第4話

作戦はなんとか成功した。


熊も戦った後だし、取りやすい獲物を狙いたかったのだろう。

頑張って追いかけてくれた。


しかし、味はどうなんだろうか? 美味しかったのかな?

鉛筆でスケジュール帳に描いたから、鉛筆の味とか紙の味だったらガッカリじゃない?

魔力に余裕が出来たら、一度食べ物を描いて実食してみよう。




周囲の警戒をしながら、川沿いを下ってると橋発見!

木製の橋だけど、これで少なくとも橋が作れる程の文明と種族が居る事が判明した!


橋から伸びる道は、川沿いに伸びていて、このまま進めばどこかの街か村に着くだろう。

道には轍もあるので、乗り物もあるようだ。


出来れば線路もあればいいな。それくらいまで文明が発達してて欲しい。

まぁ、ラノベの挿絵を描いてた経験からすると、中世ヨーロッパだろうけど。




もう周囲が暗くて見えなくなる頃、やっと街に到着した。


……うん。想像してたよ。塀で囲まれていて、門が閉まってる事ってさ!

門番も居るし、よく見れば塀の上にも人が立ってる。

松明も焚かれていて、近づいたらすぐにバレるだろうなぁ。


どうしたものか。

描いてたラノベでは「身分証の無い田舎から来た」とか言えば入れてもらえるんだけど。

通用するか? 服装も明らかに怪しいし。武器防具も持ってない。

商売で来たとしても、商品を持ってない。


「商隊で来たけど、獣に襲われて逃げてきた」ってのはどうだ?

……ダメだ。どの辺だ案内しろと言われたら詰む。


熊の時のようにウサギ作戦は?

……1日の使用量オーバーだったわ。

それに増援されたら侵入不可能だ。


買収?

その金は? 現金無しで異世界に送るのは止めてもらいたいよね。


現状、金無し・武器無し・防具無し・商品無し・身分を証明するもの無し。無し無しですよ。


万が一クソ優しい人で、入れてくれるとしても、もし鑑定されたら終わる。

大人でGだらけなんて、怪しさMAX!


実は考えないようにしてたけど、成功率が高い方法はある。

単純な事で、朝を待つだけ。

門は開くだろうし、人も出入りするだろう。


では何故その方法を選ばないか。

これも単純で、、、貴方は見ず知らずの場所で、暗闇の森の中で一晩過ごせますか?って事。

キャンプもした事無い、都会暮らしの引きこもりナメんなよ。無理!

はい。だから入りたいんです。人里サイコー。


う~む……手持ちの物で何か方法を考えなくちゃ。




これまた悩む事、30分。


1つだけ成功しそうな方法を思いついた。

成功する確率は30%くらいだろ思う。

いやね、もうね、失敗して牢屋に入れられても良いかなって思い出してる。

だって牢屋でも街の中じゃん。自由は無いけど、現在既に不自由だし、あまり変わらないかな~と。


俺は油性マジックを手に、作戦を実行した。




「た、たすけて……」

「何者だ! 両手を上げろ!」


良かった。言葉が通じた。第一関門突破だ。


俺はそのまま、その場で倒れる。


バレないようにチラ見をすると、門番の一人がこちらに近寄ってくるのが見えた。第二関門突破。


「変な格好をしているな……。おい、大丈夫か?」

「み、水……」

「……ほら、これ飲め」


腰から革袋のような物を外して差し出してくれた。第三関門突破。


俺は差し出された手を左手で握り、右手に持ってた油性マジックで○Cを相手の手の甲に描いた。


「友達ですよね?」

「ああ、俺とお前は友達だ」


まさかの成功です! レベルアップしないかな。



種明かし。


遠くからこの門番の絵を描いておいたんだ。

そこに注釈で「林響也とは昔からの友人。悪ガキ仲間だった。あだ名はボブ」と書いた。


門番になるくらいだから、ある程度は信用されてるだろう。

それの友達なら、捕まっても悪いようにはしないだろうという、打算的な考え。



俺はそのままボブ(仮)に肩を借りて、門の所まで連れて行ってもらった。


「こいつはキョウヤ。俺の昔からのダチだ」

「おいおい、だからって勝手に連れてきて良いのかよ?」

「大丈夫だ、俺が保証するって」

「……まぁ良いけどよぉ」


すげーな具現化。

言っても無いのに俺の名前を知っている。

こんな事なら、もっと沢山注釈を書いておけば良かった。


「しかし……キョウヤだっけか? 変な格好してるなぁ」

「こいつは昔からこんなんだぞ。人と違う事をしたがるんだ」

「……あぁ中二病な。今でもかよ。ある意味尊敬するわ」


すげーな具現化。

自動的にディスられたぞ。

言い訳を考えなくて済むけどさ。可哀想な者を見るような目はやめて下さい。


「しかし、何でこんな夜に?」

「目覚めたら川辺りに寝てたんだよ。頭も痛いし……」

「……誘拐か? 何か盗られた物は無いか?」

「一文無しになってる……」

「マジか?! こりゃ近くに盗賊が居るかもな」

「可能性はあるな。ちょっと警戒レベルを上げるように言ってくるわ」

「頼んだ。俺はキョウヤを詰め所まで運ぶわ」


適当な言い訳が通ってしまった。

ボブ(仮)、いいヤツだなぁ。出来れば食事もお願いします。

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