生放送！ ＴＳエルフ姫ちゃんねる

４．エルヴンダート

　俺の放った銃弾が敵の眉間に穴を開けた。その一撃をもって、この廃墟に残る生物は俺だけとなった。

「勝った」

上位チャット：おー

上位チャット：おめでとう

上位チャット：やられたーｗｗｗ

上位チャット：フラグ、ちゃんと仕事して

上位チャット：でも、あまり嬉しそうじゃないな

上位チャット：三戦目でようやく初勝利なんだから、もっと喜んでどうぞ

「喜んでるぞ。計算が面倒だったけど」

上位チャット：計算してたの？

上位チャット：確かにヘッドショット三回全部命中してたけど……

上位チャット：これって計算するゲームだっけ？

上位チャット：狙撃でも割と直感で撃つよ

「直感で撃つと弓の着弾点になるから……む」

上位チャット：どうしたの？

「このゲームに弓はないのか？」

上位チャット：ある

上位チャット：一応ある

上位チャット：最低レアだから初期武器にも含まれてる

「弓使う」

上位チャット：えー、やめといたら？

上位チャット：弓は控えめに言っても使えない武器だよ

上位チャット：そんなにひどいの？

上位チャット：弓も初期武器だから精度はいいんだけど、風にめちゃくちゃ影響受ける

上位チャット：山なりに飛ぶし飛距離もそこまでない

上位チャット：一発一発リロードが必要

上位チャット：要するに、本当に弓矢です

上位チャット：プレイヤーなら一度は試して、弓が廃れた理由を実感することになる

「よし、第四戦行くぞー」

上位チャット：本当に行くのか

上位チャット：どうなっても知らんぞ

　そろそろ見慣れてきた廃墟街手前の丘に降り立つ。メンバーは変わらない。

上位チャット：どうするの？

「まずは試し射（う）ち。目標はドアノブ。距離は九七メートル」

上位チャット：また細かい数字が

「えい」

上位チャット：左上に大きく外れたな

上位チャット：これが普通

　思ったより張力は高くて風は弱いみたいだな。調整にもう一射。

「やあ」

上位チャット：え

上位チャット：は？

上位チャット：ドアノブに当たったぞ、おい……

　もう一丁、今度は山なりショット。

「とう」

上位チャット：当たった……

上位チャット：またドアノブに

上位チャット：かなり上に射ったよな？　射ったよな？

上位チャット：すげー

「飛び方わかったから行く」

上位チャット：待って待って待って！

上位チャット：おかしいからおかしいから！

上位チャット：シャレになってないんだって！

上位チャット：銃でもやったのでは？

上位チャット：そうか、プレイしたことないとわからないか……

上位チャット：解説プリーズ

上位チャット：このゲームをやったことあるなら、ヘッドショット三連発した時点でエルフさんは初心者ロールプレイしてる熟練プレイヤーだろうと推測できるんだ

上位チャット：もしくは、うまい人が代わりにプレイしてるってね

上位チャット：ところが弓となると話が変わる

上位チャット：使えない武器だと言われてる弓だけど、ロマンはあるから使う人は多いし弓専のプレイヤーだっている

上位チャット：でも、そんな人ですら、なかなか命中しない

上位チャット：弓道でやるような理想的な条件での直射はまだしも、曲射なんて……風の影響何秒受けるか考えたくもない

上位チャット：ということは、

「よし、二人目」

上位チャット：今、建物越しに弓でヘッドショット二連発した彼女は……？

上位チャット：こいつ人間じゃねぇ！

上位チャット：エルフだ！

上位チャット：なんだ、配信タイトル通りだな、解散

上位チャット：違う合ってるけど違う

　仲間二人が立て続けに倒れたことで慌てたのか、無用心（ぶようじん）に背中を晒して逃げる最後のひとりにも、スコンと的中。勝利。

「弓最強」

上位チャット：なんで当たるの？　なんで当たるの？

上位チャット：チート……でもないよな、矢の軌道は自然だったし

上位チャット：吸い込まれるみたいに頭が当たりに行った

上位チャット：動きを先読みした……？

上位チャット：そんなことできるの？

「やっぱりエルフは弓適性ある」

上位チャット：弓適性……弓適性？

上位チャット：そんな一言で済ませていいのか、これ

「もう五時か。そろそろ夕飯作る」

上位チャット：終わりか

上位チャット：残念

上位チャット：次の配信はあるの？

「また配信するぞ。ちゃんと瓶底メガネにしなきゃいけないし」

上位チャット：やったぜ

上位チャット：エルフの目が悪くなっても、あなたの体は目が悪くならないのでは？

上位チャット：エルフさん（本体）とばっちりｗ

　　　――この配信は終了しました――

上位チャット：あ

上位チャット：切り方ァ！

上位チャット：せめて何か言ってけ