懇切丁寧、後生大事に、自分に育った息子の興味を自分で唄って程好く決めて、苦笑して居た俺の興味は父を透して花へと向いて容易くし終える「花」の調理に精進して居た。調理過程に仔細に捉えた文句を並べて俺を調え道理を扱い、「花」の新生(いのち)が活き得る場合(かたち)を見付けて姿勢(すがた)を調え安泰して活き、安定して行く父の姿勢(すがた)は板の上には微塵にも無く母が居座る光の密室(へや)へと自ら戻って子供に甘え、父の手からは悠々先取る矛盾の姿勢(すがた)もどれ程小さく映らなかった。「花」の正味(あじ)など具に吟味(あじ)わい俺をさて置き、板の上では真横にたえ得た花の姿勢(すがた)が包装紙を脱(ぬ)け裸体を晒し黒く灯った余所行き顔には全く寄らずに他人の身に成り、そうした姿勢(すがた)を花に見立てて父の寝言は小さく大きく動き始めて一人で在って〝切り方・切った後の花と茎との大きさ〟等まで小声に伝(おし)えて十分目立ち、俺の傍(よこ)では大喝するほど父の小声は曇らず通って一室(へや)の体温(おんど)を執拗(しつこ)く温(ぬく)めた。そうし父の姿勢(すがた)はこれまで得て来た「花」の姿勢(すがた)を何時(いつ)もそうして化(か)えて来たのか不思議に想わす衝動(うごき)を掴んで立ち活(ゆ)く様子で、俺の想いは再び父の元から程好く離れて一室(へや)を飛び交い父の姿勢(すがた)に不動の新たな誰かの姿勢(すがた)を重複(だぶ)らせ観ていて内実(かたち)を代えない強固な教義(ドグマ)に愉しく見入って黙って落ち着き、父の姿勢(すがた)はまるで誰かにそうして探した「花」など貰うと何時(いつ)もこうして調理を施しこうした姿勢(かたち)に花を据え置き眺めて楽しんだのかと、息子ながらに俺の思惑(こころ)は平々(ひらひら)飛んでも地に足着かずに、堂々巡りに新たに流れる父の連想(ドラマ)を末無(すえな)く捉えて勝手に解(かい)し、父と母との魅惑に遊泳(およ)いだ人間(ひと)の価値など時と場合に如何(どう)でも代わると巧く受け取り子として又活き、父の目前(まえ)では億尾に出せない気弱な自活を奇麗に仕舞って微笑を保(も)った。

 無縫天衣(むほうてんい)の人間(ひと)の流行(ながれ)に俺は父との哀れを承け得て〝息子〟から洩れ母へと逃げて、母の元では着付けに騒いだ仄かな騒音(おと)など明(さや)かに残ってすらすら遊び、俺の体躯(からだ)を擦り抜け果てては再び新たに母へ還って母の源(もと)から知らぬ表情(かお)してそよそよ流出(なが)れて柔らに先立ち、流水宜しく透った銀には以前(むかし)に憶えた俺の熱など勝手に温もり活き活きしていて俺の元へは一向返らず素朴に在って、熱を灯した銀の光沢(ひかり)は流水宜しく何に抗う術無く人工照(ライト)の直射も真向きに捉えて吸収して活き、柔らに先立つ新たな自然にその身を任せて微動に動かず小さく固まり、俺の元へは小声に囁く変幻自在の人間(ひと)の熱など定めに従い代わるものだと自体を干しては伝(おし)えて覚らせ、自由に傾く自然の吐息は人間(ひと)へ還って叫んであった。日常の日中(ひなか)に眼が治り物と物との焦点(ピント)が再び俺へと飛び込み活性され行き黙り込んでも苦痛が遠退く夢路を見据えて独歩を始め、苦しい経過は密室(へや)へ隠れて小さく成り行き俺と父とは新たな経過に上手く飛び乗り自然に在って、誰の評価も受ける事無く〝意味有り気〟を観て目標を得た。人間(ひと)の源(もと)とは如何(どう)して斯うして中々報せぬ自然へ赴き自由に夢観た覚醒等から異性へ跳び乗る跳力(ちから)を勝ち取り知らず知らずに成功している凡庸(ふつう)を見ながら活き行くもので、これが男児に立場を凝らして推測するなら異性の在り処は母性に引かれて内実(かたち)を調え奇麗すっかり落した汚(よご)れは俗世に溺れた罪の意識と相違無いまま過去へ散らした人間(ひと)の行動(うごき)は達観するほど丈夫と成り立ち思い想いの自覚の古巣へゆったり赴き却って寛ぎ、児(じ)には児なりの、親には母性(おや)の、独創(こごと)に居座る白亜の章など奇麗に窶れて回生して活き、改めながらに自然を講じる母性(おや)の背後は光沢(ひかり)が飾った未知の世界が充満している。俺の空想(おもい)は父に言われて操られて活きその気に落ち着き一室(へや)を出て行き、一室(へや)が並んだ蜘蛛の巣程度の気弱な一室(へや)へと自在に這入って何時(いつ)も観ていたその台所は誰かに使われ目的だった俎板等も器用に操(と)られて水にも彩(と)られ、俺の視線は空(くう)を泳いで他へと移り、勢い余って自宅(いえ)を跳び出す俺の熱気は知らず知らずに餅を突いては元気に成って、出来た餅など食べる間も無く仕方が無いので見知らぬ天地を醸した場所へと姿勢を正して辿って行った。

 無感に無関(むかん)を体好く携え他人(ひと)に知られぬ樞(ひみつ)の在り処を一切尋ねて眠って居たのに、自宅(いえ)を出る直前(まえ)情(こころ)の裾などつんと引かれて現行(いま)に観たのは居間に居座る従兄弟の姿勢(すがた)で粛々畳まれ、遠い場所から遥々来たのは労(ろう)に相(そう)して適度に積まれた理由(わけ)が在るのは当の主(あるじ)へ誰へとっても自然の理屈で矛盾は起らず、そうして従兄弟の光沢(ひかり)の内へと上手く這入って心成らずも暫く問うては無関を立て得る数多の労苦に苛々して居り、如何(どう)して此処(ここ)まで流行(なが)れて来たのか、上手く問うたが二人の姿勢(すがた)は他人へ留まり〝従兄弟(かたち)〟を観(み)せて、自然に飼われた冷たい矛盾へ巧く化け入(い)る人間(ひと)の甲斐へと言動(うごき)を透して生育(そだ)って在った。従兄弟(いとこ)の姿勢(しせい)は崩れて行って俺の良く知る以前(むかし)の知人(ひと)へその身を翻(かえ)してきちんと佇み、障子(しょうじ)の陰からのそっと言動(うご)いた鬼の正体(すがた)を巧みに見せ行き着物を取って、知識を逸らした知恵の輪などを俺の傍(そば)へと運んで来たまま当の鬼(あるじ)は欠伸をしている。従兄弟の〝容姿(すがた)〟は俺の目前(まえ)にてぽつんと佇み脚色(いろ)を伏せ活き、単色成るまま息を切らして俺へと駆け寄り表情(かお)を覗かせ、好く好く見入れば母の手元へ末好(すえよ)く置かれた明日実(あすみ)と八千代に上手く化け得たモノクロリズムと上手く輝(ひか)って行水(ぎょうずい)して居り二人の麓へ騒いだ泡(あぶく)は飛沫を彩(と)るうち疎らに飾った夢想(ゆめ)の無限(かぎり)を十分(じゅうぶん)謳って賛嘆していて、落ち着く間も無く二人の夫婦は姿勢(かたち)を漏らして俺から外れて出場所の無いまま大事に終った鬼の新生(いのち)を愛撫して居た。従兄弟の寝床が二つと知り得た俺の下(した)にはほうほう跳び生(ゆ)く二人の影など真綿に包(くる)まり疎らに落ち着き、何処(どこ)へ行くやら分らぬ寝床が不意図したまま奇麗に寝そべる新参等を体好く慰め無量に認(したた)め所々でメモして行くのを、俺の夢想(ゆめ)には真新しいまま気色が還って一生と成り、二人に憶えた奇麗な記憶は遠(とお)の主(あるじ)が活きる現行(いま)でも二人に敷かない丁度の筵を携え向くのが俺の感覚(いしき)に鮮やかだった。「二人」としていた従兄弟の姿勢(すがた)は銀に透った筵の背後(あと)にて幼く固まり無意味を装う包装紙になど巧く絡まれ衰退して行き、太く透った従兄弟の無情(いしき)は筵に夢想観(ゆめみ)た〝色欲魔人(しきよくまじん)〟を掌(て)に載せ跳ばして行くのが確固の義務だとハットを掌(て)に取る従兄弟の叔父(おやじ)は矢鱈と澄まして〝うむ、うむ〟頷き、八千代に宿った〝色欲魔人〟は透った体(てい)にて八千代を放り、衰退して行く帰路を想わせ未熟に在るのが当の好(よ)き日に千載して行く人間(ひと)の定めに筵を編み活き他人目(ひとめ)を凌ぎ、「透った体(からだ)」を身内へ保(も)つのは何とも歯牙(しが)無い罵倒とも知り悪態吐(づ)き生(ゆ)く自信の無限(かぎり)を地面へ落して反省するが、既に迎えた三人目の灯(ひ)を灯(とも)して明るく生育(そだ)てて行くのは自分の哀れに課された義務(もの)だと大手を振っては小心(こころ)を退(しりぞ)け、俺の自宅へ新たに生育(そだ)った新たな新生(いのち)を、束の間ながらに永遠程に自分に寝就いた長男(むすこ)と称して大事としていた。「大事」とされ得た従兄弟(ふうふ)の長男(むすこ)は肢躯(しく)の程度をひょろっと長くし肌理の細かい浅黒(くろ)い肌には水を灯さぬ熱気が静かに横になっては俺へと見詰める純朴(すなお)の正味(あじ)など活性させては吟味を失い、微睡む調子の億尾も無いまま不意と出せない波長の調度は長男(かれ)に居着いて離れる事無く、俺の眼(め)にさえ光沢(ひかり)が余って活き活きしており、そうして飾った長男(むすこ)の名前は俺の傍(そば)にて暗黙の内、知らず知らずに生育(そだ)った気配は長男(むすこ)に取り憑き小口(こぐち)を開(あ)いては〝僕の名前は弘樹(こうき)といって君の好く知る醬油顔した青年ですよ。〟と努々鳴らせぬ趣味の傍(そば)にも横顔が見え、ふらふら取り憑く青い表情(かお)には少し以前(むかし)に憧れ始めた神童(ミステリアス)など無残に立ち活き俺の塒を久しく蹴飛ばし〝廻し蹴り〟には年の端揃わぬ愉快な尽力(ちから)が漲っていた。

 雲間に覗いた浅い陽光(ひかり)は朝・昼・夕などどれにも無いまま体裁隠して緩々流行(なが)れて俺の自託(いえ)へも斜光を差し活き、直射から観た斜光の程度は人間(ひと)の生死に程無く居着いた不思議を連想(ドラマ)へ化(か)え得る実力(ちから)が巧く具わり俺へと立って、俺しか知らない自宅の風紀を味好(あじよ)く馴らした体温(おんど)の変化は人間(ひと)の体温(おんど)と交錯して活き真向きに捉えた斜光の在り処にうっとりし始め、新たに生ませた弘樹の姿勢(すがた)を如何(どう)でも好いまま矢張り暗(あん)へと茂みを隠さず堂々巡りを上手く掲げた自然の源(ありか)へ矛盾を起(きた)さず還らせていた。俺はそれまで彼を見詰めて空(くう)であったが次第に輝く現行(いま)が見え出し従兄弟の一人が矢庭に立ち活き密室(へや)を出ぬまま肢体を沿わせて母の元へと静かに居着いて抗わないのは既に知り得て気丈と成り着き、〝従兄弟の一人〟が八千代であるのに揚々気付いて以前から得た恋心に似た淡い記憶を再び澄ませて自分の言動(うごき)に機敏と成りつつ、八千代の傍(そば)から一刻程にも離れないまま機微に長じた元の鞘へと身を潜めて居た。八千代は固まる背中をうんと持ち上げ何処(どこ)か遠くを歩いて来たのか彷徨い歩いた情(じょう)を放(ほう)って弱々しく在り、それでもなよなよしないで気品を取りつつ丈夫に振舞う足腰等には他人に見せ遣る浮気が見て取れ俺にとっては固さを増し行く女帝の姿勢(すがた)に至極似て居り、くったり疲れた八千代の表情(かお)には俺だけ寄せ得ぬ小さな規律が女手によりか細く成り立ち俺をも統べ活き、八千代の領土で支配され得る俺の心身(からだ)は〝堂々巡り〟に相容れないまま女性(おんな)の依怙地を程好く嫌って中央に立ち会釈もせず儘、八千代の仕種を分別顔した俺の感覚(いしき)へ堂々放(ほう)って直ぐさま居直る未熟な痴態に連想(ドラマ)を張らせた。そうして間も無く、俺の傍(そば)からふっと立ち去る八千代の匂いに鼻を追わせてくんくん嗅ぎ活き、八千代の衣服か素肌か判らぬ源(もと)へと俺の空想(おもい)はすっと移って恋歌を認(したた)め幼く鳴り出す八千代の吐息に足を鳴らしてぐっと近付き、誰に観得ても心地の好いほど顎を尖らす俺の会釈が這(ほ)う這(ほ)う立ち行く八千代へ目掛けて効を発揮し揺れずに在ったが、八千代の表情(かお)には如何(どう)にも先から濁った疲れが薄ら漂い、腰を下した椅子の手置きへ重々(じゅうじゅう)根付いたお尻はさて置き無感に在って、俺の会釈も無関に捕われ消えて行くのに俺の情(こころ)はむっと起って沈黙してあり、それでも俯く八千代の姿勢(すがた)に心底透った不愛想(ぶあいそ)を観てそれから束の間立腹して居た。

 気色と景色が順々巡って俺の思惑(こころ)へ発破を掛けつつ黒い暗(やみ)にも極めて機敏に反応する時、如何(どう)した事か、俺の夢想(ゆめ)には此処(ここ)まで来るのに夢游を疑う小さな華美など大きく群がり閃き始め、夢想(ゆめ)の狂いに如何(どう)する間も無く呼吸を合せて遊泳(およ)ぐ事さえ束の間出来ない有料ダンスに不意と右手を奪(と)られて躍って行く頃、ホームレスにも行燈にも似た八千代の細身(ほそみ)を上手く破って出て来た華とは、何時(いつ)ぞや見知った水光(みずびか)りに照る薄い黄土の俎板だった。〝女性(おんな)というのは一度や二度程軽いくしゃみに翻弄されつつ自分を誘った純朴(すなお)な夕日に独歩(ある)く対象(もの)だが、異性(おとこ)に生れた男(おれ)の傍(そば)では果(さ)きに輝く薄手の涙が一つ光沢(ひか)って未熟と成らず、同じ恋にも動作が先行き困惑するのは常時(いつも)に先立ち稚拙でもある。こうした稚拙がどれ程保(も)つかは軟体(からだ)の内では確立して在り他人の動揺(うごき)も然程気にせず近くで観るより遠くに投げ遣り眺めた場合が余程仔細に正しく映るが、如何(どう)して間も無く他人が知るのは密封され得た恋への予期にて、当り障らず少女に向くのは大人に知れ得ぬ恋の未熟が熟して先立つ人間(ひと)の無感(オルガ)の成就に在るのだ。少女の姿勢(すがた)は大人に成っても影を忘れず男性(おとこ)に宿り、休む間も無く結束され行く社会の灰雲(くも)には一目(ひとめ)も呉れずに流行(なが)れるものだが一旦手にした母性の司祭(あるじ)は死んでも温度(ぬくみ)を手放す事無く白い空地へ独走(はし)って行って、自分に纏わる身の上話を解体して活き宙(そら)へと透る。女性(おんな)の姿勢(すがた)は一度はこうして世間を離れて無理から離れ、新たな理屈へ無理を越え活き孤独に位置する純粋等へと辿って生(ゆ)くのだ…。〟云々、淋しい過去には俺の木霊が記憶を煎じて大きくはだかり人間(ひと)の存在(すがた)を遍く未熟へ総じて仕返し弱い浮気を地へ落ち着けながらにまったり止った線路の胡蝶に溜息漏らして周辺(あたり)を鎮め、浮気心に暗(あん)を灯した喜楽の安堵は死臭漂う堂々巡りに交尾をし忘れ眠った蜘蛛へとその身を滑らせ人間(ひと)の存在(かたち)を抜け穴だらけの確立だと言う。心身(からだ)が宙(そら)を飛び交いこうして俗世に沈んだ〝真実一路〟を掌(て)に採り眺めて自由気儘に連呼して行く〝未熟〟の相撲に一度は零落れ環境(まわり)を取り成し、自分の観る物総てを放(ほう)って光沢(ひかり)に突き出た淡い少女を彩(と)るのだけれども、〝板〟のSample(見本)が要所の果(さ)きにて誰かに似せられ延命鳴るうち誰かに捨てられ思い煩う悩みの〝種〟など地上に撒かれて生気を伴う未完を装い素行(すこう)を採れば、感覚(いしき)絶え絶え燃え立つ限りの延命(いのち)を観て奪(と)り自己(おのれ)の強味(つよみ)に随分涸らした魅惑の長(ちょう)さえ数多に紡いで温(あたた)め直され、遠(とお)に透った以前(むかし)の源(みず)など涸れる間も無く勢い溢れて界隈(そと)の剣(つるぎ)を手にする間も無く塩と代わって俺の背中へ伸し掛かるだろう。雪崩れた夢想(ゆめ)には曇りの無いうち主張するべき新たの限りは常に返って一点に在り、押し出す〝主張〟は俺の背中へ鞭打つ手に依り独走(はし)って打(ぶ)つかり〝延命〟成るまま昼間の行事に対峙してある。〝魅惑〟を憶えた経過(とき)の粒子にここぞとばかりに虚言を魅せられそのまま大した注意を覚えず何処(どこ)かへ埋葬され得た俺の無垢には、ちっぽけながらに〝魅惑〟の長子が踏ん反り返って小言を宣い、踏ん反る調子に白木が軟(やわ)いで孤高に仕上げた魅力の程度を赤切れするほど寒さを凌いで矛盾を失(け)し活き活発成るまま新調され得た有名無実を海へ寝かせて遊泳(およ)いで行ったが、何に対して誰に対して正当(かたち)を知れずに怒調(どちょう)が奮わぬ身勝手ながらの愚問の過多には幼い茂みが人間(ひと)を惑わせ小さな灯篭(あかり)を失(け)しても見たが、何分(なにぶん)厳寒(さむ)さを凌げぬ無謀な頼みと相対(あいたい)して活き活発成る哉、寝屋を保(も)たない古巣の門(かど)まで総身を侍らせ柔らに成り得て、珍重され得た可笑しな神秘(しかけ)を片手間通して相手を見限り俺の当てには〝前進〟あるまま無機の表す景観等には不意とも操(と)れない人間(ひと)の末路が暗(やみ)を被(かぶ)って合掌していた。前進して生(ゆ)く俺の姿勢(すがた)は現行(いま)を脱(ぬ)け出て人の輪を知り、未熟に萎え得たしどろもどろに汚(よご)れて透る「明日(あす)」への感覚(いしき)へ一向向き得ぬ老女の容姿(すがた)が天(そら)から降(お)り得て自然に落ち着く別天地(パラダイス)の巣へそのまま駆け込み翻(かえ)って失(き)え去り、内実(かたち)ばかりを躰へ掴んで放(ほう)って棄(な)げては何を知らずに無意味を知り活き人間(ひと)と天(そら)とに許容(かこい)を生み出しあっさりした儘、成長して生(ゆ)く意味の姿勢(すがた)を膨張させ得た人間(ひと)の進化にトーテム・ポールは崩れてどっぷり〝夕日〟を観たまま沈んで生(ゆ)くのに一層哀しい憐れを知りつつ呑気で在って、落ち着く間も無く次の連(れん)では次の〝従兄弟〟が靴音身形を優雅に鳴らして伴侶を連れ込み、俺の情(こころ)へ自信を曇らす数多の夕日は夕日に有り付く人工照(ライト)の灯りを至って丈夫に着飾らせて活き俺と従兄弟の折り合い等にはぎすぎす鳴り行く固い絆が白砂の数ほど散在していた。

 伴侶と手を取り胸中(むね)の内(なか)まで寸分狂わぬ調子を連れ添いやって来たのは母の田舎の郊外(そと)の周辺(あたり)で暫く夢見た流行等にはぱっと跳び付く末弟に在り、これが生育(そだ)ってこそこそ隠れた夢想(ゆめ)の在り処を存分違(たが)わぬ露わな手腕で巧く操り華麗であって、夢を定める無為の手綱に末弟ながらに甘えて飛び乗り俺の目前(まえ)では知人に落ち着き俺の表情(かお)などちらちら眺めるぼんやりした灯(ひ)を醤油顔には艶めかしい程、幼く成長(ちょう)じた無傷に具える調理の手腕(うで)には俺の常識(かたち)が常識(かたち)を足さない無益な経過を程好く流行(なが)して〝水光(みずびか)り〟に無い他所の手順(いろは)を漸く揃えて角(かど)など立てずに、〝真綿〟に廻った毒の効果は寒いながらに温もる一室(へや)にて俺の温度を上昇させ得た。この従兄弟の名は秀人(しゅうと)であって、何をさせても無害を繕い自身は立ち退(の)き、浮べた気色が並べる果てには何時(いつ)でもか細く呑(のん)びり撓(たわ)んだ流行(ゆめ)の司(あるじ)が微動だにせず揺ら揺らさせられ、俺の心身(からだ)はこうした〝従兄弟〟に散々罵倒され得た気色が翻(かえ)るが〝従兄弟〟に在る故造作に覚えた詩(うた)をも問えずに悠々流行(なが)れた感覚(いしき)を取り添え兄貴ながらの自慢の程度を程好く下(おと)して正味を採ったが、この日従兄弟は俺の母へと自慢の料理を食わせる向きにて伴侶の手を取る左の手などは汗も掻かずに綽(しなや)かに在り、結婚記念の馳走の為にと鯛でもないが、重々遊泳(およ)いだ世間の波にもひっそり耐え得た秀人(しゅうと)の熱気は俺には眩しい新たな背中を蹂躙するほど魅せ得た内にて俺の言動(うごき)を容易く仕留めて朗らにあった。

 秀人(しゅうと)の家族は人群(むれ)から外れて丈夫に成り立ち軽い流行(はやり)にその身を任せて俺の傍(そば)から離れて生育(そだ)ち、自活を求めた両の手により世俗に活するあわやの文句を大きくその掌(て)で転々(ころころ)転がし自転するうち揚々転んだ自活の腹には何にも見得ない運河が拡がり世間に懐き、他人顔した白亜の筵は黄色く輝(ひか)った大事を見据えて娘を育て、俺から外れた〝従兄弟〟の周囲(まわり)で〝従兄弟〟の密室(うち)にて、遠くに流行(なが)れた夕日の背などを流行(ながれ)に追い掛けそれまで育てた〝俺の知人〟を温(ぬく)い寝床に放(ほう)った儘にて〝自族(じぞく)〟の在り処をしっかり根据(ねす)えた固い壌土に体好く任せて俺への別れを軟い言葉に空(くう)を保たせ烈火に吐いた。それでも秀人(しゅうと)の体好(ていよ)い機敏はほっそりして居り他人(ひと)に知れても何分(なにぶん)問いなど起る事無く空(くう)に紛れて流行(はやり)に紛れて、何処(どこ)ぞの家族と新たに保てた荒い主従に身を任せた後(のち)〝ふう〟と息吐(いきつ)く微細な姿勢(すがた)は俺の目前(まえ)でも何分(なにぶん)丈夫で、一切忘れた昔の記憶(こと)など棚に上げ得た孤独の内にて板を操(と)るのは柔らに落ち着き、如何(どう)する間も無く宙(そら)を眺めて有頂を欲する俺の幸(こう)には更に解けない未熟の熱気が活気を帯び出し熱い吐息に始終を憶えて真っ赤に輝(ひか)った大蛇(おろち)の恒温(おんど)が次第に延び得て玉砕して活き、活発操(と)らずに自嘲(じちょう)を採り得た仔細な機微には幾多に跨る幾夜(いくよ)が目覚め得、俺の孤独は無稽成るまま惨く嵩んだ自虐の音色(ねいろ)を細々(ほそぼそ)仕上げた。空虚に仕上がる〝自虐の音色(ねいろ)〟は生活(くらし)を仕立てる微細(よわ)い音色に細々(ほそぼそ)敗け活き呼吸するまま無形(かたち)は整い、活きて生(ゆ)くまま次第に離れる秀人(しゅうと)の亡霊(あかり)を難無く追い掛け自体(じたい)に纏わる幾多の用意に底根(そこね)を挙げ行きぐったりしており、還りがそれまで判らなかった〝自活〟の運気は秀人(しゅうと)の新生(くらし)が程好く成り得た浄土の最中(さなか)にほっそり敷かれてのほほんと在り、父の還りに恐怖を憶えた幼少伝(ようしょうづた)いの旧い記憶が底々(そこそこ)遊泳(およ)いで浮上し始め、俺と秀人(しゅうと)を他人に配(はい)した堅い現行(ばしょ)までのっそり挙がって表情(かお)を見せ活き、唯そうして存在するまま俺の注意を根強く引いては〝荒唐無稽に振舞う姿勢(すがた)〟を俺へ躾(しつ)けて遊泳(あそび)に行くのだ。そうして経過(とき)が先立ち、無形に片付く俺の活気は如何(どう)でも好いまま秀人(しゅうと)の〝自族(じぞく)〟にちょこんと付き添い遊びに行くなら自分も乗せてと上手い具合に〝従兄弟〟の影にも死角が見え出し避暑地を見付け、熱い活気は熱気の振りして段々静(しず)んで黄色を見せ活き俺の目前(まえ)では燻る夕日も碌(ろく)に覚めない熱い哀れを世間へ報せて界隈(そと)へと置いて、彼らの独歩(ある)く先などやんわり灯して細い路地には人気(ひとけ)が集まる軽いムードを仄(ぼ)んやり映して俺と秀人(しゅうと)に跳び付いていた。秀人(しゅうと)の家族は〝自族(じぞく)〟と称され軽く見得ても三人家族で、嫁と娘が明るく佇み柱を呈して大きく寝そべる秀人(しゅうと)が並んで一(いと)と化し得た自塊(じかい)等には俺には不朽の初歩(いろは)が唯舞い、鬱陶しい程眩しく眩暈さえ刺す虚無であるのにその時限りは秀人(しゅうと)が明るく嫁も娘も影に燻(くす)んで無体を呈して気配だけ見せ、俺の隣で殊勝に飾られ唯振舞うのは黙々働く秀人(しゅうと)の姿勢(すがた)ではっきりしており、宙(そら)へ懐いた俺の情(じょう)には何も咲かない可笑しな記憶が平々(ひらひら)舞い散りそのまま還らぬ区切りと成り得て収拾付かずに、俺を差し置き母の元へと素早く駆け寄る新たな秀人(しゅうと)の発揮(かがやき)等には誰にも見取れぬ〝奇妙な報い〟がそのまま上気を欲して自活へ寝そべる淡い感覚(いしき)が運気を落して見事に咲き得た未熟の発揮を俺の元へも落して来ていた。母と父との結婚記念に他人顔して颯爽鳴るまま輝(ひか)る腰帯(バンド)に片手など当て、見得ない嫁と娘のか細い丈気(じょうき)を強味(つよみ)に持ち替え順風鳴るうち自然と解け得た〝順路〟を歩いて温存していた見栄の狂喜を懐(うち)へと認(したた)め我が家へ辿った秀人(しゅうと)であったが、俺の方ではそれまで得て来た過去の試算に何かと悩める熱気が急いで精算出来得ず後退して行く活路を按じて未熟に生育(そだ)った〝俺〟だけ持ち得る記憶の在り処が十分固めた壌土へ向かずに彷徨い歩いた疲労の陰にてくったりして居り俺も立たずに、それ故天気の好い日にこうして駆け込み微弱(よわ)いながらに懐(うち)へと秘め得た独りでに成る強味が映えれば俺を観て来た脆弱(よわ)い環境(まわり)はがらがら崩れて折り合い付かずに、丁度好い筵を見付けて途端に静まる奥間の暗(やみ)へと直ぐさま退(しりぞ)く無言の術など上手に浮き出て宙へと集まり俺の心身(からだ)を仔細に引いては見得なくするので、他人に知られず無機と成り得た俺の姿勢(すがた)は自分にとっても未明に働く機体と成り着き俺の感覚(いしき)は具に揃った秀人(しゅうと)の家族を眩しい程度に熱気を鎮めて自在に嫌い、秀人(しゅうと)の家族の来訪などにはこの時限りに苦味を憶えて苦心を認(したた)め甘い吐息に仄(ほ)んのり和らぐ母の言葉を上手に束ねた。秀人(しゅうと)は自宅に並んだ俺の孤独を完全無視して上手に扱い、ふとした好き日に〝吉日〟詠って朗らに成り着き自分の家族を上手く束ねて新家(あらや)を訪れ、俺を生育(そだ)てた父と母とに上手い調子に挨拶したあと素手に認(みと)めた具材を揃えて料理を作り、揺れては成らない俺の土台へ一足飛びにて流行(はやり)を身に付け、暫く落ち着く俺の安堵へ訪ねてくれた。「くれた。」と言うのは俺にとっては傍迷惑成る秀人(しゅうと)の孤独が〝従兄弟〟に隠れて上戸と成り着き、打ち解けられない母への言葉が俺を遠ざけ寝て居たからだ。

 それから佇む孤独は嘲(わら)って俺の〝記憶〟を充分吟味(あじ)わい上戸に憶えた新参者(しんざんもの)成る秀人(しゅうと)を観る内、時偶(ときたま)外れた過去の〝熱気〟が物言う表情(かお)にて俺の元へと気丈に還って微睡み始めて、胡坐を掻いてた俺の傍(ふもと)で大きく居座り丈夫に自生(そだ)ち、何言う間も無く肥った温床(ねどこ)を俺を取り巻く情(こころ)へ拡げて合の手を取り、未熟に育てた両親(おや)の手前にお辞儀をするほど礼儀の調う身形をしたまま俺へ向かって、〝未婚で在るのはお前だけだ〟と一言残して一旦退(さ)がり、そのうち静かに宙(そら)から返って挙動不審な俺の目付きを和らげ再度こうした連呼を試み、「立場」と「孤独」が否応無いまま宙へも解け得ぬ身上足るのは俺に組まれた過去の細工が混沌無形に在るからなのだ、と父へも母へも少し恨んだ自棄を投げ捨て悠々転がり、俺の心身(からだ)は〝細工〟より成る微弱(よわ)い肢体へ落ち着いて居る。幾つの家族が揃って界隈(そと)へと同じ歩幅を講じて在っても未婚の俺には「立場」も無いまま不思議と見据えた仕儀の苗床(ねどこ)は俺から移って呆(ぼ)んやりし始め、俺の傍(そば)へと悠々集まりそのまま不動に何処(どこ)かへ落ち着く既婚信者に一託(いったく)され行き無事を認(したた)め、俺の両脚(あし)には何か大きなオーダーメイドの枷でも付けられ調子を挙げずに駆逐され得る微弱な容姿に実力(ちから)を落した俺の定めは、人群(むれ)から外れて一個衰退(いっこすいたい)、煌めく一等星など夜空に認(みと)めて希望(ゆめ)を追うなど稚拙な熱気に絡まれ始め、常識(かたち)の微動(うごき)に何かを見付けて心酔している〝既婚信者〟に未だ成り得ず苦労するのが自分の定めと、十分足るまま無為に過ごした烏有の階段(はしご)に掛かった我が身を同情するうち無意味を報せた虫の報せに心を躍らせ白熱していた俺の〝孤独〟は情緒を失くして固物(こぶつ)と化した。まるで、完全に、立場を追われて無宿の自分と成り得た事に、無性に振舞う気恥ずかしさと自分の全てを蹂躙されたような感覚(かんかく)を憶えたようで、「やっぱり来たか…」と俺は秀人(しゅうと)と秀人(しゅうと)の家族に身構えたのは、その時限りに遠い記憶に無理に返され澄まして在って、俺の夢想(ゆめ)には遂に一度も、その後の影にて二人を観たのは滔々流行(なが)れる気色に埋れて立脚せずまま陽々(ようよう)輝く思い出話に寸断され得た。

 秀人(しゅうと)の家族は俺の自託(いえ)まで一度も知らない自家用車を上手く操り事故も無いまま無事にこうした好き日に元気な姿勢(すがた)でゆったり立ち寄り小さな事にも大事に笑ってきらきら輝く感覚(いしき)を纏って目前(まえ)へと居座り、まるで俺の思惑(こころ)が石ころ蹴飛ばし誰も無いのを〝ああ良かった〟等と言ってる間(あいだ)に次の孤独が無関を呈して自然を操り俺の情(こころ)を淋しく固めて馴らした様(さま)にて、俺の思惑(こころ)は秀人(しゅうと)を跳び越え〝好き日〟を目掛け、石ころ蹴飛ばす振りをしながら一層固まる無言の孤独を握った拳へふらと隠してそよそよ遊泳(およ)ぎ、見得ない「明日(あした)崩れ」を如何(どう)にか斯うにか真面に仕上げて少年(こども)の〝好き日〟を懐(うち)へと認(したた)め丈夫と在るのを、何者にも一切破(ば)れずに構築した後(のち)再び合せる〝家族〟の歩調に静(しず)んで行った。〝静(しず)み〟ながらに優雅に流行(なが)れる自然の寝息はまるで誰かに見取れる様(さま)にてくったりした眼(め)を不意と持ち上げ我が家を照らした昼の陽光(あかり)を旧く畳んで自流(かわ)へと捨てて、秀人(しゅうと)と俺とが程好く安める安易な境地を田舎に映った京都の古巣で真っ向見据えた山河(やま)へ向かって眼(め)を上げ頭(くび)を擡げて、四旬に沿(そ)わせた旧(ふる)き〝好き日〟を俺の思惑(こころ)へ巧く忍ばせ自活を引いた。〝旧き好き日〟は俺へ現れ、秀人(しゅうと)の刹那に遊泳(およ)いだ眼(め)を観て古巣へ誘(さそ)った自然の在り処を山河(やま)へ認(みと)めてふらふら独歩(ある)き、近付く山河(やま)には美味しく茂った林など在り林にか細く沿い得た白い線には柔らに泳いだ河(かわ)が目映(めば)えて美しくも在り、何処(どこ)かほっそり懐かしくもある俺の胸度(きょうど)を速水に見立てて尖らせ得たのは如何(どう)にも止まない郷愁から来た少年(こども)の気熱に好く好く絆され盲信伝いに現れ始めたキャンプの用地が程好く象(と)られて無言に成り立ち、秀人(しゅうと)の自家用車(くるま)がおっとり停まった茂みの裾には、そうして立たせたキャンプの用地がしっかり佇み脚色せられて、俺の情(こころ)に〝林間学校〟等いう古称(こしょう)を付けられ宙(そら)へ燃え立つ鳥の孤独にその身に育てた〝旧き好き日〟を手玉に取りつつ俺の為にと開場していた。そうしたキャンプの敷地に人気(ひとけ)が群がり宙(そら)が遊泳(あそ)んで無重を伝(おし)え、俺と秀人(しゅうと)は身軽に跳ね活き〝ここぞ〟とばかりに並んで育った人間(ひと)の〝気球〟を〝ひょい〟と持ち上げ人気(ひとけ)に有り付き、俺の歩幅は秀人(しゅうと)の歩幅と容易く比べて程好く小さく、子供を保(も)たない俺の身上(うえ)には首の座らぬ現行(いま)が遊泳(およ)いで「無重」に解(と)け逝き俺の「気球」に紛れて宙へと失(き)えて、歩幅に同じく身の丈程度も俺に勝(まさ)って優に大きな秀人(しゅうと)の両肩(かた)にはまだまだ小さい小娘(むすめ)の吐息が小さく掛かってふわりと落ち着き、そうした姿勢(すがた)は俺に向かって程々眩しく人気(ひとけ)が芽生えたカオスの最中(さなか)に充分在ってはぎらぎらする程眩しく成り立ち俺の感覚(いしき)を濁らせ生(ゆ)くのは〝丈夫〟と成り得た秀人(しゅうと)の周辺(あたり)を仔細に組ませた自然の一手が更に気丈に育って生(ゆ)くのが当然とも成り、そうして成り立つ秀人(しゅうと)の周辺(あたり)を隈なく遊泳(およ)いだ自然に活き得た気色の破片が行く行く合さり目立った気色の全体(かたち)は俺にとっては全く揃って疎ましいほど手に手を取り合い宙(そら)へと駆け活(ゆ)く〝気〟の塊など見得ない程度に激しい発輝(ひかり)に包(つつ)まれ始め、俺の夢想(ゆめ)には秀人(しゅうと)へ解(と)けない無言の主従がこっそり活き得て拙く揃った少年(こども)の気色は微細と成り着き見得ない程度に人間(ひと)を離れて〝宙(そら)〟へ飛び立つ〝火の鳥〟の背にふわりと跨り消されたようだ。

 そうしたキャンプの宙(そら)には銀河が生れて俺に対する秀人(しゅうと)の姿勢(すがた)を在り方からして如何(どう)とでも変え、青い野菜が肉に変じて水を得る程、小さな繊維は程好く解(ほぐ)れて身内を温(あたた)め、俺に対する秀人(しゅうと)の容姿(すがた)は所々で〝漏れ〟が生じて油断も独走(はし)り、秀人(しゅうと)の様子に釣られた家族が嫁と娘に姿勢(すがた)を化(か)え活き俺の目前(まえ)では白壁(かべ)を呈する〝肉厚舞台(にくあつぶたい)〟を講じて在った。次第に高まるキャンプの宙では気配だけ観る人気(ひとけ)の総身(かたち)を矛盾を消す儘ゆらりと靡かせ、秀人(しゅうと)に負われた娘の姿は地面に降り立ち涼風(かぜ)に並んで手と手を取り合い親子の絆を固めて振る舞い、嫁の懐(うち)には秀人(しゅうと)へ対する少しの恋と、俺へ対する少しの遠慮で、初めから成る他人行儀を大きく揺らして地面に立たせて、何時(いつ)だか見果てぬ白雲(くも)の様子を仔細に浮かせた溜まりを取り添え情(こころ)を認(したた)め、白桃色した腿の辺りを健やか鳴るまま俺へと観(み)せ活き俺への遠慮は華を咲かせて私情を差した。曇った情(こころ)は俺へ懐いて気分を巡らせ、器用に成し得た秀人(しゅうと)を併せた〝家族〟と自分とに立つ新たな絆へ闊歩し定める仕種を上々見遣って大人しくも成り言葉を噤(つぐ)み、明日(あした)から成る身内と自分の斡旋等には如何(どう)して斯うして懊悩(なやみ)が尽き得ぬ経過(とき)を想って辟易して居り、して居る内には微睡みにも無い新たな気勢が空(くう)を独走(はし)って俺まで辿って、白桃色した銀の娘をこれ見よがしに乞い出す無闇な奈落が俺の目前(まえ)では漸く居座る。遂に実った恋心をして、俺の夢想(ゆめ)には天真爛漫、〝孤高〟が崩れた吐息が感じてぽつりと独歩(ある)く教示(ドグマ)が相光(あいびか)り慌てふためく怒涛の初春(はる)には当りに澄ました〝ちんどん娘(むすめ)〟がぽとりと落ち着き蒙々(もうもう)に在り、幾分富み得た知識の程度は恋に居座り俺へと懐かず、未だ恋する独女(おとめ)の姿勢(すがた)を幾夜(いくよ)も過した覚悟に魅せ得て結託する程、俺にとっては少女の棲家(ありか)が気忙(きぜわ)になるまで執拗(しつこ)く輝(ひか)って天真(てんしん)へ向く。その実(み)を飾らず捨て置き様(ざま)にて俺にとっては小さく奏でた少女の行為(うごき)が底儚いほど具に仕立てた人間(ひと)への空虚と飾られ魅せられ、「明日(あす)」にとっては俺へ直った直情加減が宜しくないほど未明に照らされ〝孤独〟を知り得た無知の態度が甚だ極まる人間(ひと)の虚言に満ち満ち溢れて怒涛を報せ、土足で上がった彼女の行為は悲しい位に俺へは届かず、確立され得た〝未知〟の姿勢(すがた)が二人にとっては多重に拡がる猛気(もうき)であるなど自然に転んだ白桃色(はくとうしょく)には男性(おとこ)に対する浪漫の情(こころ)が安易に伏されて蠢き始めた。〝死相〟を知らない二人の総身(からだ)は自然が呈した魅惑の際(きわ)にて心細くも取り留めないほど自由に極まる無重力などすっと掌(て)に採り眺めて在ったが、鬼畜に謳った男女(ひと)の性(せい)など余程を透って議論を落ち着け寝静まる夜二人を祝って正味に活き得た美酒(さけ)の酵母を仔細に呑み付け道理を知り採り、「明日(あす)」へ向かった初めの自体に戻って固守など美酒(さけ)の流行(ながれ)に微細に応じて揃えて生き抜き互いの領土をしっかり守って息巻き、彼女の言葉は涼風(かぜ)に透って聞えず知られず、俺の周辺(あたり)は〝当り〟の付け得ぬ清閑(しず)かな空気に育って在った。彼女の美声は秀人(しゅうと)を呼び得ず娘を呼び得ず、宙(そら)に舞い散る初春(はる)の陽気に朗らに唄って仄(ぼ)んやりして在り、呑気に信じた亀の甲など優に極まる長寿と知り採り、自分の相手を自然に見付けて嘆(おら)んで在ったが、息も絶え絶え昼が深まり、情事に見取れた二人の男女は界隈(そと)を投げ捨て小屋へと逃げて、手にした金貨(コイン)は何時(いつ)も変らぬ〝銀〟を呈して黙して在るなど、事実に解け入る盲信(まよい)の元気を容易に勝ち取り奥へと進み、誰の目前(まえ)でも落す筈無い情(こころ)の動揺(うごき)に暫く見惚れて浮気し、曇天模様の宙(そら)には今でも厚い肉感(かたち)が程好く解け得てその実(み)を見せた。

 大喝するほど遠くで鳴り得た小声は育って俺へと長(ちょう)じ、「明日(あす)」の活路を算段して行く自己(おのれ)の活気が如何(どう)にも乏しくも少し彼女の方から自分へと観る絆の具合に熱が付される気丈を期したが、如何(どう)にも此処(ここ)まで小さく大きく、大喝(さけび)の態(てい)にて届いた小声(こえ)には何処(どこ)かで堕(お)とした母性(はは)の姿勢(すがた)がくっきり映って柔らに馴染めず、ひょいと唄った自然の初順(いろは)は俺へと課した所業の手筈を薄ら示唆する挙動の様(よう)にも仄(ぼ)んやり想う。俺の思惑(こころ)に孤高を忘れて激しく立ち得た白い棒には数多の世迷を忘れた〝一足飛び〟など丈夫に飾って奇麗に見えたが、彼女の素手には既に見(まみ)えた〝気丈〟の独身(かたみ)が虚無を背負って往来して在り、未熟に育った俺の感覚(いしき)は自然を象る〝堂々巡り〟にぼとんと実った白桃色(はくとうしょく)さえ〝運気〟を憶えて退(しりぞ)いたのかと、一向経っても具に知れない微弱(よわ)い盲信(まよい)に気が乗り一心不乱に虚偽を解(かい)して未熟を相(あい)した私闘が芽生えてきょとんとしていて、褐色(セピア)に信じた人間(ひと)の過去など現行(ここ)にて再び俺へ目掛けて富んで来るのが幾年経っても解(かい)の付かない疑問であるのを反省しながら俺の郷里は根強く輝(ひか)って母性(はは)へ向かった。漆黒(くろ)く鎮まる紀行の果てには彼女を見知らぬ微弱(よわ)い快感(オルガ)が紫煙(けむ)に巻かれて呆(ぼう)っと立ち活き、彼女と俺とが二度と見(まみ)えぬ世上の憂いを見事に呈して泣き顔に在り、感覚(いしき)を回(かい)した俺の両眼(まなこ)は唯の一度も虚言(よわね)を吐かずに〝宙〟の果てまでずうっと延び行く経過の流行(ながれ)を指の先にてぽっと表し、二人の出会いに称賛していた。人間(ひと)に生れた過去の吐息が見知らぬ体(てい)して俺の知り得る「明日(あす)」へ遊泳(およ)いで活きて生(ゆ)くのは、未熟に育てた〝固陋の晴嵐(あらし)〟が彼女を通して下界へと立ち、目下に流行(なが)れる人間(ひと)の常識(いしき)へ真向きに立ち得て呼吸(いき)する故にて、俺にとっても彼女にとっても新たな〝思春〟が自体(おのれ)を見付けて遊泳(あそ)んで行くのに見方の角度を大きく変えても小さく変えても気取った初春(はる)には一向止まない〝晴嵐(あらし)〟の具合が酷似しており可笑しくさえなく、俺の情(こころ)は彼女を潰えて勝気を姉妹、「昨日(かこ)」に伸び得た自分の背丈を隈なく見据えて絶賛している。俺の思惑(こころ)は心身(からだ)を介して彼女を抱いて、触れた指には硝子に透った人間(ひと)の勝気が感覚(いしき)を偽り「彼女」へと立ち、大きく畝(うね)った欲の摂理など姑息を携え白紙へ写され、俺は彼女を昨日(かこ)に根付いた感覚(いしき)の惰性に折好く成らせて残影(かたち)を見採り「彼女」に生れた新たな彼女(すがた)を暗い夜目(よめ)にて見据えて居たのだ。白桃色(はくとうしょく)さえ俺の手許へ僅かに残った「彼女」の色葉(いろは)に薄ら零れて勢いが立ち、仄(ほ)んのり和(やわ)いだ彼女の匂いは、シュールな雨にも雪の晶(うち)にも遊泳(およ)いだ彼女の孤独を一層隠して残影(すがた)を遺さず、勝気に独歩(ある)いた俺の野望(おもい)は彼女を堕(お)とした天(そら)を仰いで至純(しじゅん)へと向き、欲を忘れた大きな表情(かお)して野平(のっぺ)りと暗い夜目の内にてか細く呼吸(いき)する。二人の姿勢(すがた)は自然に問われた各自の所業に嗣業を捉えて土壌を歩き、一つに奏でた経過の実には正味と摂り得た夢想(ゆめ)の進路が重々傾き直向きと成り、暗い週囲(うち)にて密かに唱えた恋の情(こころ)に次第に知り得た僅かの言葉を上手に組み得て育てて行って、腹を空かせた若い欲には初春(はる)を知るのに十分ではなく、両脚(あし)を揃えた不動の姿勢(しせい)は二人にとっても同様(おなじ)に在った。

 少女の態(てい)から女性(はは)へと還り、少女を育てる若い主婦へと急いで戻った彼女の棲家(ありか)は涼風(かぜ)に紛れて脚色(いろ)を殺がれて正気を失い、人間(ひと)の常識(かたち)に大きく象(と)られた僕(しもべ)と成り得て俺から離れ、俺の週囲(うち)から脱出したのは彼女にとっては正義と成り立ち平静にも在り、俺に対する彼女の気持ちは無味の儘にて感覚(いしき)を失せさせ、俺の土台を脚(あし)から失(け)しても別段乱れぬ正気を灯してほっそり立ち活き、彼女の大きな〝土壌〟に地中を這わせた俺の情(こころ)は彼女の残影(すがた)に呑まれて仕舞って跡形さえ無く、見得ない蒙昧(まよい)の内にてとっくに過ぎ活(ゆ)く思春(はる)の陽気に未だに縋って仄(ぼ)んやりして在る俺の〝勝気〟が無様に見え果て唯哀しくさえあり、夫妻へ戻った彼女の残影(すがた)に暫くじいっと見入って動かず、俺の「陽気」は恋を忘れて気丈に振る舞い、彼等の目前(まえ)には余程気の好い義理の兄へと代わって行った。秀人(しゅうと)夫婦は未だ変らず自宅へ居座る俺の両親(おや)の方へと歩幅はゆったり歩速を緩め、次第次第に自然の内から自分へと向く気弱な発輝(ひかり)に視野を拡げて歩いて居ながら、自分に連れ添う嫁と娘と俺の居場所を確かに把握し眺め続けて自分の独歩を大事に取った。

 自分の堕落を見下げ行くのが仕方の無いうち死線を乗り越え〝突破〟を探して、俺の肢体は無体を透して常識(かたち)へ渡り、父も母も未だに見得ない暗鬱(やみ)に紛れて白質を採り、「俺」の効果は周辺(あたり)に撒かれて見得なく成り得た。誰かに何かに背中(からだ)を押されて主張(こえ)が飛び出て絶対強度を深く収めた〝意味〟を見出し、〝飛ば〟ない自分の正体(からだ)をじっと見据えて上手く見据えて虚構へ降り立ち、如何(どう)する間も無く背広へ着替えてこっそり繰(く)り得た〝未熟〟を手に入れ誰の目前(まえ)でも何の目前(まえ)でも大人の目前(まえ)にも小人(こども)の目前(まえ)にも、燃えて無くなる言葉を採っては自分に科された所業に繋げた嗣業を取り添え行く行く格好好いまま俺に居座る業(カルマ)の棲家(すがた)を重々欲しがり〝迷路〟へ辿る。天(そら)から堕ち得て感覚(いしき)を浄化し肢体(かたち)を見据えて常識(くうき)を摂り得た無限の得体(からだ)は他から伝(い)われて〝俺〟へと伝わり、俺の感覚(いしき)は野平(のっぺ)り立ち活きごろごろ寝始め初め破落戸とも成り、初めて出会った自然(ひと)の姿勢(すがた)に飽くまで徹底したまま変らず言動(うご)けた業(カルマ)の仕切りは人間(ひと)に映った思考(プラス)へ連れられ放蕩した儘、人間(ひと)に活き得た宙(そら)の精度が極めてまったり臭(にお)いを利かせて微笑を認(したた)め、人間(ひと)へ下(お)り行く俺の目前(まえ)では途轍もないほど小さな営(えい)さえ細切れにして唐突成る内〝舞台〟を用意し堂々と在る。自分の〝意味〟さえ伝え切れない〝俺〟の感覚(いしき)はこれまで透った記憶を呼び出し格差(ギャップ)を覚え、「他」が手にした〝作家〟なんかを隈なく手に採り自前(じぜん)に並べて観念(おもい)を認(みと)め、苦し紛れの葛藤なんかを仕業(しぎょう)へ並べて堂々在って、〝堂々〟在るのは俺の感覚(いしき)が〝殺がれる〟痛みに敏感成るうち足場を固めて〝孤高〟に立つうち活き得るからだと、「他」に映った秀人(しゅうと)の姿勢(すがた)も嫁の棲家(すがた)も娘の呼吸(いのち)も、俺の目前(まえ)では平らに拡がり奥行きさえ無く、経験出来ない人間(ひと)の姿勢(すがた)を〝涼風(かぜ)に揺られて示唆してある〟との〝報せ〟を承け得てじいっと立って、それから〝並べる〟自分の業(カルマ)を嗣業へ浮かべて〝理想を追う〟など覚悟を決め込み自然に有り付きそうして成り立つ自分の姿勢(すがた)を俺が信じて認(みと)めて居たから彼等の言動(うごき)が如何(どう)で在っても一向落ちない脚色(いろ)に在っても存分平気で、俺に対する彼等の発輝(あかり)が明るく在っても乏しく在っても一向消えない自信の棲家(ありか)を俺は樞(ひみつ)の内にて手にしてあった。界隈(そと)へ向いては活性し得ない俺の心身(からだ)と理想の居所(いどこ)は何処(どこ)まで行っても既に遠退く逃げ水みたいで俺の元から離れて消え活き、四方(しほう)塞がり、七転八倒、以前に比べて段々酷い疲労に襲われ始めた現行(いま)の俺には秀人(しゅうと)も家族も従兄弟も何もが俺へ向かって尖った陽気(くうき)を発光し始め、益々孤独に追い遣られて行く俺の狂気が正気と代わって自生(そだ)って行くのを両親(おや)でも気付かぬ透った瞬間(はざま)で一夜伝いに騒いで堅(かた)まり、「明日(あす)」の行方を暈(ぼや)かし始める厚手の体温(おんど)を俺の目前(まえ)では揚々自然に見立てて仕上げて行くのが現行(いま)の成し得る俺への定めと相成り始めて俺の心身(からだ)は弱きを拾って如何(どう)にも立たず、人群(ひと)の前でも内でも逆上せて意識を失い掛け行く困った病が俺の精神(こころ)を乗っ取っていた。こんなに成っても現行(いま)から数えてつい数日前まで心身(からだ)の変(へん)など何にも感じず街を出歩く周囲(まわり)の者等(ものら)と何等変らず生活出来得て苦しむ事など無かったのにと、心に翳した手を見てつい又一月初日を遠く眺めて想いに耽り、これ見よがしに自分を射止めた精神病など恨めしく観て他人を責め遣り自虐を始めて、一日初日の以前に還って自己(おのれ)を憐れむ〝堂々巡り〟に自慰を勝ち取り頭痛を堪え、〝我慢するのが人生なのか…〟と落胆する間(ま)も焦って失(き)え行く人生(くらし)に煽られ首さえ痛め、発作の起きない瞬間ばかりを具に睨(ね)め付け数えて居ながら、俺は自分の生命(いのち)を固守して〝堂々巡り〟に躍起に対する。そうして成り立つ俺の労苦を何にも知らずに他人は居座り当然ながらに静かな笑いと熱気を片手にどんどん俺から離れて活きつつ俺にとっては酷く丈夫な大樹を示すが、或る時からしてこれまで勝気に歩んで来たのはこの世に生れた自分の価値など重々考え〝自分の為に…!〟と神を仰いで正直成る儘、自分の生命(いのち)が生れた純粋(もと)など仔細に辿って常識(かたち)に夢見た無垢な手腕に生れた行為の為にて、俺は少しも誤魔化すでもなく止まるでもなく嘘を言わずに人間(ひと)へ解け得て遣って来たのに、俺へ落ち得た機会を一つの起点とした後(のち)俺を燃やした覇気の経過を折好く辿って気色を見遣れば、何てこと無い俺の正気を崩した後(のち)にて「俺」をも奪う、自然より成る挫折の境地へ遣られたのみにて俺の生気はほとほと脆弱(よわ)って正義を見て取り束の間ながらに自殺の誘(さそ)いに軽く身を出す悪夢の想いに負かされたのだ。そうした俺にも小さく宿った〝正義〟の行方を這(ほ)う這(ほ)う追い掛け正気に夢見た未踏(みとう)の経過(じかん)が存在して在り確固として在り、〝老い〟を忘れた若気の郷里でこの〝実(み)〟を遣われ無心と成るのは依怙地を以て正当には無く、自身の生き抜く活気に独りで向って葛藤するのはこれまで夢見た第二の〝生(せい)〟への理想とも成り自重させられ松明(あかり)を灯し、「現行(ここ)」で死ぬのは遠(とお)に夢見た白亜には無く緑濃(りょくのう)に在り、人間(ひと)に塗れて言動(うご)いて活(ゆ)くのが一番適った生き方なんだと独りで頷きふいと覚えた胎の内にて再び忘れた〝白亜〟の質内(うち)にて合点(がてん)するのは経過(けいか)を成さない自然の剥離が滔々流行(なが)れて従順(すなお)に落ち着き、俺の元には〝独りに活き得る淋しい生命(あかり)が悠々堅(かた)まり独房(かこい)に居る〟等、小さく揶揄う億尾の語りが〝意味〟を忘れた都会を描(か)いた。

 この世に生れた自然の描写は人間(ひと)に呑まれて常識(かたち)に成り着き、そうした〝常識(かたち)〟がひょいと外れて新たに活き得る神秘(あかり)と成り得て人間(ひと)に表れそうした瞬間(はざま)に涼風(かぜ)でも吹けば、心地良いうち人間(ひと)の感覚(いしき)は赤子に還って目前(まえ)に居座る巨大な壁など〝壁〟ともしないで上手にくすねて小口(こくち)へ連れ込み体験して活き、過程を知らない自然へ解け込み結果だけ観て満足して生(ゆ)く頼り無い身と揚々辿って想い付くのは折れにも見え得る〝宇宙〟の恒星(あかり)に酷似して在る。とかく流行(なが)れる人間(ひと)の妄想(うみ)では微弱(よわ)く育った常識(ブランド)等さえ人間(ひと)の感覚(いしき)を内実(うち)から配する棘とも成り着き面白くはなく、俺の背後(からだ)は残影(におい)を絶やしてに人間(ひと)の目前(まえ)には眼(め)にも止まらぬ〝早さ〟を連れ添い宙(そら)へと浮いて、浮き足立った単色主義(モノクロリズム)は慌てて総身を連れ込む密室(うち)など探して益々散らばり、人間(ひと)に揃った有為の地位など何にも揃わぬ無為の態(てい)へと落ち着いて活き野平(のっぺ)り小躍(おど)った小さな舞台は〝日本〟に生れた自分の暗黙(くらさ)を具に探して呼吸(いき)をして居た。「犬の地図」など電子を透して俺へと伝わり俺へ伝えた当の主(あるじ)は現行(いま)を離れて目前(まえ)には居らず、解(分)る限りに人間(ひと)から外れた〝当の主(あるじ)〟は主眼(かなめ)を捨て得た裸皮(すがた)を晒して俺の感覚(いしき)にのんびり活き得て賢く在り得た〝輪(わ)〟とも成らない拙い暗鬱(くらさ)が四肢(てあし)を拡げず夕日を観て居り、そうして黙って背後(あと)を魅せ得た人間(ひと)の主(かたち)は俺へ駆け込み常識(かたち)に憶えた〝仔細〟の在り処を唾棄に観るほど円らな主(あるじ)を滑降させ得て〝孤独〟を連れ添い赤身(あかみ)を差し込み、「赤身」を差し得た小説(ぶたい)の内では白紙が小躍(おど)った人間(ひと)の跡などくよくよ畏(かしこ)み〝神〟から漏れ得る源泉(いずみ)の生粋(もと)など、澄ました表情(かお)して生活(くらし)を試み、俺の背後(はいご)で呼吸(いき)をして在る欲の晴嵐(あらし)は「意味(テーマ)」を欲して屈んで在るのだ。そうした独特模様(オーラ)を隈なく世を観た俺の主眼(かなめ)は地上へ立つ以前(まえ)ふとした〝秋〟から冬を待ち侘び、束の間なれども俺に集まる秀人(しゅうと)の気配と家族の気配は〝娘〟を透してふらりと表れ従順(すなお)に振る舞い、彼等は背中を通して光沢(ひかり)を観(み)せて、何時(いつ)しか漂い俺を隔てた軽い雰囲気(ムード)を窘め固めて俺へと居座る各自の安堵を円らな〝重み〟に矛盾を透し挫ける間も無く流行(はやり)を講じて俺の目前(まえ)から失(き)え去り出した。

 習慣(かたち)を見据えて盲信(もはん)を造り、人間(ひと)の為にと自分の為にとせっせと囲った暗鬱(くらさ)を手に取りうっかりともせず、人群(むれ)は人群(むれ)にて個人を忘れて屈曲されつつ光沢(ひかり)を崩して俺さえ連れ込み、俺の元から〝屈曲〟され得た〝曰く〟の切り実(み)を、「アダムとエバ」から無駄に貰えた木の実から採り〝欲〟に溺れた腐った果実を和(やわ)らに齧って世界を観て奪(と)り、俺と秀人(しゅうと)は離れた儘にて各自の手を取り奇妙に軟(やわ)らぎ、明日(あす)から透った生計などへの明るい視点を巧く見据えて行儀を調え二人連れ立つ独歩(ある)く姿勢(すがた)は誰から見得ても一人で在り得た。〝家族〟から成る大樹を離れて旅へ出るのは俺と秀人(しゅうと)の以前から成る得技(とくぎ)であって、個人から成る共力(ちから)の限りは俺を跳び越え秀人(しゅうと)を越え宙(そら)へ居着いた二人の〝家族〟に上手く飛び乗り満面に在り、「明日(あす)」を知る為「今日」を知る為〝試み〟始めた人間(ひと)の徒労を挑戦(たたかい)とも言い二人に科された仕業(ミッション)とも成る〝俎板探し〟に精が出始め二人の独特(かたち)を脚色するのは〝容器(がらす)〟の囲いに活き活きしている〝白き門戸〟で胡散に散らばり、現行(いま)を生き抜き終点(ゴール)と知り得た孤独の一点(ばしょ)へと一目散にと独走(はし)って行った。〝俎板探し〟は〝誰から見得ても良いとされ得る黄土の板に〟と端(はな)から決め得て殊勝に有り付き、そうした人間(ひと)にとっての黄土の板など何処(どこ)に在るのか推定して行く〝場所を見付ける手腕〟等さえ大手に飾られ大きく振られて、二人にとっては限り無いほど地道に働く人間(ひと)の努力に難無く相対(あいたい)していて矛盾を来さず、俺も秀人(しゅうと)も誰から何から表彰され得る悦を手にして笑える程度に、独歩の歩力(ほりょく)に一層気張って揺ら揺ら言動(うご)いた感覚(いしき)の気力を踏ん張りながらに余裕(ゆとり)に居着き常識(かたち)を成さない不義を憶えて幸せだった。

 数分限りで経過(じかん)が失(き)え生(ゆ)く二人を手にした暗鬱(くらさ)の内では樞(ひみつ)を無にした美景(けしき)が煌めき一瞬緩んだ「昨日限り」がぬっと表れ衰退し始め、二人の生命(いのち)を逃がし切れない微弱(よわ)い〝箱〟など「容器」に化け活き透明色して、人間(ひと)の自体(からだ)へ自然(あるじ)の自体(からだ)へ自在に飛び込み、樞(ひみつ)の由来を講じる間際に発輝(ひかり)に緩んで暴露するのが、〝温泉〟から成る神への〝成就〟と二人は二人に人間(ひと)を見るまま次第に蠢く感情(こころ)を携え流行(ながれ)に乗じて確認して居た。秀人(しゅうと)の家族は行く行く高まる正午の温度に表情(かお)を紅(あか)らめ体裁好くして、俺へ対する気配の声など〝小声〟に鞣して微細を観て取り、俺に活き得た人間(ひと)に対する哀れな両刃(やいば)を哀しく仕立てた精神(こころ)の病に繋げて見て取り自体(じたい)を織り成す独裁(オーラ)の輝彩(きさい)を程好く緩めて降参して在り、何やら知らぬが「敗け」を認(みと)めた奇麗な姿勢(すがた)を秀人(しゅうと)の家族の〝殊勝〟な〝活き〟にて見据えた俺にはその後に独歩(ある)いた順路(みち)の数など、何も分らぬ未熟な正義がぽとんと落され自声(こえ)を知らない幼い遊戯に二人を連れ込む以前(むかし)の自分が返って在った。俺は自分に課されたその日の仕業(しぎょう)を堅く立ち行き〝家族〟へ近付き、秀人(しゅうと)に教えて嫁にも教えて、二人の娘は自分を見降ろす両親(おや)から訓(おそ)わり従順(すなお)に従い、三者に採れ得る四人の姿勢(すがた)はキャンプを囲んだ林を抜け出て野原を歩き、恐らく俺だけ以前(いぜん)に知り得た既視(デジャブ)の居座る単色(レトロ)な街へと、肩を並べて残影(かげ)を並べて問わず語りに這入って行った。

 単色(レトロ)な街には野原には無い人間(ひと)の気配がぽつぽつ唄って小鳥(とり)など飛んで、俺の群れから少し離れた敷地等には恐らく以前(むかし)に人間(ひと)が建て得た住宅地やマンション等が〝俺の以前(むかし)〟を具に講じて密集して在りそうした気配が仄かに照らせた界隈等には、未だ見得ない人間(ひと)言動(うごき)が緻密を観(み)せ付け日常(かたち)を伝(おし)える商店街など仄(ぼ)んやり灯って奇麗であって、そうして落ち着く商店街には、俺と〝家族〟が以前(むかし)に通(かよ)った飲食店など疎らに観(み)られて静かに成り立ち、時計の音など宙(そら)へと響く囲いを呈した落穂の姿勢(すがた)が俺を具えた秀人(しゅうと)の家族に光沢(ひか)ってあった。悠々流れる空気の周辺(あたり)で背後(うしろ)に灯った人間(ひと)の鼓動(うごき)は薄く響くがはっきり成り立ち秀人(しゅうと)も秀人(しゅうと)に集(つど)った秀人(しゅうと)の家族も、俺の気配に白く従(じゅう)じて世間の並など表情(かお)を変えずに眺めて在った。四人揃ってとぼとぼ歩いて疲労がとぼとぼ背後(うしろ)を来るのを仄かに灯った星雅(せいが)の孤独に呆(ぼ)んやり見詰めて未だ見果てぬ徒労の在り処に試行錯誤で呑気に在って、暗(やみ)に伏された名句の態(てい)など精神(こころ)の隅にてがやがや落ち着く人間(ひと)の徒労に執着してある。都市と府部(ふぶ)とを落ち着けないうち現行(いま)に流行(なが)れる経過(けいか)を見付けた覚悟の程度(ほど)など何も見えないシュールに纏わせのほほんと在り、微温(ぬる)い涼風(かぜ)など自分の身近に活きて来るのを四人で見詰めて凡庸に在り、空想(おもい)に拡げる軟い空図(ちず)には物の位置など定着せずまま四人を纏めた絵柄とも成る。緩く、微温(ぬる)く独歩(はし)り去り行く無情の涼風(かぜ)には四人の足元(ふもと)に細く成り立つ無音が飾られ「明日(あす)」を知れない人間(ひと)の厚味が何に向かって膨張するまま硝子の透明色(いろ)にも投影出来ない憤怒を揃えて足踏みするなど、人間(ひと)の流行(ながれ)を歴史に喩えて落ち着け行くまま俺の思惑(こころ)が歳老いて居た。そうした軟く輝き光沢(ひかり)を押えて事実を示さず、一貫するまま現行(いま)へ向かって回復して行く微弱(よわ)い街など歩いて居ながら商店街など何時(いつ)か見知った飲食店さえすらりと眺めて呼吸して活き、ぽつぽつ並んだ宙から降り行く物理の一片(かけら)が四人に被(かぶ)さり積もって行って、四人の心身(からだ)は次第に埋(うも)った茅葺(やね)の様(よう)にも疲弊させられ、四人の進歩は経過(とき)を通って疲れて行った。心身(からだ)も空想(おもい)も疲れ尽(き)るまで独歩(ある)いた後にて誰にも見取れぬ苦渋を手にして景観を観て、焦って降り立つ無常の神秘は人間(ひと)に対して新鮮に在り、私闘に揃わぬ〝浮き足〟等さえ透って行っては各自に見取れた明るい目標(あて)だと認(みと)められ得た。そうして四人で軟く揺らいだ街中から単色(レトロ)が灯った荒野(こうや)の果てまで歩く間(あいだ)に俺の思惑(こころ)に細く灯った嫉妬が物言い俺へと被(かぶ)さり、三人並んで仲良く歩いた秀人(しゅうと)の家族が輝かしく観え熟考させられ、とことん嫌疑を懸け得た〝従兄弟〟の倣いに旧く成り立つ故習など切り俺の自然(しぜん)は表情色(かおいろ)さえ活き牙城(とりで)に気付く。四人に並べた季節が何であれども四人を彩る光沢(ひかり)の余韻は一向変らず不動に有り付き、偏見伝いに真実(ほんとう)さえ無く在るべき姿勢(すがた)を乖離して行く熱気に捕われ二足跳(すきっぷ)して活き、科学的にも文学的にも人道的にも普遍的にも一向小躍(おど)れぬ〝放蕩息子〟に成り切る矛盾の一連(ドラマ)が宙へ向かって高まり講じて四人に寝そべる土台の脚色(いろ)さえ夢游に失くして止まってもいる。俺から独歩して行く秀人(しゅうと)の家族に視点を投げ付け、四季が講じる思春の在り処を無残に隠して投擲するまま俺の両眼(りょうめ)は靄に掛かって悶々して活き他人(ひと)から離れて光沢(いろ)を褪せ活き一方を観て、「俺だって良い仲の女(ひと)は居る…!」など小声(こえ)を嗄らして呟きながら、這(ほ)う這(ほ)う独歩(ある)いて〝荒野〟を越え行き波乱を夢見て自分に纏わる界隈(そと)の世界に自分にとっての良縁など観て、自分にしか無い伴侶の光沢(すがた)を捜して観るが、何処(どこ)にも手掛(ヒント)は落ちてもおらずに流行(なが)れる経過の勢力(ちから)に漸く鼓動を鳴らして他人を夢見て、他人に対する不要な配慮に貶められ活き即座に壊れぬ密室(へや)へ入(い)り込み脱(ぬ)け出せずに在り、俺と秀人(しゅうと)と秀人(しゅうと)の家族は宙(そら)へ放(はな)った一念(おもい)の体(てい)して浮遊に活き着き、団結(つながり)知らずに無重に落ち着く無音に狂った姿勢(すがた)に有り付き、自分を押せない白痴の書斎へ自信を葬る一瞬(とき)の場面に任されてある。これまで何度も何度も男女の一組(ペア)には疑問を感じて倦怠抜けずに、以前(むかし)から観て現行(いま)の男女を隈なく見据えて感想述べれば〝残念・無念〟の名句に尽き活き人間(ひと)の次第に〝正義〟が呑まれる悪夢など観て不満に在ったが、女の細身にそれでも騙され男の未熟に翻弄されつつ、明かりが差し得た無限の死地には司祭(あるじ)が出向かず一向経っても無残な姿勢(すがた)に人間(ひと)は落ち着き俺の空想(おもい)も失調して活き、一つ部屋(べや)にて俗世を断ち得る強固な扉を目前(まえ)へ敷き詰め精神(こころ)に建てて、微動だにせぬ孤独の〝華〟など睨(ね)めて居ながら淋しく在りつつ目下流行(なが)れる男女(ひと)の下へは必ず行かない覚悟を醒まして白紙を連れ添う。連れ添いながらにこうした〝伴侶〟は思い巡れば神から為された手腕に溺れて〝白紙の姿勢(すがた)が俺へ適する伴侶であるのか〟把握せぬまま流行(なが)れる光沢(ひかり)に自身を設けて闊達を手に、〝しどろもどろ〟を上手く透った未完の人生(いのち)にそれでも変らずしがみ付いては自己(おのれ)の夢想(ゆめ)など見事に捉えて〝伴侶〟の気配に敏感である。

 どうせこの世に無い伴侶であるなら霊に見立てて安気(やすき)を得るのも一興だとしてこの世で憶えて可能な限りの言葉を並べて記憶を並べ、観えぬ界隈(そと)へと飛び出て行きつつ俺の空想(おもい)は具体を欲しがり真実(かたち)を見詰めて、俺の足元(もと)へと還って来るのは一向満たない満期の限りでそうした〝満期〟の一つ一つが許容(かこい)を付けられ明かりを点けられ俺の空想(もと)では明るく在った。そうして俺の記憶は空想(おもい)に操(と)られて純白成るまま四人で並べた景色に遊泳(あそ)んで活気を先取り、揚々流行(なが)れる涼風(かぜ)の間際にぽつんと止まった蜻蛉など観て四季に準じた孤独を想って習癖(ドグマ)を講じ、「明日(あす)」を探した四人の両手に淋しく灯った死期(しき)の在り処を充分温(あたた)め当然ながらに、四人の足元(ふもと)は丈夫に固まり晴天成る儘、俺の目前(まえ)へと独歩(ある)いて在った。〝良い女捜し〟に夢中で在るまま俺の感覚(いしき)は矢庭に遊泳(およ)いで界隈(そと)へと繰り出し、矢鱈滅法摘んだ手掛(ランプ)を宙(そら)へ放(ほう)って静かに成り果て抑えられない感情(きもち)を見て取り蹂躙され活(ゆ)く自信の足元(ふもと)に転がり始め、自信を射止めた天使の羽根には俺を想った孤独な一片(はへん)が思惑(こころ)成らずも優しく灯され俺の精神(こころ)は具現(かたち)を拵え、有無を言わさぬ熱意に絆され気丈が立ち活(ゆ)く快感(オルガ)を見据えて俗世から脱(ぬ)け、用意されない〝俺の許容(かこい)〟へ疾走するまま理想(ゆめ)を追ううち自体(からだ)が冷たくなるのを夢中で堪えて温(あたた)めて居た。これまで見知った幾多の〝一連(ドラマ)〟を「一連(ドラマ)」ともせず〝自信〟が見棄てた〝生命(いのち)の木の実〟と拍車を掛け活き独人(ひとり)で居るのを正しく認めて感嘆して行き、途方も暮れない人間(ひと)の最中(さなか)に俺が無いのを逆手に捉えて逆も然りと、人間(ひと)が縋った自然の常識(かたち)を具体(かたち)ともせず大きく掴めた俺の視界(せかい)はか細く成り立ち丈夫で在って、他人が寄り得ぬ可笑しな敷地を自分が知り得た未開へ投じて土台とも成る魅惑の境地へ拡散して行く分身(かわり)の身重に具に気遣い闊歩して活き、自分が何種(なにしゅ)の人間(ひと)に在れども独人(ひとり)を示した〝自信〟の在り処を充分過保護に大事としたまま〝堂々巡り〟に切りを付け得る新たな試算を自然に知り得て〝痛快・愉快〟と〝音頭〟に攫われ立脚して在る。〝好い人探し〟の功(こう)が外れて〝その為独歩〟と念を押し得た努力の成果は途方も無いまま俺から離れて未開へ降(お)り活き、人間(ひと)の具体を一切知り得ぬ純粋(もと)を奪(と)り得て立派に立ち得て、立派に立ち得た努力の成果に不意と気を遣り見取れる間(あいだ)にこれまで俗世に具に憶えた何もかもさえ奇麗に払われ無形を訓(おし)え、そうした夢游に倣った独我(どくが)は俺の胸中(うち)へと静かに這入って静まり返り、夢中で鳴らした鼻の呼吸(いき)には鈍さが祟って機能を絆され、俗世の正気へ無難に還れる手腕を壊され路頭に在った。常に孤独で固く居るのを自分に科された「試練」と信じて正解を知り、正解(こたえ)を造った俺の暗(やみ)には闇雲歪(まが)った既知が飛び出て未知さえ訓(おし)え、如何して斯うして自然に教わる自分の境地を逆手に採っても大事は採れずに遊泳して在り、闇雲間(くもま)に独走(はし)った快楽(オルガ)の姿勢(すがた)を機敏に見て取る俺の両脚(あし)にはそれでも解けない神秘(むえき)が生じて立脚し得ずに、金に成らない荒業(あらぎょう)ばかりを煎じて行う未熟の書斎に伏して牛耳り、俺の居所(いどこ)は捏造され行く暗(やみ)の内へと人間(ひと)の眼(め)から見て相成り始めた。俺の姿勢(すがた)を無関(むかん)の内にて捉えられずに希薄に夢想観(ゆめみ)た人間(ひと)の司祭(あるじ)は、人間(ひと)を使って世界を仕上げて世間で活き行く流行(はやり)を見初めて矢庭に流行(なが)れ、俺へ辿った一つの一生(いのち)も体を細めて自体を成し得ず、光り輝く一貫(ひとつ)の内にて酩酊(なぞ)を仕掛けて放(ほう)って置いた。そうして成り得た人間(ひと)の現行(いま)とは一瞬(とき)に代わって生長して活き、他人(ひと)の顔色さえにも無体を煎じて冷たく有り付き死んだ人など何処(どこ)かの固室(こしつ)へ詰め込み始めた夜半(よわ)を観せ付け俺など惑わし、〝独人(ひとり)で居るのはお前の所為だ〟と無形の癖して暮野(ぼや)いて来るのはか細く成り立つ所業の内にて厚く成り立ち誰にも見取れぬ樞(ひみつ)を講じて神秘を手懐け、そうして唯々俺の目前(まえ)には大手を振りつつ世迷の手数(かず)など微細に拡げて地上の意図では不敵に落ち着く。そうする自然の在り処を現行(いま)に於いては少しも見取れず酩酊して行く俺の意図には〝この世の空気〟が感覚(いしき)を仕留めて調子の好いほど鈍(どん)にして行く〝虫の好さ〟など俄かに挙がって仕切りを打てずに、俺の思惑(こころ)は根拠(どだい)を見ぬ内か細く伝って衰退して行く人間(ひと)の躰を充分感じて路頭に迷い、迷った挙句に他人(ひと)と図れぬ未熟の門(もん)にて頭を洗って両脚(あし)も洗い、それから始まる俺の競技へ真っ向挑んで孤独と成った。他人を見取れぬからこそ空っぽと知り、人間(ひと)の感覚(いしき)に虚無を見て取り、人群(むれ)に落ちない自身の夢想(ゆめ)こそ〝本当だ〟と言い不動に有り付き、如何(どう)する間も無く、俺の言葉を虚空を行き交い人間(ひと)の夢想(ゆめ)にも熱意の程度も総じて以前(むかし)から見た雑記帳(アルバム)へと遣り一瞬(とき)に尽き得ぬ溢れる空想(おもい)に自分を象る生命(いのち)など観て脚色して活き、所々に程好く解(ほつ)れた袷など見て小さく笑い、取り留め得ぬほど未熟に生長(そだ)った自信の熱意を冷まさず置いて〝熱い内に…〟と他人の懐(うち)へと寄ろうとするがするする抜け行く他人(ひと)の熱気は無に帰す程にて〝主張〟だけ言い、体裁好いまま〝他(ほか)〟を見付けて巣立ったようだ。故に俺の元へは何も残らず涼風(かぜ)だけ吹いて俺の土台を高く固めて〝一瞬(とき)〟に苦しむ未曾有の憐情(あわれ)を巧く聴いては独人(ひとり)に落ち着き、単色主義(モノクロリズム)に酷く阿る譲歩の術など仔細に講じて元気を勝ち取り、淡く成り行く人の群れから孤高を連れ添い生長(そだ)って行くのはこれまで観て来た〝世迷の類(たぐい)〟と確認しながら遠くに見据える白い城には恐らく〝巣立った友情(ぬくみ)が在る〟など一人上手に没我の姿勢を貫いて居た。

 一日の陽(ひ)が西へ傾き、街を歩いた四人の躰も暫く疲れて程好い倦怠感など頭上に灯って活気を持つ頃、俺の精神(こころ)は前進して行き背後に落ち着く〝透った街〟など微弱(よわ)く感じて前方(まえ)を観て居り、秀人(しゅうと)の家族を背後(あと)へ引き連れ、右往左往に肢体(からだ)を延ばしてふらふらほっつき、目前(まえ)の見えない不安な気持ちに苛まれていた。その時歩いた俺の態(てい)には目標(あて)の見えないふらつく自然に同を抜かれた〝駒〟が居座り、何とも言えない未熟な空想(おもい)に惰性で独歩(ある)いた俄かな勇者がほとほと落ち着き表情無い儘、兄貴としては決して退(ひ)けない妙な心地が大手を振りつつ騒いであって、背後(うしろ)の〝従兄弟〟を如何(どう)にか〝目標(あて)〟へと導く試算に空転するまま突進して行く愚かな寸法だけしか煌めいては居ず、背後(うしろ)の〝従兄弟〟は俺の背後(はいご)で手取り足取り俺の様子を窺いながらに帰る路(みち)すら憶えられない俺の病に感付き始めた。右往左往して居る兄貴の背後(うしろ)に寸分違(たが)わず従い歩いた秀人(しゅうと)の家族がそうした俺への疑問を持つのは自然であって、それに引き換え俺から生れる固さを縁取る緊張等が表情透して表へ出るのは一向止まずに強く輝き活気を灯し、生れた熱をも彼等の前方(まえ)にて掲げて在る為、相乗効果に彼等の疑惑が膨れて行くのは一層適った道理とも成り俺の不精(ぶしょう)は益々透った間柄(あいだ)に於いても自体を隠せぬ間抜けを呈して落ち着き始め、秀人(しゅうと)夫婦は自分の娘を脇へ退(の)け遣りずいと出て来て、

「本当にこの路(みち)で合ってるん…」

など確信めいた不審を拡げて俺の誘いに拒絶を始めた。そうした端(はな)から俺が講じた斑気(ムード)を差し置き秀人(しゅうと)の誘いが次第次第に前進し始め、気付いた時には俺の躰は秀人(しゅうと)を離れて家族を離れ、自分の周囲(まわり)に咲き得た景(え)などを何にも想わぬ純粋さの内(なか)独歩を講じる最中(さなか)に落ち着き〝又もや独人(ひとり)の許容(かこい)に落ち得たのだな〟と慌てる素振りをついとも観せずに、彼等が通(とお)った静かな路(みち)を悶々しながら悪態吐(づ)かずに唯々懸命成るまま仕方が無いから歩いて行った。次第次第に秀人(しゅうと)の肢体(からだ)が前方(まえ)へ出る時、脇から出て来た秀人(しゅうと)の妻が体を撓らせ脇へ退(の)け得た娘を遠くであやして操り従わせながら、秀人(しゅうと)に甘えて前方(ぜんぽう)へと立ち、俺と秀人(しゅうと)を併せて操る不思議な支配に身を任せて活き、如何(どう)とも言えない暗い最中(さなか)に俺の両眼(りょうめ)は陥没したまま堂々巡りの男女の倣いにひたすら黙って従い、俺の気配は二人に紛れて遠く遠退く娘の立場へ追われてあった。

「そう言えば初めに会った時、『○○さんですよね(○○には俺の名前が入る)』って確認しなきゃ駄目だったんですよね。」

と秀人(しゅうと)の妻は笑いながらに俺へと尋ね、それ程険しい仲とは成らずに藹々鳴るまま静かに在ったが、そうした想いに出て居た行為は俺にとっては少々新たな活気に見得出し、女性(おんな)が居座る土壌の棲家に何時(いつ)も落ち着く強味(つよみ)が騒いで〝勝気〟と見定め、近い間柄(あいだ)に冷たく囁く初春の涼風(かぜ)が仲を切り裂く他人の強味と打って変って次第に阿る女性(おんな)の意欲は暗(やみ)を講じて勝気を取り出し、経過(とき)に適って敵へと廻れる女性(おんな)の惰力(だりょく)を魅せ突けて居た。そうした〝強味〟は目下流行(なが)れる独人(ひとり)と他人(ひと)との絆に降り立つ両刃(やいば)に似ており俺の鈍さが幾ら呑気を矢庭に呈して仲裁し得ても一向変らぬ自然の摂理へ神秘が潜んで不変であって、秀人(しゅうと)の前方(まえ)へと勇んで出掛けた妻の姿勢(すがた)は流行(ながれ)を講じる世間に芽が出て実(み)を成らせて活き結実して行く世間の頭上(うえ)では、俺にも見得ない結束みたいな〝暗(やみ)〟の共力(ちから)が奥へ潜んで、宙(そら)に観えない他人(ひと)の強靭(つよ)さを嫌と言うほど再確認する恐怖の契機(どだい)を俺の足元(もと)へと送り付け得た。そうする妻の姿勢(すがた)は俺を置き退(の)け秀人(しゅうと)を誘い、娘を誘って率先する儘、一人上手にたったったったと手早(てばや)に転んで人群(むれ)から逃れてより前方(まえ)へと流行(なが)れて入(い)って、周辺(あたり)の様子を身近に据え置き確認した儘、遠い敷地へ独走(はし)って行った。秀人(しゅうと)も娘も自分の身内がそうして独走(はし)った軌跡だと知り惜し気の無いまま活気を燃やして後(あと)へと続き、俺へ対する会釈も無いまま一瞥さえ無く、用途をし終えた勢力(ちから)だとして黙って据え置き前方だけ見て、「明日(あした)」が来そうな狭い路地へと身を捩らせつつ這入らせながらに、俺から離れて遠い〝敷地〟の内へと気色に黙って寄り付いて居た。涼風(かぜ)は逡巡する内(なか)順々通り、俺の周辺(まわり)は気色に塗れて赤い夕日が真っ赤に成り着きノスタルジックな回顧(レトロ)を透して密集して活き、俺の〝独人(ひとり)〟は〝没我〟を示して自分を牛耳り、都会と田舎の両極端さえ何気に祝った初春(はる)の息吹に感嘆し始め、〝従兄弟〟に灯った夜半(よわ)の明かりは歴史に落ち行く夢想(ゆめ)の衒いと一蹴した後(あと)、俺に残った長閑な好機が流行(ながれ)に準ずる人間(ひと)の記憶へ〝望み通り〟に落ち着き生(ゆ)くのは目下人間(ひと)へ咲き得た欲望曲がりの〝生(せい)〟への感覚(いしき)と、夢想(ゆめ)に叶った男女の過渡など真向きに捉えた〝灯り〟の所為だと密室なる狭い路地へと揚々這入った人間(ひと)の生気に倣って見定め、凡庸生(ゆ)くまま人間(ひと)へ揃った〝虚空〟の手数(かず)など常に目覚めて灯りを知るのは「明日(あす)」に煎じた徒労の倣いが空虚を呈して在るからなのだと俺の精神(こころ)は一人淋しく騒いで居たのだ。誰にも出会えぬ俺の心身(からだ)が恐怖を灯して感覚(いしき)に在った。

 揚々目覚めて枕を見遣れば現行(いま)に沿わない回顧(レトロ)に落ち得た一つの記憶がその身を照らして静かにたえる。夢想(ゆめ)を透して両手を翳し、天井(そら)へ仰いだ未熟の果(さ)きには独り切りにて懐かしさを知る夢游の使いが一人の女性(おんな)を上手に解(と)かせて俺の思惑(こころ)へ真向きに居座りこっくり頷き〝淋しい限り〟を懐(うち)に抱き締め俺の座った胡坐の辺りを隈なく見据えて微笑(わら)ってあった。そうした〝虚空〟へ一人ぽつんと浮び得たのは現行(いま)に疾走(はし)った可愛い女と俺へ対して告白して居る虚無に見え行き明かりに見え行き、俺にとっては忘れられない情(じょう)を灯した女性(おんな)であるとの具体(かたち)を表し気丈を見て採り、そうして忍んだ女というのは伊原静江と柔らに想えて精神(こころ)は解(ほぐ)れ、ああして〝荒野〟で〝良い女(ひと)捜し〟と夢想(ゆめ)に見たのは虚空(ここ)に居座る静江の影だと深々(ふかぶか)考え熟考して活き、俺の予感は気持ちと成り得て静かに在った。それにしても、現行(いま)と成っては互いに離れて薄幸ながらに、薄縁(うすべり)さえ観る筵に置かれた細身を呈して活きているのは定めに任せた情緒を呼び寄せ淋しい限りで、「伊原静江と俺の仲など、奇麗に薄くて未熟ながらに記憶の内(なか)ではそれでも不変に繋がっている。」と俺の情(こころ)は低い調子に再度笑った。伊原静江は以前(むかし)の俺の〝人殺し〟を見てたった一人で泣いた女だ。こうした記憶に遍く微熱を灯して出たのは艶やかながらに肉体(からだ)を差し出す小畑明美(こばたあきみ)の微温(ぬる)さではない。俺の精神(こころ)は小声に響かせ笑いながらに、次の「明日(あした)」へ煌々照り出す朝陽の夜明けをひたすら待った。そうして昨日は明日(あす)へ向かって独走(はし)って行った。

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~集大成~(『夢時代』より) 天川裕司 @tenkawayuji

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