第22話 たとえ誰のものでも
僕と新人たちは市民たちに見つからないように、こっそりと任務から歩いて帰還する。
その道中に何人か孤立している
1時間ほど歩いて、僕たちはダーウィンズオーダーの本拠地に戻ることができた。
「おお、お勤めご苦労様。霧織くんは……いなくなったようだね。なんでいなくなったのかは知ってるよ」
険しい顔をするエボル。しばらくしてエボルは僕のことを呼び、まるで僕の親かのように僕の頭を撫でた。
「よく頑張ったね。君たちほどの人数を動員しても殺せた
「ああ、それがですね……僕のところに現れた五大保安官の赤星ジェラルディンは、能力を使用するたびに寿命が縮むんです。それで限界まで縮んで、これ以上早死にしたくない的なことを言って去っていきました」
「なるほど……所詮は超常保安官も偽善者の集まりというわけだ。私たちは原理的にそれを咎めるつもりはないが、所詮超常保安官風情に命を捨てる覚悟なんか少しもなかったということだ。それで、そのとき彼女はなんと言っていた?」
「3日後に
「ふむ、恋人の誕生日、か……だが所詮、その恋人とやらも我々が殺すべき対象、
「はい」
「ならば折角の機会だ。そのジェラルディンの恋人とやらを、誕生日が来る前に殺そうじゃないか。それでジェラルディンの戦意が折れれば我々としてそれでよし。仮にジェラルディンが逆上したとしてもたった数日でこの組織を壊滅させることができるとは思えない。仮に私が死んだところで、組織を継ぐスペアはいくらでも存在するからな」
エボルはそう言って、遠くからでもわかりそうほど深い笑みを浮かべていた。間違いない、これは悪魔の微笑みだと確証したときだった。
————
1日後、ダーウィンズオーダーの機械に強いメンバーが、ジェラルディンの恋人の家を突き止めたと聞き、僕と一崎さん、卯月さん、栃木さんが恋人の家に向かうことになった。
「そういえば、栃木さんの能力ってなんなんですか?」
「俺の能力は【
何その制約。その能力は子供のゲーム時間か何かなの……?
そんなことを小さく抱えながら、僕らはジェラルディンの恋人の家に着いた。恋人の苗字は「飯村」というらしい。
「能力を使用してからここに辿り着くまでに何分かかった?」
「……45分」
「ああクソッ、結構な時間を使っちまったな。能力を使い始めるのが早かったか?」
「まあまあ、無能者1人殺すのに15分もかかるようじゃダーウィンズオーダーに入る価値がありませんし。そう気にかかることでもないと思いますよ。それにここには精鋭の一崎さんがいます」
「結局私だより……?」
一崎さんはため息をついてそういう。
「だって一崎さんの能力が一番こういう時に向いているんですから」
「まぁ、それはそうだけど……洋、あなたが殺しなさい。あなたが殺さないとあの2人に示しがつかない」
「まぁ確かにそうですね……わかりました」
僕たち4人は手元に持っていた人間センサーでジェラルディンの恋人の位置を突き止めた。彼のドアの近くに行くと、寝息が聞こえる。
僕が覚悟を決めてドアを開けると、ドアが開く音でジェラルディンの恋人が目覚めてしまった。
「なんだ?何が起きている?まるでポルターガイストだ……ダーウィンズオーダーの刺客か!?」
なんてことだ、
「ああ、なんてことだ!早くジェラルディンに連絡しないと……」
そう言って彼がスマホを取ろうとするので、僕はそれを止めるために大量の水を噴射した。スマホは水に使って壊れ、そこから漏電して彼は感電死した。
「……もう息してないみたいですね」
「念の為血液でバラバラに切り刻んでおく」
一崎さんは強い殺意を浮かべた顔でナイフで傷口を作る。血液の武器を取り出し、血の武器で彼をサイコロステーキにしてしまった。
「よし、これで帰るか」
そのまま僕たち4人はダーウィンズオーダーの本拠地に帰り、成果を報告した。
————翌日。
『えー、先日謎の空間断裂により、飯村宅とその半径50m以内の空間が突如として裂け、クレーターを残したことが記録されました。なお、この事件による死者は68人、負傷者は7人です。またこの事件以来、超常保安官の赤星ジェラルディン氏が行方不明になっており、事件の概要と本人の能力から関係があるとみて調査が進められいます。これに対し超常保安局は——』
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