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世界の真実。
海辺を歩いているときに発見したそれは、潮風で錆びついた大きな看板だった。看板には掠れたゴシック体でこう書かれていた。
『←世界の真実 この先7000M』
看板の矢印が指し示す方向は海だった。
海を見ても、何もない。ただ大きな水の塊が落ちているだけだ。
……いいや、水平線までの距離がだいたい4キロだから、7キロ先の真実が見えないのは当たり前のことかもしれない。それにしても海はだだっ広く寝そべるばかりで、その裏に世界の真実を隠しているようには見えなかった。
もし海の向こうに「真実」があったとして、結局のところそれはわたしが求めるものとは違うだろう。世界の姿は刻一刻と変化し、それにともなって「真実」も目まぐるしく変わっていくものなのだ。だからこの看板が示す「真実」とやらはきっと古びたやつで、わたしにとっては何の価値もないのだろう。この看板自体、だいぶボロボロだし。
歩きづらい砂浜はさっさと抜け出そう。
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