土塊のペアレント

異界ラマ教

プロローグ

第0話 ゴーレム

ゴーレムとは、


世界を変えた大天才と称される魔術師ラヴィ・レイヴンによって開発された、土を利用した人形作成技術である。


その開発はこのブルヴァタ大陸の魔術基盤を完全に塗り替え、生活様式から戦争戦略までのあらゆる分野を一新させた。



戦争で傭兵や騎士が先陣を切っていた時代は終わり、土塊の巨人を先頭に置き、造形師と呼ばれるゴーレム専門の魔術師を主軸とした戦略が主となっていた。



農業や工業においても、どれだけ効率的にゴーレムを運用できるかを主軸にしており、労働者はせいぜいの所細かい作業や微調整を行うだけになっていた。



文明開発においても、器具や武器の開発はほとんど打ち切り、ゴーレムの動きや機能のアップデート、量産における魔術の効率化に捧げられていた。



誰もが口を揃えて言う。


便利な世界になったと。


ゴーレムの技術は我々の誇りだと。



しかし、誰も苦しむ者がいることには気付いてはいなかった。



そして、ゴーレムの誕生から200年。



小さな一つの声が聞こえた。



『たすけて』



その声に呼応するように、次々と声が聞こえ始める。



『たすけて』


『たすけて』



『たすけて、おかあさん』



───その日、ブルヴァタ大陸で観測史上初の大地震が起こった。



ゴーレム技術による弊害だとか単なる自然現象だとか天変地異の前触れだとか、様々な説が囁かれる中、一人の浮浪者がぽつりと言った。



「神の怒りさ」



地底の奥の更に奥。


閉じていた瞳が開かれる。



「───私の子供を、泣かせたな?」



一人の母親が、愛する子供のために立ち上がった。

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