第65話 まさかの人物が、司法府長官に抜擢
うっ……まだ気持ちが悪い……。後……鳥がうるせー! 執務室で寝れば良かった……まあ……それは置いといて。ま、まさか。洗礼の儀式を終えると大人として扱われ、酒が飲めるとは知らなかった。
しかしだ。これは調子に乗って飲み過ぎた……それに、まさか久々に再開したアイツと、酒の席で意気投合してしまい……その場のノリで三権分立の最後の席である……司法府の司法府長官を任せることになるとは……。
────24時間前────
いや〜今日も良い朝で──だから鳥がうるせー!!
僕はすぐに自室の窓を開けて叫んだ。
「おいアグニス! 良い加減! 鳥にエサを撒くのはやめろ!」
「だから私の勝手でしょ! それに私が鳥が好きなのよ!」
「なに言ってんだ! ミストスの宴会で、コカトリスの串焼き食いまくってただろ!」
「アレは鳥じゃなくて、キメラみたいなもんだからいいの! 嗚呼、純真無垢な鳥を見てると癒されるわ〜」
僕は頭にきてるわ〜。
と言うことで、黒のTシャツに黒のパーカー、紺色のジーパンに真っ白なスニーカーを履き、いざ気配遮断をし気分転換にミストスの街を散歩しに行くのだ。
いやいや〜朝なのに凄い賑わいですな〜。おっ、公衆浴場も銅貨1枚にしたおかげで、皆が気軽に入れる場所になって列ができてるぞ。
お、そうだ! ドワーフにも衣類作り専門のドワーフがいるって、大宮殿さんが言ってたから、ちょっとガリョー四兄弟がいる工房にでも行って、僕の今の衣類のレシピを渡して、量産できないか訊いてみよう。
しかし朝からトンカントンカン。夜までキンコンキンコンしているけど、ドワーフって疲れ知らずなのか?
やはり──工房近くまで来ると暑いな。まあ鉄を溶かしているのだから、当然と言えば当然だ。
「おーい! リコー! ちょっと話が──」
「しつけー野郎だな兄ちゃん! 作らねーって言ったら! 作らねーんだよ!」
「頼む! 貴方しか作れないんだ!」
「仕事の邪魔だ! おい三馬鹿! このドアホを神聖な工房から追い出せ!」
「「「解りました!!」」」
「うわ! なにをするんだ!!」
なんだ? 朝からお客さんと喧嘩か? あの頑固おじさんめ! これじゃあ皆が笑って暮らせ──え?
リコが三馬鹿に追い出せと言った人物は、なんと剣聖アラン・サンドロスだった。赤髪碧眼の爽やかなイケメン剣聖様がなんでこんな所に。
「痛ってて。まさかドワーフの中でも最高と謳われた人物が、あそこまで意地っ張りだとは……ん? キミは──」
「ピーターです。ど、どうもお久しぶりですアランさん」
そう言うと、アランはバツが悪そうに苦笑した。
「アランでいいよ。それに敬語はやめてくれ。今じゃピーター君の方が偉いんだから。そうだろう? ペンドラゴン教皇様。だけど教皇様なのに、面白い服装だね」
そう言われて、僕も気まずくなり苦笑した。というか、この服装は──やっぱり奇抜なファッションなのだろうか? 余り目立たない服装だと、我ながら思うのだが……。それよりもヤバいぞ。アランの奴、もしかして四獣四鬼の一員であるケルベロスを倒しに来たんじゃ……。
「おいおい。そんな警戒するような目はよしてくれ。アレだろ? ケルベロスのことだろ? あの件は頼まれ仕事で、キャンセルになったから、もう狙うことはしないよ。それに今は、ピーター君の仲間になってる。ピーター君の仲間に怪我をさせて、すまないと思っているよ」
うーむ、やっぱりアランはいい奴だと思う。
「それで、何を揉めてたの?」
「いや何。プラチナの結晶があるって聞いたから、どうしてもプラチナの大剣が欲しくて、一振り作って欲しいと頼んだんだが、今はこの国の武具を作るのに、手一杯で、よそ者の剣なんて作れないって、工房を追い出されたんだ」
またもや苦笑いするアラン。
どうにかしてやれないものか……。そうだ!
「よそ者じゃなければいいんでしょ? だったらテレサヘイズの国民になっちゃえば?」
「おいおい。私は流浪の剣士だぞ。いくらピーター君の頼みでもそれは……」
「でも欲しいんでしょ? プラチナの大剣」
「まあねぇ……」
アランは一つの場所に定住するのが、苦手なのだろうか?
「解った! じゃあ説得してくるよ!」
「お、おい! いくらキミがこの国の教皇だからってそれは無茶だろ!」
「大丈夫! 頑固者の扱いには慣れてるから!」
そう、頑固者の特徴は、自分で言ったことは決して曲げない。それを利用すればいいのだ。
そして、僕には最強の武器がある。豚骨ラーメンを食べさせて、美味いと言わせたら、アランの剣を一振り作ってもらう作戦。
大宮殿さん。この作戦の確率は?
【答えます。高速解析した結果、勝率は98.7パーセントです】
勝ったな。
そして、僕が工房の中に入り、リコに今から豚骨ラーメンを食べさせるから。見事、美味いと言わせたら、アランの剣を作ってもらう約束をした。
結果は────「う、美味いいいいい!! おい教皇様! どんな魔法使ったんだ? こんな美味いもん生まれて初めて食ったぜ!」ふふふ。僕の勝ちだ!! これが豚骨ラーメンのパワーだ!
そして、アランがお願いした、プラチナの大剣を今日中に作ってもらう約束をし、アランの元まで戻った。
「アラン! 作ってくれるって! それに今日中に!」
それを聞いてアランは、大笑いし、僕を褒め称えた。
「いや〜、旅の途中で噂には聞いていたが、ドラゴンの里をマギアヘイズの襲撃から救ったり、あの人間嫌いで有名な女帝リリーゼと同盟を結んだり、果ては、たったの一日でエンジェルヘイズを壊滅させた話を聞いた時は愕然としたよ」
僕はまた苦笑いをした──その理由は、エンジェルヘイズを壊滅させたのは、ピノネロの軍略であり、僕は多少手助けしたに過ぎない。それが、あろうことか、誤った噂が広まり、僕がエンジェルヘイズを壊滅させた事になっているなんて。
「よ〜し! 新しいプラチナの大剣も出来るし、今日は飲むぞ! ピーター君!」
「え? 飲むって何を? 水?」
「酒に決まっているだろ! ん? まさか、洗礼の儀式を済ませたのに、その後の宴会で酒を飲まなかったのか?」
はい! 洗礼の儀式で追放されたので、宴会には呼ばれませんでした!
ついでに、この世界では15歳から飲酒が出来るなんて、知りませんでした!
なんて言えるか!
「まあ、いいや! 飲もう! 飲もう! 今日は私の奢りだ!」
そして、アランにまた強引に肩を組まれ、酒場に向かった──までは良いのだが……初めて飲むエールの味に感動し過ぎて飲み過ぎたのだ。その前に、転生して、また酒が飲める事に感動している。う、美味い!
前世ではビール派だったが、エールも中々イケるな!
「おっ! 良い飲みっぷりじゃないか!」
「いや〜アランだって良い飲みっぷりだよ〜ック! そうだ! やっぱりいっその事、この国に住まないか〜? 衣食住ならタダで約束するよ〜?」
「それじゃあタダ飯食らいだろ。住むにしても労働しなければ」
「だったら〜強いアランにピッタリな仕事があるよ〜。まだ司法府の司法府長官が決まってなかったから〜アランが司法府長官になれば良いんだ〜ヒック」
「おいおい飲み過ぎじゃないか? それになんだ? そのシホウなんとかって」
「まぁ〜簡単な話が〜国で悪い事をした奴を捕まえて〜。裁判するんだ〜。だから悪い奴を捕まえられる〜強いアランならピッタリな仕事だよ〜」
「うーん……」
「どったん? アラン? 悪酔いか?」
「いや、それはキミのほうね。それよりも、そろそろ流浪をやめて、腰を落ち着ける場所を探してはいたんだ」
「なら決まりら〜ヒック。司法府長官はアランに決定なのら〜!」
────24時間後────
うう……気持ち悪いし……アランに三権分立の事を、どう説明したものか。ああ。まあ、説明はしたのか……悪い奴を逮捕して……裁判する……。てか鳥がうるせー!!
しかし……三権分立の最後の席は……よく考えて決めようと思ったんだが……。
酒に飲まれてしまうとは……だって、凄い久々に飲んだんだもん……。
まあ……酒を言い訳には……できないな……酒が抜けたら……アランを探そう……。
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