file.2 ウィグナーの姉妹
41 緒言
ざく、ざく。
夜の公園に一人分の土を掘る音が
汗で肌に張り付く
「
死んだものは。
小さいころからそう、言われてきた。
飼っていたランチュウが
死んだ生き物はすぐに埋めなくちゃいけない。そう教わってきた。
生き返らないように深く埋めてあげなくちゃいけない。
「はぁ、」
夏の夜汗がにじむ額を手の甲で拭う。でも背筋が寒いのはこれが冷や汗だから?
けれど、スコップに伝わる重みは明らかに土だけのものではないことに気づいて、響子は
大丈夫。大丈夫。私はただ成仏できるように埋めてあげただけ。何も悪くない。
「……どうして、私が埋めないといけないんだっけ」
スコップを持つ手を止める。
「そう……そうだわ」
何もない私はいとも簡単に一人になってしまうのだ。
──お父さんとお母さんが、僕のほうに両手を差し出すのが見えた。お母さんの口は、そのときたしかに、僕の名前を呼んでいた。三年ぶりのことだな、と、最後に思った。
(
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