近来まれにみる不手際集団

堀川士朗

第一話


 「近来まれにみる不手際集団」

        (第一話)


         堀川士朗



登場人物


鈴木軽奈

主人公。

口が悪い。性格が悪い。

地下アイドルグループ『ナンバーワン姉ちゃんズ』のリーダーとなる。

17歳。


アビゲイル市松

実家はケーキ屋。

クロアチア人とのハーフ。

半分臭い。

17歳。


中村問屋子

月イチで引っ越している。

ハメドル。

18歳。


角川チョロギ

頭脳派。ただし頭は悪い。

喧嘩を止める。

ドドゥイッツ教に入っていて、ライブのお客を動員する。

19歳。


鹿羽ルイ子

小動物みたいなあざとい女。

「それって、○○ってことォェ?」が口癖。

16歳。


岩谷火星人

ナイトメアグループアイドルプロジェクトの総合プロデューサー。通販会社ナイトメアグループ社長。


万麻宮帆立貝。

岩谷の相棒。作詞作曲家。

声が小さい小男。


杉下鉱脈女史

『ナンバーワン姉ちゃんズ』のマネージャー。レッスンを見守る。大麻不法所持で逮捕される。

元AV女優。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



人生は短い。短かすぎる。

一瞬だ!

努力をしなければ。

努力をしなければすぐに歳を取って、おばさん臭い臭いおばさんになるんだ。

あたしは自分を乗り越えてやるんだ。



母の葬儀が終わって何ヵ月かして納骨も済んであたしは親戚間をいちゃいちゃ通りすぎて狭いアパートに落ち着いていてもうその頃には高校も中退していた。


うろうろ。

うろちょろ。

街をうろついていた。

あてどもなく。


道玄坂うろちょろ。

渋谷で声をかけられるなんて都市伝説かと思った。

ナイトメアグループアイドルプロジェクト。

アイドルメンバー募集との事で若い勧誘員の綺麗な女の人に高いカフェでお茶とシフォンケーキを奢ってもらい、話だけは聞いてみた。

まずはじめに思ったのは、これは詐欺ではないかという事。

つまり多額なレッスン料を後から請求されるのではと。

まあ、そうなればクーリングオフみたいな事すれば良いし、裁判だってある。

でも調べたら違ったみたいだ。

プロデューサーは岩谷火星人。

CMでもお馴染みの通販会社、ナイトメアグループの社長だった。

ならばプロジェクト自体もキチンとしたものなのではないか?

とまれ、高校中退で犯罪加担型の闇バイトするよりはよっぽどマシだろう。

受けてみるか。

ともかく明日、会場に行ってみよう。

どうせこれ以上失うものなんて、あんまりないんだよ。



翌日。ナイトメアグループ本社の一室に通された。

綺麗なオフィス。

社長の岩谷火星人はCMで見るよりもずっと大柄だった。

180センチはある。

でも北関東なまりはそのままで、良い人そうではあった。

馬鹿ではない。

馬鹿では社長は務まらないだろう。


話はとんとん拍子に決まっていった。

給与の面も良さそうだった。

このアイドルプロジェクトを受けてみる気持ちになったのは、母が亡くなって高校を中退して何かしら始めなければいけないというのも今すぐあったし、人並みのルックスを活かしたいささかの承認欲求もまたそこにはあった。

渡りに船だ。

あたしは机に置かれた契約書にギャル文字で次々とさっさかサインしていった。


集められたのは、あたしを含め五人のメンバー。

みんな、顔はかわいい。


岩谷火星人が明言する。


「ナイトメアグループアイドルプロジェクトが放つ、このすんばらし~いグループ名は、ナンバーワン姉ちゃんズ!リーダーは……鈴木軽奈、キミだ!すんばらし~い!」


は?

あたしかよ。



            続く


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

近来まれにみる不手際集団 堀川士朗 @shiro4646

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ