樹鳴
リア
第1話 噂
「なぁ知っているか?」
「え、一体何を?」
放課後、いきなり友達に主語のない言葉を掛けられた。
急に知っている? って言われても分かりしない、一体何の話だろう?
目の前の席に座っている友達はこっちに振り向き、言葉を紡ぐ。
「最近噂になっている
樹鳴、それはここ最近ネットから世間にまで広がった、特に僕たちみたいな学生には興味津々な話。
実際、少し前まで興味を持っていたが、ネットの反応や体験談を見て、その話題から離れていた。
だけど、またこの話題と対面することになるとは思いもしなかった。
「黒霧、その話題は知っているし、少し前まで調べていたよ」
「どうして今、その話をするのかって言いたいのだろう?」
目の前にいる同年代の男子である――黒霧悠人、クラスメートでありながら友達。
黒霧は悪戯っ子ような笑みを浮かべると、僕にスマホを見せてくる。
どうしたんだろうと思い、スマホの画面を見る、映し出されていたのはネットニュース。
調べればどこにでもありそうなニュース。だが、僕は書かれている内容にど肝を抜かれた。
画面と黒霧を交互に見る。
すると黒霧は口を開いて言う。
「あの噂は本物で、ネットに書かれている体験談は全部嘘ってことだ!」
両手を広げ、嬉しそうに語る――友人を見て、僕は少し恐怖を覚えた。
一体何が嬉しいんだろう? このニュースが正しいならば結構な問題となる。
それでも彼は大袈裟なジェスチャーをして喜んでいる。
だんだんと背筋が凍ってくる感覚が分かる。次にどんな言葉を発するかも分かる気がした。
『樹鳴の真相解明をしよう』
あ、やっぱりだ、最悪なことに僕の予想は見事に命中してしまった。
肩を竦めていると、ポンっと手が置かれ、顔を上げるとニコニコな友人がいる。
その表情を見て諦めた。彼に説得は通用しない。
かつて心霊スポットに何回も連れて行かれた経験で分かる。
「そもそもどうして真相解明をしたいの?」
「え? 有名になりたいから、まず考えてみろよー今ではニュースにもなっているホラー現象。それの真相を解明してみろ! 一体どうなる?」
「前代未聞の発見として有名にはなれる。youtubeとか使えば尚更」
「正にその通り、お前も元々そういう活動をしてみたいって言ってただろ?」
確かに言った。黒霧に相談したこともある。けれど、内容が思い付かず何回も断念してきた。
逆に言えばチャンスなのかもしれない。
このネタを使って、動画や配信をしている人は何人もいる。
しかし全て憶測や考察に過ぎないものばっかりだ。
もしここで僕らが真相解明をしてみろ! 絶対にバズるし一躍有名人と変わる。
だったら答えは一つ。
「やるよ。僕この現象である樹鳴の真相解明する!」
「そうこないと面白くねぇよな相棒!」
黒霧は肩を組んでくる。そこから僕たちの行動は速く、その場でチャンネルを作り、初投稿をした。
◇
自室のベットでスマホを弄り、ある動画を見ていた。
ニュースの大本となった動画、それを見て……思ったことは真相解明するには相当な時間が必要。
いや違う、まずネットで色々と情報を集めた方がいい。
保険を立てるな、自分で挑むと決めたことを逃げては元も子もない。
黒霧にメッセージアプリで連絡を取る。
『まずは情報取集しよう。僕なりにやってみるからそっちもお願い』
送ってすぐに通知が鳴り、返信が来ていた。スタンプが送られてきた。
明日は土曜日、調べるには十分な時間がある。最悪明後日も使えばいい。
黒霧の発言通り、体験談の全てが嘘ならばゼロからスタート。
「かつて僕が調べていたまとめのサイトや掲示板は使えない」
うーんと頭を悩ませる。余計な情報が脳内を圧迫しているから考えがまとまらない。
「全く思い付かない」
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