最終章ですわ

第27話 婚約指輪ですわ

 ここはアビス様の私室。手前の部屋が書斎で、奥の方が寝室になっていて、まだ私もそこまでは入っていない。


 と、とにかく今日は書斎の方に通されて、向かい合ってテーブルに座って、婚約指輪を渡されている甘い空気……のはずなんだけど……。


(指輪というか、宝石の積み木ねコレは……)


 金のリングに、胸の方まで手の甲を持って行ったら顔まで届くくらい宝石が重ねられていて、ビジュアルがギャグなのはもちろんだけど、物理的に左手薬指が重い……。


「どうだ? ソフィアの七色の魅力を考えて作らせた特注品なのだが」

「左の薬指が重くて痛いですわ」

「だろうなーーーーー!!!」


 秒で積み木っていうかジェ◯ガ的婚約指輪は引っこ抜かれた。なんだったの……。


「城下町の宝石屋にも「コレをつける女性の身になって考えてください、魔王様がコレ貰ったらまず邪魔くせえって思うでしょう、最愛の人からの贈り物でも」とは言われたのだが、どうしても絞りきれず、一度ヤケクソで積みこみまくってから絞ると無理を言ってやらせた、宝石屋にも苦労をかけた」

「こんな注文滅多にないでしょうから、向こうも楽しかったとは思いますわ」


 アビス様のセンスって、独特というより盛り過ぎなのかしら……。そういえば畑ごとイチゴをプレゼントというのも、規模が大き過ぎるかも……。魔王ってなると、スケールがなんでも大きくなってしまうのかしら。世界の半分をお前にやろう。なんて口説き文句? を、前世でも聞いた覚えがあるし。


 もっともアビス様の魔王っていうのは、魔界を治める王様という意味合いが強くて、退治されるようなものじゃないみたいだけど。考えてみると、ゲーム内でもソル王国の秘宝を欲しがっていただけで、王国を征服したいわけじゃなさそうだった。


 なのにあんな毎ルートぶっ殺される悲惨な扱いを受けて……。確かに秘宝を奪うのは悪い事なんだけど、コレも私の推し贔屓とはわかっているけどー!!


「? どうした」

「いいえ……」


 思わずアビス様の手をギュッと握ってしまったけれど、もう婚約者だから良いよね?

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