第22話 変わった変わらない
ジミーの計らいによって僕たちは六年振りに集合した。
僕とジミーはユーリと再会し。
兄姉弟子の二人と母さんと父さんは師匠と再会できた。
ユーリは以前の朴訥な少女とは違い、今は快活な人格になっていて。
「ううう、寒い、オーウェンのコート貸してくれない?」
「あ、うん、どうぞ」
「サーンクス」
「……変わったねユーリ」
「どこが?」
昔は儚げだったけど、今は元気いっぱい。
そう言うとユーリは僕を小馬鹿にするように笑う。
「昔の私ってそんなだった? 妙な夢持たせていたらごめんね?」
いや、うん、い、いいんだ。
「昔は君だったり、兄姉弟子の二人がそろって寡黙だったから困っていた記憶があるよ」
「そうなんだ、あ! そう言えば私聞きたいことがあったの!」
昔のユーリであれば急に大声を出すこともなかっただろう。
「二人って恋人もうできた?」
今のユーリは僕たちの恋人を気にかけるほど恋愛に興味を持ち始めていたようだ。
僕はいない、けどジミーは同じ学校に将来を約束している感じの人がいる。
ユーリは自慢げに答えたジミーに鼻白んでいた。
「俺はいるぜ」
「ぐ、さすがは年長者」
思わず時間を忘れて他愛のないことを喋っていると、店からルビーが出てきた。
「皆さん、お時間はよろしいのですか?」
「あ、まずい、僕はこの辺で帰るよ」
右腕に掛けた腕時計に目をやると二十時を過ぎていた。
誕生日パーティーとはいえ、こんなに長居するつもりじゃなかったから。
この後が大変だ。
いったん冒険者ギルドの本部に帰ろうとすると、ユーリが引き留めた。
「待ってオーウェン!」
「どうしたの?」
「私と父さんの宿とかある? 二人ともオーウェンに頼ることを想定していたから」
僕はくすりとした笑みをこぼした。
「別室でいいかな? 二人はいずれ帰って来ると思ってたから、部屋用意してあるよ」
ユーリは感極まったようで、涙ぐみ、僕に抱きつく。
美少女に突然抱きつかれて心臓がばっくばくになった。
なので師匠やユーリ、兄姉弟子の二人を連れてギルド本部の建物に帰る。
道中、師匠は弟子の僕たちを連れている光景を懐かしむ。
「お前らとこうやって歩くのも懐かしいな」
「師匠は何も変わったようすがなくて安心しましたよ」
「変わった変わらないで言えばお前が一番変わったよな、オーウェン」
え?
「そうですか?」
「昔のお前は鼻たれ坊主だったのに、今は都会人気取りの鼻につく格好してるじゃねーか」
そうか? 単にスーツ姿でちょっと高価なコート着ているだけの青二才だが?
「僕はまだまだ師匠の足下にもおよびませんよ」
「生意気いいやがる、そういう所だけ変わってないな」
お互いの記憶のそごを埋めつつ、本部のビルの前に着くと。
師匠やユーリは固唾をのんでいるようだった。
「あれー、以前からこんな立派な建物だったか?」
「超ゴージャス」
「お察しのとおり、あれから建て直したんですよ。二人の部屋は最上階にあります」
ユーリは胸の前で小さな拍手をし、喜んでくれていた。
「さすがはオーウェン、弟子の中でも一番の金づる、じゃなかった後援者」
「君が喜んでくれるのが何より嬉しいよユーリ」
「……うん!」
本当に、今のは本心から思えたよ。
僕は君に救われた命だ。
例えこの先君がどんなに変わろうとも、僕は援助をたゆまないだろう。
よほど疲れていたのだろう、師匠とユーリは部屋につくと泥のように眠った。
一応、二人の部屋には僕が信用している冒険者の警護をつけた。
「じゃあユーリの警護は任せたよ、急な依頼に応えてくれてありがとうソネット」
それはかつて僕のインタビュー映像で雑草取りが得意と答えた少女だ。
彼女は典型的な魔術師で、精霊魔法のユニークスキルを持っている。
「問題ありませんよ、オーウェンさんは恩人ですから」
さてと、誕生日パーティーで費やした時間にやるべきはずだった仕事が残っている。
今からやっても、片が付くのは深夜二時くらいか。
本部ビルの最上階からエレベーターに乗り、一階下の宰務室兼、自室に戻った。
コートと上着を立て掛け、空調の整った室内で多機能な専用机に向かった。
手前にあるとってを上にやると、冒険者ギルドの情報端末が開き。
青白いモニター越しにギルドに所属する冒険者からの報告に目を通す。
今日は彼らの報告全てに目を通し、評価を付けて報酬の対応をして。
それでおしまいかな。
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