20240702-2
鏡の世界に出入りする方法がわかった。五歳の息子に教わった。
鏡の世界に入るには「かがみにはいれ〜る」という薬を飲む。タマネギを煮込んでレモンとキウイを足して混ぜるとできる黒い液体だそうだ。
出るには「かがみからでれ〜る」という薬が必要。お肉を「ごちょんごちょん」にしてビスケットとお茶を混ぜればできる紫色の液体。これを持って行くのを忘れると鏡の世界から一生出られなくなるので要注意だ。
鏡の世界は全てが「逆さま」らしいが、詳しいことは重要な機密なのか教えてもらえなかった。とにかく、ベッドもテレビもジョブレイバーも「逆さま」らしい。
ここまでメモしたところで新たな情報が手に入った。どの鏡から出入りできるかは決まっているらしい。我が家の場合は洗面所の鏡である。廊下の姿見ではダメなようだ。
ちなみに、鏡の世界に入った瞬間に、鏡の世界側から「もう一人の自分」がこちら側の世界へと飛び出してきて、鏡の中に入った「自分」と同じ行動を取るそうだ。
ここまで詳しいことを知っているにも関わらず、息子が鏡の世界に行こうとしないのは、まだガスコンロの使い方を教えていないせいかもしれないのだが、前述のことがあるのでわからない。今ここにいる息子は「元々の息子」なのか「鏡の世界からやってきた息子」なのか見分けがつかないからである。既に彼らは出入りを繰り返しているのかもしれない。確かめる術はない。
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