026.聖女、悪魔を圧倒する

「くはは! これは帝国が開発した悪魔を召喚する咎のルーン石だ! 貴様の召喚した偽悪魔とは別格の本物の悪魔よ! 本当は貴様ら程度に使うのは勿体無いのだが特別に使ってやったわ!」


 ご丁寧に説明をしてくる公爵は勝ち誇った顔で歪に笑っています。


 叩き割った石からは黒い煙が渦を巻くように広がり始め、空中で赤黒い光を放ちながら回転を始めました。大きな音と共に空間に亀裂が走り、裂け目から影がゆっくりと現れます。


「おい、俺様を呼んだのはお前か」


 低く響く声と共に現れたのは、漆黒のバトラー服を身に纏った浅黒い肌をした男です。その背にはコウモリのような翼が広がり、目は血のように赤く輝いています。典型的な悪魔ですね。


「そうだ! わしが貴様を呼んだ召喚主様だ! まずはあいつらを殺してしまえ! そのあとはこの王城に住む者たちを皆殺しだ! 証拠を残すなよ!? 皆殺しの後はわしがこの国を支配するのだからな!」


「契約の代償は用意してるんだろうな?」


 近づいてきて睨みつける悪魔に公爵は一瞬ひるんだように見えましたが、すぐに威厳を取り戻したように笑っています。


「くくく! 代償だと!? そんなものあるはずがないだろう!! いいからさっさとわしの言うことを聞いてあいつらを殺してしまえ!」


「そうか……ではお前が贄となれ」


「がはっ!!! 何を!??」


 悪魔は軽くため息をついたかと思うと素早く公爵の心臓を抜きとり、ぼとりとそれを無造作に落とします。


「代償がないのならお前がそれになるしかないだろう? むしろこれでも少ないくらいなんだがな。まあしかたない。一応契約だからな。こいつらは殺しておいてやるよ。俺が真面目な悪魔で良かったな」


「く、そ、がっ」


 悪魔はぐちゃりと心臓を踏み潰すと、糸が切れたように公爵もばたりと倒れました。


 それを見届けることなく悪魔は私たちの方を向いて軽薄そうに笑いかけていきます。


「悪いな。嬢ちゃんたち。これも契約なんでな。死んでくれ」


 伸びた巨大な黒い爪が私の目の前に迫ります。その動きにはかなりの力と速さがあり、周囲の空気を切り裂く音が響きわたりました。そしてその爪は私を引き裂こうとして……。


 バチンっ!!!


 結界に弾かれました。悪魔はそのまま部屋の壁を突き破り吹き飛ばされます。


「くそっ!! 何が起こった!?」


「見えないかもしれませんが対魔結界アンチデモニックです。お二人のお話が長かったので張っておきました」


「対魔結界、だとっ!? 貴様、一介の人間の身で、何故このような力を!?」


 ただの対魔結界なんですけどね? リリスなら破れるのですがこの悪魔にはできなかったみたいです。


「うーん。あんたが弱いだけじゃないかしら。本当にわたくしと同じ悪魔? もしかして低級の雑魚悪魔なのかしら?」


 リリスが悪魔を煽ってますね。確かにあの悪魔には大した力を感じないですけど彼にもプライドはあるでしょう。案の定、瓦礫から立ち上がった悪魔はプルプルと震えてこちらを睨みつきてきています。あんまり煽っては可哀想です。


「俺が、低級の雑魚悪魔、だと?」


「申し訳ありません。リリスも謝りましょう。相手を怒らせても仕方ありませんよ。いくら大した力を感じないからといってあんまり揶揄うのは良くありません。弱者には慈悲をもって接するものですよ?」


「大した力がない……弱者……」


「主様も十分煽ってるじゃない」


 えっ。そんなことはありませんよね?


「俺への愚弄、許さん!! 貴様らはタダでは殺さんぞ。苦しみの中で悶え死ね!!」


 悪魔は空間が歪むほどの瘴気を放出し、地面にヒビが入ります。なぜかは知りませんが先ほどより怒らせてしまったようですね。悪魔は胸の辺りに黒いエネルギーを凝縮させてこちらへ放とうとしています。


 あれを放たれるとちょっとまずいですね。私たちはあれでどうにかなるとは思いませんが、王城は崩壊してしまうかもしれません。


「マキア。彼を止めてくれますか?」


「イエス。マイマスター。時間停止クロノロック


 その一言で悪魔は動きを止めました。

 時間停止クロノロックは敵単体を停止させる時魔法です。10秒間という短い間だけですが対象を完全に止めることができます。言わずもがなのぶっ壊れ魔法ですね。さすがはLRキャラの使う魔法です。


「リリス。可哀想ですがトドメを刺しましょう。これ以上王城を壊されると困りますからね」


「わかったわ」


 現場には事切れてしまったマルケス公爵と私たち、そして目の前の悪魔しかいませんからね。これ以上壊されて私が賠償しなければならないとなったら困りますから。


 そんな思考をしている間に悪魔はリリスの爪によって切り裂かれ断末魔を上げることもなく消滅しました。


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 男爵級悪魔から王城を守護しました。〈善行ポイント〉を1000ポイント付与します。

 ミッション2、一度に〈善行ポイント〉を1000ポイント獲得しました。〈善行ポイント〉を100ポイント付与します。

 ミッション2を全て達成しました。500ポイント付与します。これから3日間の間、ガチャイベント「UR以上確率アップピックアップガチャ」を開催します。またミッション2達成に伴い、ミッション3が開放されました。

 ミッション3、ガチャでUR以上のアイテムを5個以上獲得を達成しました。〈善行ポイント〉を100ポイント付与します。

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 おっ。善行ポイントが付与されました!! しかもミッションもコンプリートしてまたガチャイベントが発生したみたいです! 弱い悪魔を倒すだけでポイントが貰えるならもっと出てきてもらいたいくらいですね! あと二、三匹出てきてくれませんかね?

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