隠れ筋肉フェチな巨乳美人JKを助けた筋肉ヒーロー、お互いズブズブの共依存関係になって離れられなくなってしまう

ライデン

ダークヒーロー、執行!

第1話ヒロインタイム

「ギャン〜」


 天空には満月が輝き、地上にはネオンがきらめく。地上のネオンの明るさにかき消されるのか、星はほとんど見えない。その街の路地裏で、俺に道路のアスファルトへ頭から垂直に思いっきりドカンと叩きつけられた白銀半裸の……狼男の断末魔が響く。


「ダークヒーロー、執行!」


 俺は、勝利のキメポーズ。


 ここは、東京都新宿区歌舞伎町。欲望と暴力が渦巻く夜の街。


 満月の夜は、犯罪が顕著に増える。

 プロヒーローたる俺はパトロール中、路地裏から「きゃあー」という女性の悲鳴をきいて現場に急行したのだ。



「殺しちゃったのですか?」


 自らを襲った狼男を心配そうに見つめる心優しき女性。その美しい内面も、凛とした気丈な振る舞いも、艷やかなストレートロングの黒髪も大人の色香を帯びた麗しい尊顔すらも見過ごされがちだろう。並大抵の男がまず見るのは、そこではない。



 (あけすけに見るのは、失礼)と、自らを戒めるものの。どうしても胸の双丘に目が吸い寄せられてしまう。形はとても綺麗な釣鐘型。だが、特筆すべきはそのサイズ。――蓮華院誕生寺にある世界一の釣鐘「飛龍の鐘」と比較できるかもしれない。いや、それはさすがに言い過ぎであるが……つまり、大きいのだ! 


(これが、10Gか!)


 最新の通信規格が人間に及ぼした影響について、考えを及ばさざるを得ない。いや。筋骨隆々で大柄な(体長3mくらいの)狼男が、普通に闊歩かっぽしていて人を襲った挙げ句に討伐され、路地裏で伸びていることにまず疑問を抱くいだくべきであろうが。


「こいつらは、これくらいでは死にません。大目に見積もっても、半殺しってところです」


 デッドオアアライブというが……殺してしまっては、報酬が3分の1になってしまう理不尽さ。


 殺さないが、すぐには息を吹き返さないように倒すのがコツ。難易度は、とても高い。


 さて、これからまずやるべきことは……


「【転送】」


 腕に巻いてある転送装置を起動させる。腕時計のようなサイズで、かなり巨大な怪人でも霞が関にあるヒーロー協会の敵性体用檻まで生きたまま一瞬で飛ばせる便利グッズだ。(これを作ったのは、ヒーロー協会が誇る天才科学者・羽入詩音はにゅうしおん、16歳)


 傍でみている美女は驚きの表情で、呆然と狼男が横たわっていた場所を見つめる。


 それから……


 異空間に収納してある予備のマントを取り出して、怪人によってビリビリに服を破られた美女を包む。しかも、その美女は狼男のよだれにまみれて、顔中ベトベトな状態。


 タオルも収納からだして渡してやる。


「ありがとうございます。親切にしてくださって」


「立てます?」 

 紳士的に手を差し伸べる俺。


 その手を感謝の表情で、掴む美女。


「あれ?」

 気丈に振る舞っていても、狼男に襲われた恐怖が身体に影響を及ぼしたのだろう。力がはいらず立てない模様。そのさまは、生まれたての子鹿の如くである。


「横抱きが、ご希望ですか?」

 少々軽い感じのノリで、提案してみる。


「立てない、みたいですね」

 あはは。と困ったように力なく笑う美女。


「少し、あちらで休憩しましょうか。服も調達しないとだし。あそこなら、シャワーもある。それから、温かい飲み物でも飲んで落ちつきませんか? 事件のお話もゆっくり伺いたいですし。あ。ナンパとかではありませんし、ヒーロー免許に誓って、不埒ふらちな真似も致しません」


 ヒーロー免許を提示の上、路地裏の傍らにあるシティホテルを指さしながら提案する。念のためだが……ラブホではない。


「助けていただいたお礼も何かしたいですし、構いません。“恩にはきちんと報いるべき”というのが、母の教え。それに……その格好はいただけませんが……あなた、親切でいい人ですし」


 宝石のような綺麗で純粋な目で俺を見つめながら信頼の言葉を口にする美女。


 いい人そう、ではなく。いい人。と確信しているように言い切った!


(この子、もしかして……ものすごく育ちがよい?)


 立ち居振る舞いや発言からも、どことなく品の良さが感じられる。


 怪人とヒーローは、紙一重。(ダークヒーローたる俺をそんなにすぐに信用していいものか?)と心配になる俺。いや、その約束を守るも、破るも俺次第であるのだが……。


 まずは、ここにいたった経緯をこと細かに明らかにせねばなるまい。ヒーローは、怪事件のレポートも書かなきゃなのである。


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