第11話 さっきの話、実を言うとね――
その日の昼休み。
中庭には二人以外にもいて、近くから話し声が聞こえてくる。
昼食を取っている気分に浸りながら、啓介はイチゴジャムパンの袋を開封していた。
左隣にいる莉子の姿をチラッと横目で見てしまう。
隣にいる莉子は弁当を持ってきたようで、膝の上には弁当箱を乗せていた。
彼女は弁当箱を開ける。
その中身は一般的で、卵焼きやウインナーなどが引き詰められていたのだ。
野菜も添えられており、磯鮮やかな構成で、基本的に冷凍食品となるモノは入っていない。
すべて自力で作ったであろう本格的な弁当であった。
「どうしたの? 私の弁当が気になる感じ?」
「う、うん……」
莉子から不思議そうな目を向けられている際、啓介は少々悩み込んだ顔をしていた。
聞いた方がいいのか。
だよな……聞いた方がいいに決まっているよな。
悩んでいるくらいなら、ハッキリと聞いてしまった方がすっきりすると思う。
だから今、彼女と昼食を共にしている。
グッと心の中で力を入れ、勇気を持って発言する事にした。
「えっとさ」
「難波君は食べたいものでもある?」
莉子は箸を手にしていた。
「その話じゃなくて……今週中の休みって何かあるのかなって」
「今週中? そうだね。さっき会話していた事なんだけど。運動部系の人に誘われて。マネージャーになってほしいって言われたの」
「マネージャーの誘い?」
「そうだよ。一か月前から提案されてて。でも、なかなかそういう気分じゃなかったんだけど。どうしてもって事で。今週中なら見学程度ならいいよって話してたの」
「そ、そうだったのか」
啓介が抱えていた悩みが解消された瞬間だった。
安堵して胸を撫で下ろし、軽く深呼吸する。
「私、マネージャーになった方がいいのかな?」
「え……ど、どうだろうね」
啓介は彼女が男子部員らのマネージャーになっているところを想像すると、モヤモヤとした感情に襲われる。
運動系の人らは体格も良く、絶対に恋愛的な意味合いでも啓介では太刀打ちできないと思った。
だからこそ、莉子にはマネージャーにはなってほしくないというのが、啓介の本音だった。
「で、でも、月見里さんはやってみたいの?」
「私はどっちでもいいかな。でも、そんなに部活とか好きではないから。昔は文化部には所属してたんだけどね。高校になったら自由に行動したいと思って、入部する気は全然なかったよ」
「そうなんだ。月見里さんがやりたくないなら、ハッキリと断った方がいいと思うよ」
「そうだよね。でも、断ってばかりもいけないし、今週中に一回行って、それから決めようかなって。難波君もそれでいい?」
「月見里さんがそれでいいなら……」
誰かに奪われてしまうのではと、心配ではあった。
やっとできた彼女。ここで手放したくないという嫉妬心に駆られているのだろう。
嫉妬心なんてよくないと思い、啓介は引きとめる事はしなかった。
二人は今日の放課後の事についてやり取りしながら昼食を取り始めるのだった。
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