サンタテレサ

ナカムラロボ

サンタテレサ

彫刻にすれば聖母になりそうな白木蓮がひとつ目につく

ふれたならきっと穢してしまうこと 両手をそっと風にさらして

陽の下で飲み込む水は清らかで心は遠い河へ繋がる

欄干に手をかけながら細すぎる首を見つめるように見つめる

身体には無数の暗渠 潮水が次第にそこを満たし始めて

声のない叫びを抱いていつからか海の近くにある美術館

絵の中で涙するひと 感情は今も風化を拒絶している

青空が一望できる屋上で棄てたいものを数えてしまう

ゆるやかな螺旋階段 何度でも道を間違う私だろうな

懺悔してしまえば楽でさっきから視界の端に揺れる蜘蛛の巣

蝶々が取り残されて訴えは誰の内にも宿り得るもの

変わりたい きらめくものを集めても黒い羽毛の嘴細烏

十字路に自分を置いて心臓を離れるように右側へ行く

どこまでも煉瓦の坂で上るたび乾いた音が骨に伝わる

赤色に咲くゼラニウム 見るだけが唯一許された愛し方

教会は仄かに暗く繭のよう誰もがそっと口を噤んで

どの窓も開け放たれて弔いのように寂しい風の往来

いくつもの椅子が静かに並べられ自身の罪に合うものがある

指を組み目蓋をおろし少しでもなくなりたくて閉じる全身

祈るよう腕をたたんでいつまでも花蟷螂は花でありたい

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