012.聖女、上位種を一掃する

「主様の判断は間違っていなかったみたいね。ウルフが大量にいる場所で不可解な行動をとってるわ」


 ウルフたちを虐殺した後、リリスが探知魔法ソナーを利用して生息するウルフたちに不自然な行動がないかを調べてくれたところ、ウルフが一箇所に集まっていき、その後暴れるようにその場所から離れていくという謎な現象が起こっている場所があることを突き止めました。


 私は単純に大量発生しているところに何かあるかもしれないくらいしか考えていなかったため、リリスが原因を探ってくれてとても助かります。もうリリスがいないと生きていけない体になってしまったかもしれません。そしてリリスに会えたのはガチャのおかげです。つまりガチャがないと生きていけない体に……。


「主様が変なことを考えている気がするわ。そんなことよりその怪しい場所に行くわよ」


 リリスに導かれて進んでくと次々とウルフたちが飛び出してきては襲いかかってきます。流石に危険になってきたので適宜私の周りに対魔結界アンチデモニックを貼りながらリリスが魔力弾で次々と倒していき前進します。


「やっぱりおかしいですね」


「主様もそう思う? あのウルフども。倒しても倒してもなだれ込んでくるわ。普通これだけ惨殺されたらいくら魔物でも怯むはずなのに、まるで恐怖がないかのように迫ってきてちょっと不気味ね」


「まるで狂気に囚われているみたいです。もしやそのような状態異常にかけられているのでしょうか」


「そうかもしれないけど、それとスタンピードが繋がらないわね」


「とりあえずウルフが集まっている地点に急ぎましょう、そこに何かあるはずです」


「待って、主様。止まって対魔結界アンチデモニックを貼りなおして。上位種がくるわ」


 私は手早く対魔結界アンチデモニックを展開してあたりを見渡します。


 群れの中から一際大きな体をしたウルフがこちらに走ってきているのが見えますね。あれはルーンウルフにシャドウウルフ、エクリプスウルフでしょうか。その他にも複数のウルフを従えているウルフロードらしき姿も見当たります。


「主様。上位種の足止めはできる?」


「多分大丈夫です。やってみます。聖なる鎖グレイプニル!」


 地面から光の鎖を生えさせる魔法です。地面から突き出してきた柱が上位種たちの足や体に絡みつき、動きを阻害します。


 その間にもリリスが闇の弾丸を多重展開して通常ウルフたちを倒していきます。上位種のウルフたちにも魔法弾は当たっているようですが、体に傷をつけるだけで致命傷には至りません。


「召喚魔法が使えないのは面倒ね。隕石で一網打尽にできないじゃない」


「ダンジョンの性質上仕方ありません。そもそも召喚魔法は封印といったはずですよ」


「主様のいけず」


「そんなことより、そろそろ動きを止めるのがきついです」


「わかってるわよ」


 リリスがぐちぐちと文句を言いながらも黒紫の炎を発動し上位種のウルフに向かって撃ち放ちます。


 身動きが取れないルーンウルフ、エクリプスウルフ、ウルフロードは炎をくらうと雄叫びを上げながらあばれだします。こちらに向かってくる様子を見ると聖なる鎖グレイプニルの効果は切れてしまったようです。


 三匹の狼が先頭に立つリリスに向かって飛びかかってきます。

 まずは魔法耐性の高いルーンウルフ。リリスはその牙による噛みつきをひらりと紙一重で避けると返す刀で爪を一閃して体を輪切りに、次に自己再生能力を持つエクリプスウルフの首を刈りとり再生しないように頭をつぶし、仲間を引き連れるくらいしか脳のないウルフロードは至近距離で黒紫の炎を浴びせることで消滅させました。


「連携を取られたら危なかったかもしれないけどただ突進してくるだけだったから楽だったわね」


 やっぱりリリスは強いですね。ですがちょっと周りを見るのがお粗末になっているかもしれません。


聖なる槍ロンギヌス!」


 リリスの影から飛び出してくるシャドウウルフに光の槍を投げつけます。シャドウウルフは聖属性に弱いため体を貫いて動きを止めます。

 そこで気がついた様子のリリスがシャドウウルフの息の根を止めました。

 

「べ、別に主様の助けがなくても問題なかったんだから」


「そうですね。リリスは強いですからね」


「そうよ。わかってるならいいのよ。でもありがと」


 最後の方は声が小さくなっていましたがバッチリ聞こえました。つまりリリスはツンデレいたずらっ子ロリ悪魔属性と言うことですね。属性が過剰です。あれ、属性なんて言葉、元から知ってましたっけ?


「また、主様が変なことを考えてる気がするわ」


「そ、そんなことないですよ。それよりほら、異変がある場所はここら辺じゃないですか? 調べてみましょう」


 リリスの勘の良さに少しドキりとしながら私は異変の調査を促すのでした。


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