プロローグ

 20XX年——。


 世界は急速な変化を遂げていた。テクノロジーの発展に伴い、人々の生活は便利になり、同時に新たな問題も浮かび上がってきた。「子供の将来をどうするかだ?」

 社会の複雑化に伴い、個々の将来を決定するための制度が必要とされた。そして、政府は一つの答えを導き出した。それが「進路対策基本法」

 

 通称「推薦法」であった——。


 推薦法は、個人の特性や適性を政府が分析し、最適な進路を推薦するというものだ。この制度は、将来の不安を抱える若者たちにとって、一つの希望の光とも言えた。しかし、それは同時に、個人の自由な選択を奪う危険性もはらんでいた。


 都立光高校の三年生、西園寺さいおんじりんは、この推薦法によって未来を決められることになるとは思ってもいなかった。彼女は、ごく普通の高校生として、日々の生活を過ごしていた。友達と笑い、勉強し、少しだけ未来に不安を感じながらも、何も特別なことはないと思っていた。


 だが、そんな平穏な日常は、突然終わりを迎えることとなる。

 ある日、教室の扉が開き、一人の転校生が現れた。

 彼の名前は神宮寺じんぐうじたくみ。静かで落ち着いた雰囲気を持ち、どこか影のある彼は、凛の隣の席に座ることになった。

「神宮寺匠です。よろしくお願いします」匠は軽く頭を下げ、微笑んだ。その微笑みの裏には、何か秘密が隠されているようだった。


 凛は最初、彼をただの転校生だと思っていた。だが、匠の瞳に映る冷静な光は、何か特別な使命を帯びていることを示唆していた。彼の秘密が明らかになると共に、凛の運命は大きく動き出すことになる。

 神宮寺匠は、政府から派遣されたエージェントだった。彼の任務は、凛を密かに推薦し、未来の重要な役割に導くこと。だが、凛がこの事実を知った時、自らの未来を選ぶために行動を起こすことを決意する。


 その日から、凛の平凡な日常は一変し、彼女は自らの運命と向き合うことになる。推薦法の影響を受けた世界で、凛は自分の未来を自分で切り開くための戦いを始めるのだった。


 そして、彼女は、彼をこう呼ぶようになる。


 “推薦の神”と——。


 これは、未来を自らの手で選ぶために立ち上がった一人の少女と、その運命を共にする青年の物語。痛快・非日常系学園ストーリーの幕が、今、切って落とされる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る