カズヤ君リターンズ
崔 梨遙(再)
1話完結:1200字
あまり思い出したくないのだが、カズヤ君のナンパに半日以上1日未満、付き合わされたことがある。
最初は、僕が先に女の娘(こ)に話しかけた。だが、鼻息の荒いカズヤ君がついてくるのだ。いかに僕が明るく誠実っぽく話しかけても、目が血走って鼻息の荒いカズヤ君が横にいると、明らかに女の娘は怯えたように去る。いや、実際に怯えていたのだろう。僕が女の娘の立場でも怖い!
「崔君、なかなか成功せえへんなぁ、なんでやろう?」
「お前のせいや! 次からはカズヤ君が先に声をかけろ」
「え、最初の第一声は恥ずかしいな」
「ほな、ナンパやめて帰ろうや」
「わかった、俺から声をかけるからナンパを続けて!」
「鼻息が荒いねん! 目が血走ってるねん! 焦るな! 落ち着け!」
「すみません、ちょっとええかな?」
「ダメです」
「ちょっと一緒に食事せえへん?」
「せえへん」
「そこをなんとか」
「行かへん!」
「ちょっと一緒にお茶せえへん?」
「しない」
「ちょっとだけ、ちょっとだけでええねん」
「行かへんって言うてるやろ」
「この通り、頼むわ、アカンか?」
「アカン」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ、お願いや」
「しつこい!」
「崔君、なんでアカンのやろう?」
「お前、女の娘を怒らせてるだけやんけ」
「そうなんかなぁ」
「しつこいねん、そりゃあ、嫌がられるわ。だんだんしつこさが増してるし」
「ほな、どうしたらええの?」
「そやなぁ、共通の話題から入ったら? 例えば、その服似合ってるね、とか、そのアクセサリーかわいいね、とか。とりあえず褒めながら会話を続けることが大事や」
「君、その服めっちゃ似合ってるなぁ」
「あ、そう、ありがと」
「待ってや、そのネックレスも洒落てるなぁ」
「あ、そう、ありがと」
「待ってや、夏やから露出が多くて色っぽいなぁ」
「あんた、そんなエロイ目で私を見てるん?」
「いや、エロイんとちゃうねん、魅力的やねん」
「もう、ええから、どっか行ってや」
「白いブラウスからブラジャーの紐が見えて色っぽいなぁ」
「変態か!」
「崔君、また怒られたんやけど」
「僕、もう帰ってもええかな?」
「アカン、今日は付き合ってくれるって言うたやんか」
「なんか、めっちゃ時間の無駄をしている気がするねん」
「そんなこと言わんといてや」
「ほな、もう飯を食って、終電が終わるのを待とう!」
「なんで?」
「終電が終わってもウロウロしてる女の娘は、急いでない、時間があるってことやろ? 時間のある娘を誘うねん。それに賭けよう」
「さあ、人通りはごっつ減ったけど、今歩いてる娘は時間に余裕のある娘ばかりのはずやで。行け-!」
「お姉さん、もう電車無いでしょう?」
「タクシーで帰るから」
「ちょっとだけ時間もらわれへんかな?」
「無理」
「ほな、一緒にホテル行かへん?」
「行くか!」
カズヤ君、“ホテル行きませんか?”、またやりやがった。
カズヤ君リターンズ 崔 梨遙(再) @sairiyousai
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