3

青い堀。幅十二メートル、長さ二十五メートル。深さは一・四メートルくらいか。堀の内部が青色なのが奇怪だ。塹壕にしては色が不自然だし、周囲に設置されている二メートルくらいの椅子も監視塔にしては低すぎる。側面にいくつか通気口のような穴と、昇降用のはしごがある。底面には何本か線が引かれており、細長く区分けされている。まったくもって用途不明。

意味はわからないが風を防げるのでここで休息をとる。


休憩していたら、側面の通気口から水が勢いよく噴き出してきた。わたしは身体が浸水する前になんとか抜け出すことができた。堀が目一杯に満たされたところで水位の上昇は止まった。この堀は貯水池だったのだろうか。

鼻をツンとつくようなにおいがしたので水は飲まなかった。悪臭ではなかったが、飲料水になるとは思えなかった。飲めそうなら拠点リストに載せたかった。

水が貯まるのをボサっと見て体力を回復したのですぐにここを発つ。


青い堀を出発してからすぐ、また甲高い子供の声が聞こえてきた。水音もする。

振り返っても人影はなかったが、子供の声は雲を突き抜けるように高く響き続けた。

うるせえよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る