フェチな女(男の娘)たちとのお互いを満たしあう退廃的青春エロコメ

カントリー・パーム

第1話 まずは場所のセッティング

 




 学校の裏庭にある古びた倉庫。その中には、佐藤健一の他に知る者は少ない秘密の空間が広がっていた。






 そこはどこか安心できる、自分を包んでくれる場所。






 他人と分かり合うことができない自分を許してくれる場所。






 今も、そんな場所に自分を許してもらいに人が来る。






 ―――――――――――――――――――――






 ここを知ったのは2か月ほど前。






 見つけたのは偶然で、お昼ご飯を食べるのに静かで人の邪魔が入らない場所を探して学校の敷地を散策していた時だ。






 俺の学校は中高一貫の私立で、なんでも歴史だけは非常にあるらしい。


 学校の場所が山の近くであり、さらに古いだけあってその敷地は非常に広く旧校舎なんてものもあった。






 なんでも明治あたりに建てられた~なんてうわさも聞いたが、真偽は不明だ。






 本校舎とはグラウンド縦一個分ほど離れた場所に旧校舎が併設されているのだが、そこはいつも少し雰囲気が怖くて寄り付いていなかった。






 しかしその時は妙な気分になっており、まぁええかの精神で中に入った。


 そのままの気分でずいぶんと奥まで入ったときに、それを見つけた。






 その倉庫は学校の敷地のギリギリに設置されており、敷地の外は森。


 周りはツタやクモの巣などで覆われており、普通に通りがかっただけでは気づきにくいほど視認性が悪い。






 中を確認してみると、中身はそこそこ狭かったが一人で扱う分には問題ない大きさだった。


 だいたい6、7畳ほどだろうか。






 しかし昼ご飯を食べる場所にしては埃っぽ過ぎたために、最初の一週間はご飯よりも掃除がメインになった。






 まず全体的なほこりを落とし、わざわざ濡らしたぞうきんを三枚ほど持ってきて床と壁をふいた。






 幸いこびりついた汚れは数えるほどしかなく、この倉庫がいかに使われてこなかったかを物語っていた。






 少し違う話をするが、自分は基本的に面倒くさがりな性格なのだが一度始めてしまったことに関しては妙に凝り性なところがある。






 まぁつまり、ここまで時間と労力をかけて倉庫を掃除したのだから、思い切ってもっと快適に使うために改造でもしようかと考えたのだ。






 まず、より他の人に見つかりにくいように隣の森から葉付きの枝やツタなんかを大量に持ってきて、違和感のないようにテープなどでくっつけた。






 より風景に溶け込むように工具店で緑色のスプレーを買い、見様見真似の迷彩も施した。






 中身の壁はしっかり錆びたトタンだったので、錆が見えないようにベニヤ板を買いマンション用の貼ってはがせる安い壁紙を貼った。








 そんなことをしていたらもう2か月もたっていた。


 今日は予定していた改造がすべて完成する予定日だ。






 今日は中で座るための床と、机と椅子なんかを用意した。




 床に座る予定のため椅子はいらないかな、とも思ったが、まぁものを置く場所になったりと何か必要になるときが来るだろうとついでで買った。






 今は放課後。遠くのほうでサッカー部が練習している音が聞こえる。






 トタンの屋根に空いた穴から差し込む木漏れ日のような照明が気持ちいい。






 持ってきた魔法瓶に入った熱めの緑茶を飲みながら






「屋根、雨が降ったときのためにどうにかしなきゃなぁ…」






 と独り言をこぼしながらゆったりとしていた。






 これぞ求めていた平穏。


 まるでこの倉庫の中だけ外界と隔絶されているかのように感じる。








 そのまま緑茶のあったかさと神秘的な場所の雰囲気に飲まれ、いつしか俺は寝てしまっていた。










「…………ん、やべ。寝ちまってた。」






 はっと目を覚まして体を起こす。




 こんなこともあろうかと、床の材質はふっくらしたクッション生地なので体はどこもいたくない。






「…今何時だ。」






 スマホの時計を確認すると、時刻は18時40分。




 うちはちょっと事情があって、夜遅くに帰っても誰にも文句を言われないため何も問題はない。




 むしろここに泊っていきたいほどだ。






 あぁ、事情なんて大したものではないよ。




 うちは親がまったく家に帰ってこないんだ。




 何をしているかは知らないし、知りたいとも思わない。


 なーんにも言わずに生活費だけは置いといてくれるからこっちも何も言わずに放置している。






 まぁ風呂には入りたいし帰るしかないんだけどね。






「しょうがない、帰るか。」






 そこら辺に置いておいた荷物をかたずけ、倉庫のドアを開ける。






 そのまま帰ろうとした、その時。






「あら?ここでなにをしているの?」






 突然声をかけられた。






 あまりに想像もしていなかったことが起き、ビクッと大げさなほど反応してしまった。






「ちょっと、何をしているのよ。」






 質問を繰り返しているのは、おそらく女子。




 こんなとこで黙っていたら先生でも呼ばれてしまうかもしれない。






 仕方がないから素直に返事をした。






「いえ、ちょっと一人でゆっくりしていたら寝てしまって。今起きたので帰ろうとしていただけです。」






 その言いながら相手の顔が見えるところまで歩いていく。






「なーんだ。あなたうちの生徒だったのね。てっきり不審者かと思ったわ。」






 そいつは非常によく知った顔だった。


 まぁ一方的にだが。






 そいつの名は黒崎玲奈くろさきれな。俺のいる心和中学の生徒会長をしている。






 言っていなかったが、この学校の名前は心和。




 この学校は生徒会の構造が少々珍しく、中学と高校で別々の生徒会長が存在する。




 それ以外は普通の学校だ。




 あ、ちょっと校則が緩いとこもあるかも。






 さて、無駄話はせずにそそくさとこの場から逃げるとしましょうか。






「ん?ちょっと待ちなさい。この先に寝れるような整った場所はなかったはずよ?あなたいったいどこで寝てたの?」






 まっずい、どうにも言い逃れできない疑問を持たれてしまった。






「いや、そのー…」




「その、なに?何もなかったわよね?」






 なんか妙に疑われている気がする。


 俺は何もしていないのに。






 なにも、倉庫の改造だけしか。






 十分怒られるわな。






 うーーん、どうにも言い訳を思いつかない。


 どうしようか……








 …だめだ、何も思いつかない。


 仕方がない、正直に話すしかないかなぁ。






 正直使っていない旧校舎の、さらに使っていない倉庫を改造しただけでそこまで怒られるとは思わない。




 もしかしたら会長も注意だけで済ましてくれるかもしれない。






 よし、そう思ったら何とかなりそうな気がしてきたぞ。






「…実は、この先の倉庫の中で寝ていました。」




「倉庫?そんなのあったかしら…というか、そんなところで寝ちゃダメじゃないの。


どんなところ?案内しなさい。危なかったら取り壊してもらわなきゃいけないかもしれないから。」






 あぁ…終わったかもしれない。






 でも仕方がない、俺がいかにこの倉庫が必要かを力説すれば会長も許してくれるかもしれない。




 おそらく10%も確率はないだろうが、賭けるしかない。






 そのまま会長を倉庫まで案内する。






「うわ、何このツタの量。肝心の倉庫がまったく見えなくなっちゃってるじゃないの。」






 他の人から見ても俺の作った迷彩が働いていることが確認できてうれしい。




 ちょっといい気分になりつつ倉庫のドアを開ける。






「……な、なにこれ。」




「何って、倉庫です。」




「こんな倉庫ないわよ!なにこれ、部屋みたいになっちゃってるじゃない…」






 会長はくるっとこっち振り返って言った。






「これ、全部あなたが…?」




「はいそうです。」






 即答すると会長は少し悩んだような顔をした。






「その、なんでこんな大掛かりなものを?」




「…自分はクラスでちょっと浮いた存在でして。


お昼ご飯とか放課後とか、リラックスしながら過ごしたいなーって思ってたらちょうどこの倉庫を見つけたんで自分好みに改…リフォームしたんです。」




「す、すごい熱量ね…。自分のためとはいえ、こんな空間を一人で作ってしまうなんて。」




「はい、自分はすごくこの場所が気に入っています。


この場所は学校のしがらみとかストレスとかから解放してくれる唯一の場所なんです!どうか、取り壊したり言いつけるのはやめてください……!」






 しっかりと会長に向かって頭を下げる。




 こういうのは躊躇したほうが負けだ。情に訴えるようだが、あながち間違ってはいないので大丈夫だろう。






 会長はずっと考えるようなそぶりを見せて






「…………うん、わかったわ。」




「! わかってくれましたか!」




「ただーし、これを見逃すのに一つ要求があるの。」




「な、なんですか?」






 そういうと会長はおもむろに俺と目を合わせて」




「私も放課後にここを使わせなさい。」






 ………。






 えー。








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