小さな綱渡し

波崎はる

第0話 私は小さな綱渡し。

私は小さな綱渡りし。

今はこんなにも見窄らしいけれど…

以前は信頼した仕立て屋さんの可愛いらしい衣装を見に纏い、綱を渡っていました。

今は裸足で綱を渡り、足は傷だらけだけれど…

以前はコレと決めたとても頼りになる曲芸師の相方トゥシューズを履いていました。

今は見窄らしい格好に裸足で、ただ信じると決めた傘でバランスをとっています。


綱はいつの間にか糸ほどに変わり、右からは不安、左からは恐怖と言う風が吹いてきます。

でも、大丈夫。私には唯一この傘が残っているから。


なんて、浅はかでした。

団長に貰ったこの傘も私の味方ではありませんでした。

唯一手元に残った、決して変わらないと信じていた大切な傘。

ある日の興行前に傘を開いてみたら骨組みが目も当てられ無いほどにボロボロでした。

団長曰く新しい曲芸師が来て、客寄せに私はいらなくなったんだそうです。

だから、もう、私の出番は終わりだから、傘を処分しようとしたそうです。

幾度も信じた私は愚かで、風に吹かれ揺れる綱を負けじと今日も私は歩くのです。


一歩、また一歩


見窄らしい衣装に身を包み

裸足のまま

骨組みの無い傘を片手に

顔面に貼り付けた笑顔を振りまいて

今日も糸の上を歩むのです。

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