第6話

3店舗回ったけど、画材なんか売ってなかった。

筆どころか、紙すら売ってない。

唯一見つけたのは羊皮紙だけど、買えるような値段じゃなかった。


歩きながら考える。

そりゃ金持ちの道楽なら一般的には販売してないよなぁ。

紙の無かった時代はどうしてただろうか……。


そうだ! 木だよ! 木の板!

ほら、細切りした竹に文書を書いたりしてたじゃん! 三国志で見た!

あれだと湾曲してるので、木の板が良いんじゃない?!

向かうは建築現場だ!



はい、こちらは建築現場です。

屈強な髭面のオッサン達が、家を建てています。

怖くて近寄れません。もうちょっと様子を見てましょう。


「おい、おめぇ、何見てんだ」


あっ、見つかりました!

ここで中継は終了です! さようなら!


「おめぇに聞いてんだがな」

「ひゃい!」

「いや、だから、何してんだって聞いてんだがな」

「親方の顔が怖ぇからビビっちゃってんですよ!」

「うるせぇ! 働け!」

「へいへい」


どうやらこの人が親方らしい。

よし、話すぞ。話す。話せ。話せたら良いな。


「どうした?」

「え、えっと、実はですね……」

「ちっちぇえ声でボソボソ話すな。聞こえねぇよ」

「い、板、板をですね、分けてもらえないかと……」

「板? 別に良いが、何に使うんだ?」


おおっ! 通じた! 蛮族では無いようだ(失礼)


「絵を描くんですけど」

「絵? あぁ、図面か」

「へ? あ、そうです! 図面とかです!」


そうだよ! 建築するんだから設計図があるじゃないか!

って事は図面があっても不思議じゃない!


「ちょっと待ってろ」


そう言って、親方はこの家の図面を持ってきてくれた。

図面は板に直接描かれていて、サイズは1m×50cm×1cmくらい。

顔料は……墨汁? いや炭か?


「こんなのが欲しいのか?」

「は、はい。大きさは半分くらいで良いですけど」

「何枚くらい要るんだ?」

「そ、そうですね。とりあえず10枚くらいで……」

「それくらいならここにもあるな」


やったぜ! 板ゲット!


「少し聞いても良いですか?」

「おい! そこの板を10枚ほど持って来い! ん? 何だ?」

「壁に何を塗ってるんですか?」

「ああ、これは白い石を焼いて砕いた物に糊を混ぜた物だ。俺達は漆喰って呼んでるがな」


ほうほう。漆喰ですか。

あっ! 見た事ある! 古い日本家屋とか蔵の壁に塗ってあるヤツだ!


「その漆喰は余りませんか?」

「余るが、何すんだ?」

「板に塗るんです。白いので、そこに図面を書いたら見やすくなるでしょう?」

「確かに見やすくはなるけどな。だが衝撃でひびが入るぞ?」


衝撃には弱いのか。

まぁ、飾るには問題無いかも?


「とりあえずその10枚に塗ってもらえませんか? それを買います」

「まぁ良いけどよ。乾くのに時間がかかるから、完成は明日以降になるぞ?」

「判りました。明日また来ます」

「おう。おっと、金払ってけよ」

「あ、はい」


完成品と引き換えじゃなかった。

そりゃそうか。信用無いもんな。

時間使って作っていながら、取りに来なかったら損するもんね。


材料費・施工費で1枚10トルで合計100トルだった。


そうそう、お金だけど、単位はトル。1トル100円くらいなイメージ。

十進数なので計算しやすい。


ちなみに単位だけど、色々な店を回って判明した。

1m=1メール、1g=1グレム、1kg=1ケログレム、というパチもんな単位。

異世界と言うよりも平行世界なのかもしれない。

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