華のようじゃありません!
木場篤彦
第1話変態な先輩
「ねぇ、突っ立ってないで早くしてよ」
「あっ……はいぃ……」
ラグの上で正座して、立ち尽くす私に両の掌に載せた首輪を差し出した両腕を伸ばしながら急かした慎城。
拒否権の無い私であるが、彼女が自身の所持品でどういう扱い方をしてようと勝手なのは百も承知であるが……歳上の先輩である慎城茉央の首に首輪を嵌めるという行為は慣れない。
そのような行為に慣れたら、私は一般人ではなくなってしまう。
私は、彼女のような歪んだ性癖は持っていない。
私の高校生活はいつから歪みが生じてしまったのか……?
私は慎城が差し出す首輪を掴んで持ち上げた。
彼女は両腕を下ろし、荒い息のままに、後輩に首輪を嵌めてもらうことを待ち侘びていた。
彼女の頬は勿論のことではあるが、紅潮している。
私は恐る恐る膝を六〇どほど曲げ、屈んだ体勢で彼女の首に首輪を近付けていき、両者の息が掛かるほどの距離まで顔が近付いた。
躊躇してしまうと、首輪を嵌められなくなりそうで勢いを落とさずに彼女の首に首輪を嵌めた私だった。
「出来たじゃない、魁華。次はリードを首輪に——」
「えっ……慎城先輩それはっ——」
「何を常識人みたいな反応をして……此処では私は魁華の牝犬で、魁華は私の飼い主って設定なの。賢い魁華は一度で解る筈でしょ?さぁ、早く。勉強机の下の抽斗の一番下——」
「……はい。わかりました……」
私は抵抗することもできずに、重い脚を慎城の背後にある勉強机へと踏み出した。
脳が麻痺している感覚で、屈んで抽斗からリードを取り出し、彼女の隣に屈み首輪にリードを取り付けて、立ち上がった私。
「やりましたよ、慎城先輩……」
「長かったわね、魁華。まあ、成長したわね。これでも……続きを」
「ふぅー……」
「遠慮なく言って、魁華」
はああ、と深く息を吸い込んだ私。
「——っ!」
「ワンっ!」
慎城は私が深く息を吸い込んでいる最中に正座していた場で四つん這いになって待機して、犬のように愉しげに鳴いた。
私は午後18時20分まで慎城の変態プレイに付き合わされ、泊まるように提案されたが、断って慎城家から飛び出した。
まだ外は暗闇に包まれるまでは猶予があり、太陽は隠れ切っていなかった。
私は、慎城茉央のブラジャーとショーツだけを身に付けただけの身体をまともに見れはしない。
欲情も湧かない。
私は、ノーマルな性癖だ。
槇村魁華の高校生活はいつから狂ったのか——それは明白である。
残暑が漂い続ける9月中旬の放課後の帰路は、汗ばんだ身体で帰宅した。
**
槇村魁華の名前は、珍しくいろいろ意味を含ませた。
花に詳しければ、気づくのかな?
変態な先輩と普通でありたい後輩、二人の女子の百合百合なやつにお付き合い頂ければ幸いです……
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