前世が悲惨すぎて神様に同情された結果、異世界で最強になっちゃった...

コンソメスープ

第1話 絶望の人生

思い返せば俺の人生は悲惨なことだらけだったな...


自室で椅子の上に立ったまま、ふと物思いにふける。




俺の名前は小山恭平。


30歳独身童貞無職引きこもりニートという社会の底辺を地で行く男だ。




生まれたときには、平均的な顔面の両親から生まれたとは思えない容姿(逆の意味で)だったから、父は托卵を疑ったほどらしい。


新生児室では、隣の赤ちゃんが俺のことを見て絶句。


看護師さんには悪魔の子と呼ばれ...病院の先生には精密検査を受けたほうがいいと提言されるほどだった。




当然、その醜すぎる容姿のせいで幼稚園、小学校、中学校、高校と壮絶ないじめを経験した。




幼稚園の頃は容姿のせいで仲間外れにされ、ずっと一人で過ごしていた記憶がある。




「お前の顔気持ち悪いな、近寄るなよ」


「うわ~小山に触っちゃった、小山菌がうつる~~」




幼稚園生とは残酷なもので、馬鹿正直に物事を語る。


キモい奴がいればキモいと言うし、汚い奴には汚いという。


そこに遠慮や配慮というものは一切ない。




小学校、中学校の頃は、学校に行けば靴を隠され、机を隠され、授業中にゴミを投げられるなんてことは日常茶飯事だった。


廊下を歩けば後ろから蹴られ、トイレをしてたら上から水をかけられる。女子は俺と体が当たっただけで泣き叫ぶ始末だ。給食の時間には俺の分だけ配膳されず、本人の目の前で悪口も言われる。




「アイツ喋んないし、顔キモいし何のために学校来てるの?帰れよ陰キャ」


「ちょっと止めなよぉ、正直に言いすぎでしょ、可哀想~」




1ミリも可哀想なんて思ってない癖に...


俺をイジメてくる奴はもちろん嫌いだったが、その取り巻きみたいなやつらも同じくらい嫌いだった。




先生だって俺がいじめられていたことを知っていたのに見て見ぬふりだ。




小学校、中学校はこういった壮絶ないじめが原因で途中から不登校になった。




それでもなんとか高校に入学することができたが、地元でも有数の底辺高校。


不良だらけの環境に俺みたいな奴がいれば、当然ライオンの折に入れられたウサギ状態だ。


学校に行けばサンドバック状態になり、制服を破られ、パシリにされる。




結果、1か月ほどで不登校になり自主退学。




学生時代のいじめが原因でPTSDを発症し、夜になると抱えきれないほどの苦痛や不安などが襲い掛かってくることもあった。




高校を退学した後は、高卒の資格は持っていたほうが良いという両親からの助言もあり、高卒認定試験を受けて、なんとか高卒の資格を手にすることができた。




悲惨なことばかりだった俺の人生で、唯一両親だけは俺の人生の太陽だった。




不登校になっても見捨てずに俺の面倒を見てくれた両親に恩返しがしたい。




そう思った俺は社会に出て働くことを決意した。


しかしまともに学校に行っていなかった俺を採用してくれる企業はほとんどなかった。




それでも片っ端から受け続けた結果、年中社員募集をしていた建築系の会社から内定をもらうことができた。




面接はあるようでないようなものだった。


着慣れないスーツを着て、面接に行ったらその場であっさり採用され、開口一番にいつから出社できるの?と聞かれた。




一瞬で採用されるとか...俺...意外と社会でやっていけるんじゃね?


そんな淡い期待は一瞬にして打ち砕かれた。


年中社員を募集しているというのはどういうことかというと、社員が辞めてしまうから採用を続けているということだ。


つまり訳あり企業というわけである。




入社後はパワハラのオンパレードだった。


バイトもしてなければ部活もしたことない不登校だった俺が、上下関係の激しい根性論にまみれた体育会系の職場に行けばどうなるかは火を見るより明らかだろう。


無駄に長い社是社訓を暗記して詠唱。声が小さければ頭を叩かれ、何度も何度もやり直し。




「聞こえねぇよ!!!声が小さいんだよ!!腹から声出せやボケ!!!」




仕事が始まれば、家に帰ってくるのが夜中1時で、次の日の7時には出社しなければいけない。


上司が出社してくる前に、掃除、お茶汲み、使う資料の用意、その他もろもろを終わらせてないと叱責される。




昼休憩なんて当然ない。


飯食ってる暇があるなら働けと言われ、おにぎり片手にパソコンに向かう日々だ。




仕事でミスがあれば、大勢の前で叱責される。


ミスが無いように慎重にやると、締め切りに間に合わず大勢の前で叱責される。


ミスなく締め切りに間に合わせても、新しい仕事を押し付けられるだけだ。




毎日毎日終電までサービス残業させられ、上司にはパワハラを受けつづける日々を1年続けた。


ある日から朝起きると涙が出てくるようになった。


初めて勤めた会社で壮絶なパワハラを受けてしまい、俺は鬱病を発症した。




ある日、泣きながら出社しようとする俺を父が止めてくれて、仕事は辞めさせてもらうことになった。




会社を辞めた後、俺は社会に出るのがトラウマになってしまい、10年間引きこもっていた。




それでも俺の両親は俺に対して優しく接してくれていた。決して外に出て働くことを強制せずに見守っていてくれた。


1日中部屋から出ない俺に栄養バランスを考えた料理を作って、優しく話しかけてくれた母


外に出ることも億劫になっていた俺を勇気づけてくれて、様々な場所に連れて行ってくれた父




俺の誕生日には家族3人でパーティーを開いてくれたし、海外に旅行に連れて行ってくれたり、少しずつ俺のトラウマを解消していってくれた。




父も母も俺にとって本当に自慢の両親だった。


次こそ2人に恩返しをしたい。お世話になった両親を今度は俺が支えていきたい。




そう思っていた矢先だった...






結婚記念日で二人で出かけていた父と母が、信号無視した車に轢かれたと警察から連絡があった。






即死だった




高齢者が運転する車がアクセルとブレーキを踏み間違えて、交差点に突っ込んだらしい






病院についてからの記憶はない。


唯一覚えてるのは血まみれになって冷たくなった両親の前で声が枯れるくらい泣き叫んでいたことくらいだ。




「事故を起こした方というのが、かなりご高齢な方でして...不起訴処分となる可能性が非常に高いです」




だから?...だからなんだよ?...


高齢なら人の命奪ってもいいのかよ?


なんでブレーキとアクセル踏み間違えるような耄碌した奴が車を運転してんだよ...


なんで俺の両親の人生を、老い先短いジジイが奪ってるんだよ...




いじめをうけても、パワハラをうけても、両親がいたから立ち直ってこれた...




この世界で一番大切だった両親がもう居ない。


その事実だけでもう二度と俺が立ち直れなくなるには十分だった。






もう嫌だ...


もう耐えられない...




なんで...俺ばっかり...こんな目に合わなきゃいけないんだ...


俺が何をしたって言うんだ...誰にも迷惑かけずに生きてきたはずだろ...






俺よりも罰を与えるべきがいる人間がいるだろ...




なんで俺をイジメてたやつらには恋人がいて、結婚して生活も何もかもうまくいってるんだ?...


なんで俺にパワハラしていた上司は社長に気に入られて出世していたんだ?


なんで俺の大切な両親をひき殺したあのジジイは不起訴処分なんだ?




なんで...なんでだよ!!!




こんな理不尽な世界にこれ以上いたくない...




もう耐えられない...


もう嫌だ...


もう駄目だ...










天井につけた麻縄を自分の首にかけて、俺は自分が立っていた椅子を倒した。

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