第68話 心配性な二人ですが、なにか?
「不機嫌さん?」
と、問うと、
「かもしれない」
と返ってくるしどー君。
その原因は明日、妹が合コンに行くとグループラインが来てからずっとだ。
というか、妹を好きな人が居ると言ってからこんな感じだ。
学校でのお昼からもそんな調子で、彼氏さん大丈夫? と委員長妹に聞かれるぐらい顕著に出ていた。
家に帰宅した後、勉強し始めたが、しどー君の手はピタリと進んでいない。
「そんなに気になるなら、しどー君も参加したら? 合コンみたいなものだしいいんじゃない?」
しどー君の嫉妬心にニヤニヤを浮かべながら、課題の数学を進める。
最近は判らないところをしどー君に聞くことも少なくなり、応用でなければ基本解けるようになってきた科目だ。
「この課題みたいに、自身で答えを出していけるのが一番さ……」
「と、言いながら表情は苦虫を噛み潰したようよ?
心の整理がついていないのは解るけどねー。
しどー君自身が答えを出せないのは皮肉か何かよね」
突き付けてあげると、しどー君が頭を抱える。
珍しい。
「そういうマジメガネな所も好きだけど、少しは柔軟にね?
しどー君が後悔しないようにしたらいいのよ」
虐めすぎたと謝罪の代わりに、側に寄り、抱き締めてあげる。
「……初音、ありがとう」
「うん、よろし」
離れると、しどー君は自分の手を進め始める。
勉強する時はする。
私たちだって学生だし、お互いに目指すべきところはあるのだ。
「明日、学校終わったらデートしよう」
しどー君がパタンと自習用のテキストを閉じるとそう提案してきた。
私もしどー君作成テキストが終わった所で丁度いいタイミングだった。
「しどー君からデートの誘いは珍しいわね。
買い物はさておき」
大抵は私から誘う。
しどー君の趣味は、言ってて凄いなこの人と思うが勉強……っと読書であり、基本的に外に出るような趣味を持っていない。
運動の趣味と言えば、夜のプロレス以外観たことが無い。
クラスでは平均成績で卒なくこなしてはいるが、得意と言うほどでもない。
高校トップレベルの記録出してたりする上位連中、すなわち委員長と野球部がオカシイので、平均であるしどー君でも全国高校レベルで見れば上程度にはなるかもしれない。
さておき、
「つまり、妹をストーカーするのね?」
「そうだが?」
「前科一犯が開き直ってるわね……」
嘘はつけないマジメガネである。
私の時もそうだが、この彼氏、目的の為なら手段を選ばない傾向が垣間見えている。
もしもの場合は、私がストッパーになる必要があると意識しておく。
「……個人情報って概念知ってる?」
「大丈夫だ。問題ない」
既にタガが外れ始めている気がする。
「もし不安なら家族の同意を取るが?」
「家族ってパパママ?」
「初音さ」
ズズイっと近付いてくるしどー君。
「いいよな?
ダメだと言ったら、良いと言わせるまでするけど」
「ちょ、ちょっと待って、するって」
「体に言い含めさせる。
この前以上に」
「この前って……」
「僕のモノだと言わせた時のさ」
顔が笑っているが、眼元が怖い。
ガチでこれはその選択肢がマジメガネの脳裏に浮かんでるやつだ。
肩を掴まれる。
「私、壊れちゃうわよ……あれ以上は……♡」
まだ明日は金曜日、まだ明日は金曜日、まだ授業が一日あると気分を落ち着けるために唱える。
「僕だって、手段の為にそんなことはしたくない。
初音を求めるのは初音だからであって、それ以上ではない。
けれども、初音がなー、ダメだって言うんだもんな。
仕方ないよな?」
悪魔の囁きとはこういうことを言うのだろうか。
プレイの一環として楽しむのは有りではないかと、無茶苦茶にされてしまいたいという私がムクムクと沸きつつも、理性がそれを押しとどめる。
「あー、もう。
燦ちゃんをストーカーするのは私も賛成!
だから、いつものしどー君に戻って!」
「ありがとう。
あと、ごめん。
ちょっと行動的になってた」
「ちょっとじゃないわよ、ちょっとじゃ……♡」
ドキドキしている心臓を抑えながら私は晩御飯の準備に取り掛かる。
そしてラインを燦ちゃんに送り、計画内容を聞くことにした。
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