第10話 無能者狩り
片腕と片足、そして一時的に意識を失った我宮を見て、周囲の
「そんな……超常保安局の二人が……」
「何の力もない俺たちは死ぬ運命なんだ……」
「もうおしまいだ……やっぱり俺たちは弱者だったんだ……」
叫び声を上げながらあちらこちらを走り回る
「おらあ!死ね死ね死ねぇ!お前らは社会のゴミなんだよぉ!」
うち先輩たちは冷酷に武器を振り回していたが、黎人くんはゲームをプレイしている子供のように無邪気で、正直先輩たちよりそっちの方が怖かった。
「うわああぁ、もうダメだぁ!許してくれぇ……」
「どうか許して……私たちだって
「僕たち……ただ
そんな彼らを見て僕は涙が止まらなかった。エボルの理論で考えるとこれが至極当然のことなんだろうとはわかっているけど、それでも人の死を可哀想と思うのは止められなかった。
「何ボーッとしてるの、そこの二人」
しばらく殺戮の様子を見ていると、一崎さんが振り向いてこっちを見てきた。
「あっ、あの……今日僕は能力が切れてて……」
「そう。それでも何か役に立つことをしなさい」
「で、でもどうすれば……」
僕が戸惑っていると、隣にしゃがみ込んでいたアミちゃんが肩を叩いて、僕にナイフを差し出してきた。
「これを使ってください、洋くん……」
僕はその持ち手を手に取り、立ち上がる。
「いや、強いて言うならアミが頑張りなさい。洋がいなかったら、今頃私たちは灰の中で殺されてるはず。それに、今は水の能力が使えないらしいじゃない」
「た、確かに……」
僕はそう言いながらアミちゃんにナイフを戻した。
「そ、それで私は何をすればいいんですか?いっておきますけど私、結構弱いので多分洋くんよりも役に立ちませんよ……」
「大丈夫。使用上限がない分、あなたの能力は小回りがきく。それに、
「……そこまで言われたら頑張るしかないじゃないですか。そのナイフ返してください、洋くん」
「わかった。返すよ、これ」
僕はそう言ってアミちゃんにナイフを返した。するとアミちゃんはテレポート能力を使ってどこかに消えていった。
「あ、あの……僕はどうすればいいんですか?」
「とりあえずそこにいる超常保安官が起き上がったりこっちにきたりしていないか見張ってて。それと、援軍が来る可能性もあるからドアの方にも目を配ってちょうだい」
「わかりました」
僕はそういうと、我宮とその奥にあるドアの向こう側に目を向ける。まだ奥からは援軍は来ておらず、床井は失血してそこに倒れ伏している。手には何か四角いものを持っているようだ。
「あの四角いものは、一体……?」
僕はそう思ってドアを開け、倒れ伏している床井の近くに歩み寄る。どうやらそれはスマートフォンだったらしく、それを見て僕は彼女が援軍を呼ぼうとしているのだろうと理解した。
僕はそれを見て後ろを向き、元いた建物に戻ると、その様子を一崎さんたちに伝えようとした。
「聞いてください!あの超常保安局の人が援軍を呼ぼうとしていました!」
「ああ、やっぱりか……」
一崎さんは振り向いてそういう。
「やっぱり?」
「あいつらは最初に何人か先手を派遣して、様子を伺ってから集団で攻めてくる。つまりあいつらはいわゆる斥候だったの」
「なるほど……」
「そう。でも、この間に
「それもそうですね。じゃあ、とりあえずここにいる全員に伝えておきますね」
僕はそういうと、任務に派遣されている仲間全員をダッシュで探し回り、見つけ次第急いだ方がいいと声をかける。なんとか超常保安局の援軍が来る前に全員に声をかけることができた。
全員に声をかけたことを報告しに戻ると、そこに一崎さんの姿はなく、代わりに皆殺しにされた
仕方がないので、僕はふたたび我宮と床井の様子を見ることにした。
しばらくすると我宮が目を覚ました。僕はふたたび意識を奪おうとしたけど、我宮は一人残らず死んでいた
「なんてことだ。私は
我宮はこちらにゆっくりと能力で灰を集める。しかし、僕はそれをとめ、足で灰を払いのける。
「なぜそんなことをした?」
「決まっているでしょう。我々と戦えるほどの優秀な遺伝子を持っているあなたに死なれたら困るんです」
「そうか……。だが、私はどうせ死ぬ。お前たちのいうことが正しければ、私は淘汰されるべき存在だ……」
そう言いながら彼は灰を再び集めると、それを飲んで窒息死した。
我宮が窒息死した後、追加の緑色の車が2、3台迫ってきていた。
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