024.聖女、王宮に連れ去られる?
「思ったより善行ポイントは貯めにくいかもれませんね……」
「そうね。思ったより困っている人って少ないのね」
マキアを召喚したあと、流れで善行ポイントを獲得するために王都の中を3人で歩いていたのですが、王都は意外に平和なようで困っている人はほとんどいませんでした。
ちょっと転んで擦り傷ができてしまった子を回復魔法で直してあげたり、親とはぐれて泣いてしまっている子のお母さんをトレーサー・トレーラーで見つけて一緒に探してあげたりしましたが、逆にいうとそれくらいでほとんどポイントを稼ぐことができていません。
ガチャウィンドウを表示してみると善行ポイントは112ポイント。
そのうち元からあったポイントが2ポイント。二人目のLRユニットを召喚したことによるミッションで獲得した100ポイント、そしてアティリウスが保護したスラム街の人から得たポイントが8ポイント、そしてさっきの王都で助けてあげた子供たちの分が2ポイントです。
なぜ、そこまで詳細にわかるのかと疑問に思われるかもしれませんが、実はガチャの機能に善行ポイントの獲得履歴があることに気が付いたからですね。獲得履歴を見ることでいつ、どのような理由でポイントを得たのかを確認できるようになりました。ポイント獲得のアナウンスだけでは把握しきれないところもあったのでちょっと嬉しい機能です。
あと変わったことといえば、ポイント獲得のアナウンスをオンオフすることができるようになりました。スラム街の人に炊き出しをした時には延々とアナウンスが流れていてちょっとうるさかったこともあったので、これも地味に嬉しい機能です。
今は100ポイント以上取得時以外はアナウンスをオフにしてもらっています。多くポイントが取得できたときは目安として知りたいですからね。ポイントの獲得量に貴賎をつけたいわけではありませんが、ポイント獲得はモチベーションにもなりますし、ちょうどいい塩梅を模索した結果と思っていただければいいかと思います。
「ポイントを稼ぎたいなら冒険者になって、依頼を受けてみるのも一つの手でかもしれないわね」
「冒険者ですか?」
「冒険者ギルドで受け付けてる依頼っていうのは、つまりは依頼者の困りごとってことになるわよね? それを解決するのは善行と呼べるんじゃないかしら?」
「確かにそうかもしれませんね。冒険者。試しになってみるのもいいかもしれません」
などと話をしながら、日の沈んできた帰り道を歩いていると異次元ハウスへの入り口から大きな声が聞こえてきました。
「我々は王宮からの使者だと言っているだろう! さっさと聖女をだしたまえ!」
「ですから、お嬢様はまだ外出中だと言っています。御用でしたら私めが承ります」
あれは、王宮の文官でしょうか? 王宮の紋章を刻んだ旗を掲げ、騎士団員数名を引き連れていますね。ここはスラム街との境目にも関わらず難儀なものです。……だからちょっとイラついた様子なのかもしれないですね。
「主様。どうするの? 今出て行ったら面倒なことになりそうよ」
「肯定。今あの場に乱入する場合、面倒ごとに巻き込まれる確率100%です」
「うーん。ですがこのままだとアティリウスが危険になる可能性がありますよ?」
アティリウスはガチャキャラとはいえ、戦闘能力はほどほどのサポートキャラですからね。武力に訴えられるとやられてしまうかもしれません。
それに、今あの使者を放置したところでどうせまた私を訪ねてくることになるでしょうからね。私は面倒ごとは先に終わらせる主義なんです。
というわけでリリスとマキアを連れて異次元ハウスのアティリウスがいる場所へと進んでききます。
「アティリウス。ただいま戻りました。こちらの方々は?」
「申しわけありません。お嬢様。どうやら王宮からの使者であるそうなのですが、それ以上は何もおっしゃられず……」
「聖女が帰ってきたか。出かけているのは本当のことだったようだな」
「お待たせしたようで申し訳ありません。それで私に何のようでしょうか?」
「聖女セラフィナ。貴様には王城への登城命令が出ている。今すぐ私についてこい」
そう言うと男は私の腕を掴んで引っ張ってきました。おっと、リリスとアティリウスの殺気がすごいです。今にも目の前の男を殺してしまいそうな目をしています。マキアは大丈夫そ……うではありませんね。剣の柄に手を添えていて今にも切り掛かりそうな勢いです。
「待ってください。暴力を振るわせることがこの人の策かもしれません。一旦冷静になってください。あなたも手を離してくれませんか? 痛いです」
「黙れ。貴様に選択の余地はない。それとも国王陛下からの命令に逆らう気か」
「わかりました。ついていきましょう。従者の同行は認められますか?」
「残念だが認められない」
「そうですか。リリス。マキア。わかってますね」
「わかってるわ」
「マスターの御心のままに」
「それでは参りましょうか?」
「そうだ。全員大人しくしてろ? お前らも早く馬車を出せ!」
そうして私は馬車に乗せられ、目隠しをされた状態でどこへともなく連れ去られるのでした。
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