小さな綱渡し
波崎はる
第0話 私は小さな綱渡し。
私は小さな綱渡りし。
今はこんなにも見窄らしいけれど…
以前は信頼した仕立て屋さんの可愛いらしい衣装を見に纏い、綱を渡っていました。
今は裸足で綱を渡り、足は傷だらけだけれど…
以前はコレと決めたとても頼りになる曲芸師の相方トゥシューズを履いていました。
今は見窄らしい格好に裸足で、ただ信じると決めた傘でバランスをとっています。
綱はいつの間にか糸ほどに変わり、右からは不安、左からは恐怖と言う風が吹いてきます。
でも、大丈夫。私には唯一この傘が残っているから。
なんて、浅はかでした。
団長に貰ったこの傘も私の味方ではありませんでした。
唯一手元に残った、決して変わらないと信じていた大切な傘。
ある日の興行前に傘を開いてみたら骨組みが目も当てられ無いほどにボロボロでした。
団長曰く新しい曲芸師が来て、客寄せに私はいらなくなったんだそうです。
だから、もう、私の出番は終わりだから、傘を処分しようとしたそうです。
幾度も信じた私は愚かで、風に吹かれ揺れる綱を負けじと今日も私は歩くのです。
一歩、また一歩
見窄らしい衣装に身を包み
裸足のまま
骨組みの無い傘を片手に
顔面に貼り付けた笑顔を振りまいて
今日も糸の上を歩むのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます