第14話 おとり捜査
洋たちの初任務の翌日、超常保安局では——。
「先日の我宮保安官の殉職により、ダーウィンズオーダーの要警戒レベルを5段階中3から4に引き上げることにした。いいね?」
真っ黒で整ったスーツに身を包んだ、超常保安局の局長がそういう。彼はそのしわから老人、声から男だと分かるが、その頭部には鮮やかで黒い髪が抜け落ちずに生えている。
「それは妥当だと思います、局長。最初は犯罪組織ではあっても一定した基準のある組織だと思っていましたが……あの様子だとただの無差別な通り魔と変わりませんね」
白いスーツを着用し、片眼鏡をかけた五大保安官の一人、
「あれだけ長い間
五大保安官の中で最も短い体を持つ、
「それは大変痛ましいことですわね……詳しく対策を立て直す必要がありますわ」
イギリス人とのハーフであり金髪を持つ女性である五大保安官の一人、赤星ジェラルディンがそう言った。
「どうすればいいでしょうか?」
五大保安官の最後の一人である髪飾りをつけた女性、
「秩序と平等を維持する目的を持つ私たちに牙を向くとはね。ついにダーウィンズオーダーも我々に宣戦布告したか。ならば、おとり捜査を行うしかない。そのためには君の力が必要だ、黒木くん」
「俺の力が?」
「ああ、君の力は触れた人間を一定時間無能力にするものだ。だからこういう時に役に立つのさ。その能力を使って部下の一人を
「なるほど……」
「ちなみに、僕たちはどうすればいいんですか?」
話に割り込んでアキラが言う。
「ああ、君たちに関しても後日指示を出しておく」
「わかりました」
————
「みんな、今日は集まってくれてありがとう。今日の任務はパトロールだ」
「パトロール?」
僕はそう言いながら首を傾げ、一崎さんの方を向いた。
「2人1組で行動して、
「言うまでも無い話だが、みんなバディで行動するように。それと、新人の3人はこれを持って行きなさい」
僕はそういうと、スマホのような平たい何かを渡された。
「これは?」
アミちゃんがそれを見てエボルに質問する。
「それは周囲にいる人間を察知する、異能技術によって作成されたレーダーだ。異能者は白い点、
僕はそう言われて、画面の少し下にある黒いボタンを押す。すると、いくつか白い点が表示された。
「全部白い点ですね……」
「当たり前だ。この本拠地に
「わかりました」
ダーウィンズオーダーのみんなはそれぞれのペースで外に出る。僕も一崎さんと手を繋いで外に出た。
————
「こっちに
「じゃあそっちに行こうか」
僕と一崎さんは
「……アンタ、
「ち、ちちち違う、今の俺は能力を奪われているだけの超常保安局の異能者だ。だから殺さないでくれ」
「でもこの装置では君が
「ふっ、ふざけるなぁ!おのれ黒木めぇ、あいつが俺のように部下を捨て駒にするなんてなぁ……死ねぇ!」
白スーツの男は銃をこちらに向けて一発ずつ放つ。しかし、銃弾は二人の体を通ることなく血に落ちた。
「残念、このスーツには完全防弾機能がある。アンタみたいなのが武器持って暴れても困るだけだからね。ねえ、洋。こいつどうする?」
「うーん、反応が
「わかった。じゃあ、殺すね」
一崎さんはそう言ってナイフで自分の手首を傷つけると、そこから血で作った二刀流の短剣を取り出した。そして、高速で移動し白スーツの胴体を裂くと、瞬く間に白スーツの男は赤スーツの死体に変わってしまった。
「さあ、行きましょう、洋」
「わかりました」
僕はそのまま一崎さんの後をついていった。
探してみると
一崎さん曰く、たくさん人が集まっている中で殺したり、一度にたくさん殺したりすると目立ってしまうかららしい。
「もう日が暮れてきたし、帰ることにしましょう」
「わかりました」
僕と一崎さんはそのまま来た道を戻り、ダーウィンズオーダーの本拠地に戻った。
「おかえり、みんな。何人殺したか一人ずつ報告してくれ」
そう言われて僕たちは順番に
「よく頑張ったね。それじゃあ今日はここでおわりにしよう」
しかし、この時の僕は、とても言いようがないながらも何か嫌な予感がしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます