第六話


 「近来まれにみる不手際集団」

        (第六話)


         堀川士朗



オータムアイドルフェスティバル。

対バンは『伊藤の人たち』に決まった。

人気投票で上のステージに上がれるシステムだ!

負けるものか!


「あの腐れマムチョどもか」

「ぜってー負けねーよ、マムチョ臭いやつらに」


出番はナンバーワン姉ちゃんズの方が先だった。

ステージに立つ。

一曲目、二曲目と終わり……。

あたしたちのライブ中、客席で客同士が乱闘を始めた。

その客は六人いた。

彼らは口々に、


「問屋子は俺だけの物だー!」

「お前問屋子にいくら貢いだんだー!」

「うるせー!」


とか言っていた。

やめて!やめて!やめて!


ライブも物販も、あたしたちの回は中止だった。


楽屋でメンバー中村問屋子を囲んで暴力を使って問いただすと、彼女はファンと寝まくってその代わりとして金銭を得ていた事を自白した。


「どういう事だよ問屋子!」

「あたしはハメドルだから」

「は?」

「ハメドルってなんだよ?」

「今、ハメに行けるアイドル」

「なに言ってんの?」

「パパ活じゃねーかよお前!」

「違うよ。あたしは崇高なる意識とプライドを以てハメドルしてるんだよ」

「なに言ってんだお前!」

「ちなみにあの客たちとはあたしが働いているソープの乱姫で知り合った」

「ああんっ!?」

「それって問屋子がソープ嬢ってことォェ?」

「ア、アイ、アイ、アイドルがソープ嬢なんかやんなよっ!」

「やったって良いじゃん」

「クソが」

「あのさ、あたしはナンバーワン姉ちゃんズなんか一種の踏み台としか思ってないから」

「この腐れマムチョ!豚骨醤油!くたばれバカ女!」

「うるせーっ!わーっ!」


中村問屋子は走って逃げようとした。


「ちょ待てよ」

「ケムタク?」

「ちげーよ」

「待てコラ!淫売豚女っ!」

「わーっ!いやだーっ!」

「囲め囲め!」

「わーっ!」


先回りしていたアビゲイル市松が問屋子を逃がさなかった。

一際大きなからだの市松が下半身タックルで押し倒す!

あたしたちは殴り合いとなった。

頬を張り飛ばす。

たちまち赤くなる。

真っ赤な真っ赤な女の子、頬が。

リンチ!リンチ!リンチ!

総括!総括!総括!


「ぶっ殺せーっ!この腐れマムチョおんなをぶっ殺しちまえーっ!」


あたしの号令によるメンバー全員のビンタビンタビンタでみるみる内に中村問屋子の顔面が生まれたての赤ちゃんみたく赤く腫れていった。

すぐに警備員を呼ばれた。



あたしたちは、しばらく東京のライブハウスは出入り禁止となった。

やはりオータムアイドルフェスティバルでのヤラカシがでかかったのだ。

地方の巡業に出るあたしたちナンバーワン姉ちゃんズだった。



あーなんか。

あ~なんか。

ぴかぴか光って緩やかに流れる川にぷかぷか浮いていたいなあ~なんか。

ぴ~かぴか。

ぷ~かぷか。



            続く


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