第46部 4202年46月46日

 何も起こらない日というのはあるだろうか。


 何も起こらないというのは、何も特別なことが起こらないと言い換えるべきだろう。生きている限り、何かしらの行動をとらなければならないわけだから、そういう意味で何も起こらないというのはありえない。


 「特別なことが起こらない」と言った場合の、その「特別」を定義するのは難しい。人によって何を特別と感じるのかには幅がある。


 しかし、僕がこれまで経験した四十六日は、すべて特別といって差し支えないものだったように思える。


 それは、このテキストが物語の体裁を成しているからだろう。


「iya, chigau yo」


 と、対面に座る彼女が言う。


「watashi ga ita kara deshou ?」


「そうなの?」


 すでに夜は更けていて、時計の針は十一時半を指していた。僕も彼女もテーブルに着いて本を読んでいる。


「君がいると、どうして特別なの?」


「watashi no sonzai ga, kono monogatari o tokubetsu ni shite iru koto wa, machigai nai」彼女は言った。「nanishiro, watashi no kotoba wa, futsuu to wa chigau no da kara」


「その在り方に、何か意味があるの?」


「mushiro, imi ga nai n da yo」


「どういう意味?」


「imi o arawasu moji wa, hitotsu mo fukumarete inai kara」


「でも、言葉は普通意味を持っているものだよ」


「jaa, naze watashi no kotoba wa konna fuu ni natte iru no ?」


 僕は本をテーブルに伏せて置き、少し考えてみる。


 今まで考えたことがない課題だった。彼女はそういうものなのだと、どこかで割り切っていた。


 しかし、答えは簡単だった。


「むしろ、一つ一つの意味を大切にしているからだろうね」僕は言った。「単語を分けて表記することで、意味を構成する単位がよく見える。また、それをさらに最小単位を用いて表記することで、構造が忠実に表現される。構造を曝け出すことは、きっと、本当を見せることに等しいんだろう」

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