第2話ー① 「どうにかなるさ」
6月の某日。あたしと羽月の2人は、夕刻の公園で泣き合った帰り道での出来事。
羽月はあたしに質問をして来た。
「ねぇー、点数教えて。勉強するには、どれ位か知りたいんだけど」
「あっ、それはそうなんだけど、そのあれが、そのぉ」
「ハッキリ言って」
「分かんない。過去は振り返らないタチなんで」
羽月の表情は険しく、あたしを睨んでいた。
「嘘じゃないでしょうね?」
「本当だよ、信じてよ」
テストの点をいちいち覚えている程、あたしの容量は割いていられない。
「分かった。じゃあ、明日教えて」
「それじゃだめ!」
「何でよ、もう遅くなるし」
「今すぐ、ウチへ行こう。ウチにあるはずだから。それがいい、その方がお得だ」
「でも・・・」
「ウチでご飯食べて行きなよ、親御さんには連絡してね。そうとなったら、善は急げ、さぁ行くぞぉ」
「何で、そんなにテンション高いの?これから、テスト見せるのに」
「あっ・・・。そうだった・・・」
完全に変なスイッチが入ってしまったようだ。泣き腫らした所為か、テンションが狂っている。
羽月は親御さんに連絡をしたものの、返信は帰って来なかったものの、とりあえず、お互いの自転車であたしの家に案内することにした。
「羽月は苦手な食べ物、何かある?」
「強いて言うなら、干しブドウと抹茶味のお菓子」
「チョイスのクセが強い」
「食べなくても、生きていけるでしょ?」
「じゃあ、大丈夫だね。腕によりをかけるぞぉ」
「腕によりをかける前に勉強しなよ」
言い返せなかった。本当にそれなに尽きるのだから。
「じゃあ、羽月は点数覚えてるの?」
「国語 96 数学100 社会100 理科 98 英語 100」
「どうしたら、そんな聴いたことない点数取れるの?ドン引きなんだけど」
「私はあんたの点数を覚えていない方にドン引きだよ」
「あははははは」
それから、何を話しても、テストに絡んで来ると思えたので、あたしと羽月は無言になってしまった。
まだまだ、あたしと羽月には心の隔たりを感じた。そりゃそうか。 だって、あたし達、まだ何も知らないんだから。
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