第15話 ルストの街に無事帰還


 いや〜何度見ても絶景だな〜空の旅は。


 僕は今、ドラゴンの里からルストの大商業街に向かっている最中なんだが──いや、大変だった。何が大変かって、ドラゴンチャームが効きすぎて、僕がドラゴンの里からルストに戻ると言うと、泣き喚くドラゴンまでいた。


 本当に大変だった。スキルも考えものだな。


 おっ! もうルストの街が見えてきたぞ。ケルベロスの背に乗った時も早かったが、やはり陸を走り抜けるよりも、大空を翼で羽ばたいて飛ぶ方が早いね。


 あっ! 大事なことを忘れていた。エルをどうするかだ。

 いきなりエルダードラゴンの背に乗って街に降り立ったら、大パニックになるぞ!


 「なあエル! ルストの街から少し離れた場所に降りてくれないか?」


 「ん? どうしたのだ? ピーター様! 小用か?」


 「ちげーよ! お前はドラゴンなんだから、急に街に降り立ったら街中が大パニックになるだろ? だから少し離れた場所に──」


 「いや問題ない! 私は擬人化できるのだ!」


 誇らしく言うエルであった。

 まあ普通に凄いけど。


 「擬人化って完璧に人間の姿になれるのか? 尻尾だけあるとか勘弁だぞ!」


 「大丈夫だ! 全て人間の姿に擬人化できる」


 「おお! やるなあ! 流石はエルダードラゴン!」


 「うっふん!」


 「いや、そこはえっへんだろ……」


 なーんか、どこか抜けてるんだよな。うちのドラゴンさんは。

 まあ、それはそれとして、どこまでの擬人化なのか見てみよう。

 いや、その前に、服を用意せねば。

 擬人化して全裸とかシャレにならんからな。


 「擬人化できるのはわかったけど。お前の服を買って来ないといけないから、僕だけ先にルストの街に戻るぞ」


 「それも心配ない! 服は無いが、肉体を服のように変化させることができる! つまり素肌が服のように変化して見えるわけだ!」


 「おお! 凄いな!」


 「あっはん!」


 「もう突っ込まないぞ……!」


 よし。もうちょっとでルスト近辺だ。


 「エル! ここで降りるぞ!」


 「解った! ピーター様!」


 そして、地面に着地し、僕もジャンプして地面に降りた。


 「それじゃあ擬人化してみ」


 僕が言うと、真っ白な光にエルが包まれて──金髪碧眼の真っ白で透き通るほどの透明な肌とロングヘアーの美女が佇立していた。

 息を呑むほどの美しさとは、まさにこのことだろう──ファッションを除けばの話だが。


 なぜか白黒のゴスロリファッションだったのだ。

 貴族令嬢とかそんな感じの服装とか考えなかったのか?


 「あのさあ、擬人化は凄いけど、なぜにゴスロリなんでしょうか?」


 「ん? メイド姿の方が良かったか?」


 「いや……もういい」


 どうやらエルの中での、人間のファッションはゴスロリかメイドだけのようだ。相当人間に興味がないのだな、というか、勇者様との旅で人間がトラウマになってるから、興味がないのは当然か。


 まあ、ゴスロリも見方によれば、令嬢っぽく見えるし、これで良しとしよう。


 さて、また門番の衛兵のおっちゃんに、止められなければいいが。


 まあアランの友達って設定になってるから平気か。

 僕の思った通り、門番の衛兵は僕の顔を覚えており、「剣聖アラン・サンドロス様のご友人様ですね? どうぞどうぞ」などと、猫なで声まで出す始末。


 人間って、有名人と知り合いだと、こうも平気で掌を返すのかね〜。ああ、嫌だ嫌だ。

 と、思いながら、鑑定ギルドの犬のおっちゃんに会いに──ってか、もう街の入り口にいた!


 「ぬおおおお!! ピーター様あああ!! 鑑定結果を見ましたぞ!! なんですかあれは!! 私はこの鑑定士になって数十年になりますが、初めて腰を抜かしましたぞ!!」


 そう言って、また僕の両手を強く握り、ブンブン振り回す犬のおっちゃん。


 「なんだ……こいつは? 馴れ馴れしくピーター様に話しかけるかと思ったら、あまつさえ両手を握るなど! 食ってやっても良いのだぞ!」


 「おいエル! そう言うことは思っても口に出すな! 心の中だけに留めておけ!」


 はあ……なんか疲れるな。あっそうだ! 金貨100枚!


 「あのお、ちゃんとドラゴンの里まで行って鑑定をしてきたので──」


 「解っています! これがお約束した金貨100枚です」


 犬のおっちゃんは金貨100枚が入った袋を手渡してきた。


 ウヒョー! やったやった! 金貨100枚だ!


 「ああ、そうだ。言い忘れてました。あのステータス表を冒険者ギルド長にお見せしたら、後で顔を出すようにと伝言を預かっていました、それでは私はこれにて失礼」


 なんだか逃げるように立ち去る犬のおっちゃんを見て、少し不穏に思ったが──最も重要なことがある。

 売れるか判らないけど、プラチナ鉱石の結晶をしこたまインベントリに収納している。もしこれが全部売れれば、当分の間は遊んで暮らせるぞ!


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、いまだに貴族時代の自堕落な生活が忘れきれて──】


 ああ! もういいよ! てか久々に大宮殿さんが出てきたと思ったら、いきなりお説教か。あっ、そうだ。大宮殿さんにインベントリにあるプラチナ鉱石の結晶が商人ギルドで売れるか訊いてみよう。


 大宮殿さ──


 【答えます。売れます】


 てか早いなおい! ああ、そうか。僕の思考が筒抜けだから解ったんだ。

 それじゃあ、値段はいくらぐらいで売れそうなの?


 【答えます。算出した結果、街名ルストで全て売れたなら、大金貨1500枚になります】


 せ、せ、1500枚! しかも大金貨!

 大金貨って金貨10枚分でしょ? す、凄い! 一体何に使えば、と言うか、無くさないように、もし全部売れたら、大金貨はインベントリに入れておこう。


 よし。それじゃあ、ジョブチェンジもしたし、この貴族の服から、ちゃんとした冒険者の装備一式を買うぞ!

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