月の涙

 夜の荒野を男が歩いている。全身が砂に塗れ、腰から下げた水筒がカランカランと乾いた音を立てる。男はとにかく喉が渇いていた。よろよろと歩を進める男を憐れんで、月が銀色の涙をこぼす。それを飲み下した男は、満足そうに笑ってその場に倒れる。男の口から水銀が零れ、灰色の砂に沈んでいった。

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