第28話 初依頼を受けよう
ステーキサンドうまかったなぁ。
ありがとう。ユリア。……ほぼ毎日ユリアの手料理を食べています。なんて公爵閣下に言ったら、ぶん殴られそうだ。
昼食の時間に冒険者ギルドが
朝や日暮れには混雑する冒険者ギルドのロビーも、落ち着いて見てみると寂しいような。不思議な感じだね。
まぁ、数台置かれた丸テーブルには冒険者が誰もいなくて、ステーキサンドを味わえたからヨシ!
「ロル。依頼を見に行きましょう」
了解! ユリアは昼食をいつもより早く食べていたから、かなり楽しみなんだね。
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依頼 町内の清掃 大通り
依頼主 ロッセ町役場
等級 制限無し 低等級優先
依頼内容
ロッセ町内、大通りの清掃をお願いします。
開始は朝から日暮れまで、食事は各自で用意してください。
報酬 一人 大銅貨五
募集人員 十名 人員の増減は応相談
詳細は冒険者ギルド受付まで。
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「ロル。冒険者とは町内の清掃も依頼されるのね」
「新人冒険者の定番の仕事だね。時間が長くて報酬も安いけど、参加者や清掃中に関係する人との人脈が後々生きてくるかもしれない。意外と新人冒険者にとって重要な依頼なんだよ」
「大銅貨が五枚というのはどれ程のことができますの?」
公爵令嬢ともなると大銅貨を使ったことがないのか……もしかしたら現金を持ち歩いたことがないのかも。
「ここロッセの町なら余裕で安宿に食事ありの一泊が出来るよ。食事抜きでギリギリ二泊出来る程度だけど、まぁ新人のうちはね。しょうがないね」
「どこも新人のうちは
まさか公爵令嬢からそんなセリフを聞く日が来るとは。
「町の規模が大きくなればなるほど、募集人数も
「王都は広いですものね。あら、こちらは露天広場の清掃ですわ」
町を運営する役場や町長も、金を出して冒険者ギルドに依頼を出しておけば町内の清掃をしてくれるから、町と冒険者ギルドの両者にとって良いことなんだろうなぁ。
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依頼 冒険者ギルド訓練場の整備
依頼主 冒険者ギルド
等級 制限無し 低等級優先
依頼内容
冒険者ギルドの訓練場の整地。貸出武具の整備。
本日の午後から、訓練場の整備が終わり次第終了します。
報酬 一人 大銅貨五
募集人員 三名
応募は冒険者ギルドの受付まで。
人員が集まり次第開始します。
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「これは今日の午前に利用した訓練場ですわね? 随分と地面が荒れていましたが、整地前でしたのね」
「冒険者ギルドのお手伝い依頼だね。ギルド施設内の清掃とか、専門知識のいらない備品の整備も依頼で出ることがあるんだ。さっき使った貸出用の木剣も使い込まれていたから、整備をしっかりとやってるんだと思う」
「ロルが急に自己強化を使ってしまうものですから、わたくしは木剣を壊してしまうかと思いましたわ」
「んぐっ」
ごめんて。でも、ユリアから声援もらったら張り切っちゃうのはしょうがないことだよ。うん。
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常設依頼 ○依頼書を掲示板から剥がすな!○
依頼 下級魔石の納品 十個単位
依頼主 冒険者ギルド
等級 制限無し
依頼内容
下級魔石を納品してください。
報酬 下級魔石十個 大銅貨五。
納品一回の限度 百個。
納品先 冒険者ギルド受付
○納品数が五十を越える場合は冒険者ギルド納品受付へ。
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「あら。この依頼は少し
「これも冒険者ギルドでは定番中の定番依頼だよ。
魔石や薬草は常に消費し続けるけど、町の外でしか採取できないから常に依頼として出されているんだ。ほら、上に『剥がすな!』って書いてあるでしょ? 常設の依頼だから常に掲示されているけど、たまに持ってくる人がいるんだよね。ユリアも剥がしちゃダメだよ。
魔石十個はどんな方法で持ってきてもいいよ。大人なら素手で倒せる弱い魔物を倒してもいいし、拾うのが面倒で放置されたのを拾ってもいい」
素手で倒せる弱い魔物って言っても、こちらを殺しに来るから不足の事態ってのは常に付きまとうもんだ。
町の外で魔物を相手に魔石を集めることは危険が多いけど、上手くやれば町中の安全な依頼の何倍も稼げる。
「買ってきたものでもいいの?」
「もちろん買ってきてもいいけど、買うと倍以上の値段だから完全に赤字だよ。ユリアなら例の手段で大金稼ぎそうだね」
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依頼 魔物の調査
依頼主 ロッセ町役場と冒険者ギルドの共同
等級
上がる可能性があります。
依頼内容
ロッセ町から東の開拓村付近。
正体不明の魔物が三体以上
「オーガに似た外見。全身が灰色」と報告があります。
魔物の正体、正確な数、戦力の調査をお願いします。
報酬 大銀貨三枚
募集人員 一党一組まで・個人二名まで
詳細は受付で確認してください。
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「まぁ。大変ですわ。ロル。わたくしたちもお手伝いできないかしら」
「オーガで灰色。変異かな? ユリア。残念だけど受注条件を満たせていないから、この依頼は手伝うことも出来ないんだ」
「わたくしはまだ無印の新人でしたわね。規則にはありませんでしたが、無報酬の手伝いや補助程度でも関わってはいけませんの?」
「うん。ユリア。危険が想定される依頼は、自分から関わってはいけないよ。とても高い能力があったとしてもね。等級は冒険者の信頼の値でもあるんだ。低等級の信頼できるかわからない相手と、危険な仕事はやりたくないでしょ?」
「なるほど……高い能力があるからこそ問題になりそうですし、邪魔になって失敗しては意味がありませんわね」
実力はあるが信頼できない相手に背中を任せる……めっちゃ怖いな!
「ざっと掲示板を見たけど、ユリアは受けてみたい依頼はあった?」
他にも下水道の清掃、配達依頼、特定の薬草の納品、
依頼はそこそこあるけど、ロッセの町と周辺をあまり把握していないオレとユリアじゃ難しいね。
「常設の魔石納品でしたらすぐに終わりますが……初めての依頼がそれでは、記念どころか記憶にも残りそうにありませんわね。訓練場の整備はどうかしら? 等級制限無しの三人であれば、他の冒険者の方と交流もできそうですし。整地は魔法でできますわ」
いきなり魔石の山を出そうとしなくて本当に良かった。
たまぁにユリアは公爵令嬢らしい金銭感覚とか、上流階級的な常識が飛び出すからなぁ
「
ごほん! では冒険者ユリア。君が依頼の受注から完了報告まで、全て主導してみせるのだ」
「よろしくてよ! 完璧にこなして見せますわ!」
張り切りユリア。え。かわいい。このかわいいは約束された勝利だな。
「ごきげんよう。ジェシカさん。先に冒険者証を提示するのでしたね。この依頼の受注手続きをお願いしますわね。わたくしとロルの二人参加ですわ」
小さい子の初めてのお手伝いを見ているような気分だ……
怒られそうだから、なにも言わずに黙ってよ。
「ごきげんよう。ユリアさん。……はい。お返ししますね。講習終わって早速お仕事ですか。訓練場の整備ですね。はい。受注確認できました。時間になりましたら整備内容の説明に職員が行きますので、訓練場でお待ちくださいね」
「あと一人が来なかったらどうなさるのですか?」
「ユリアさん。ロルフさん。お二人で始めていただきます。途中ギルドの職員が交代で手伝いに行きますが、お二人の負担が大きくなりますから報酬の大銅貨を六枚にさせていただきますね」
「わかりましたわ。では、ロル。向かいましょう」
「了解。ユリア。……ユリア。完璧だったよ!」
「ふふふ。この程度でロルったら」
かわいい。
「ロルフ兄ちゃんとユリアさんだ」
ユリアと二人で説明に来る職員を待っていると、新人講習で一緒だった赤髪の少年。アルが来た。
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Tips
銅貨1枚 パン一個 100円~150円
銅貨10枚で、大銅貨1枚。
銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨の順で10枚ごとに繰り上がる。
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