勇者と子孫と不思議の街
鈴音
第1話 プロローグ
勇者と子孫と不思議な街
むかしむかし、遠い昔。この街には、魔王と言われる恐ろしい怪物がおりました。
魔王は仲間の怪物たちと共に人間を襲い、世界を侵略し、次第に勢力を増していきました。
ここ、東の果ての、今は日本と言われる国を拠点にしていた魔王を打ち果たした勇者は、倒れる寸前の魔王に呪いをかけられ、石になってしまったのです。
それからどれほど経ったでしょう。今もなお、神や妖怪や幽霊や、色んな不思議や魔法が残る愛羅市に、私は住んでいます。
この街の端っこのほう、山の山腹にある洞窟に、石になった勇者様が眠っています。
彼が決戦前に残した子供。その子孫が、この私。私たちの一族は、彼が眠る洞窟を守り、彼を綺麗にするのが、昔からの使命。
剣を抱きかかえ、目を閉じ眠るその姿はとても格好よくて、彼のお世話ができることが、私の何よりの誇りでした。
でも、ある日のこと。洞窟に行くと、勇者様の石像がなくなっていました。
辺りには砕けた石片。もしかすると、封印が解けたものの、勇者様は無事に目覚めることが出来なかったのかもしれない。不安になりながら、洞窟の近くを中心に、探索を続けました。
そうして探すこと三日。残念なことに、私は彼を探す前に、学校に行かねばならないので、早く彼を見つけたい気持ちを抑えながら、通学し、帰ってきたとき。
「君が、私を毎日綺麗にしてくれていたのか。いつも、ありがとう」
そこには、ドッペルゲンガー……いや、私にそっくりの、彼だと思っていた、勇者その人がいたのです。
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