審判の日

「みなさん、本日は審判の日です。どなたさまもどうか、充実した一日を過ごされますよう」


 テレビのニュースキャスターはそう言って、ペコリと頭を下げた。


「ふん、くだらない……」


 俺はテレビを消し、マグカップのコーヒーをすすった。


「この世の終わりだってのに、俺はひとりぼっちか……」


 散らかった部屋は薄暗く、簡単な生活用具と、本の山があるくらいだ。


「審判の日ねえ。けっこうじゃないか」


 AIが計算したとおりなら、もう少しで隕石が地球を直撃するはずだ。


「いいんじゃない? 人類なかよく破滅しましょうや」


 無音だとやはりさびしいな。


「やっぱテレビはつけとこうかな……」


 ピンポーン。


「おや?」


 いったい誰だ。


 こんな落伍者の俺をたずねてくるとは、どこの物好きなんだか。


「はい」


「〇〇さんですね?」


「そ、そうですが……」


「あなた、アウト~!」


「は?」


「生きるの、あきらめてたでしょ? だから、アウト~!」


「あんた、ふざけるのもいいかげんに……」


「ふざけてなんかないですよ。だって今日は、審判の日でしょ?」


「……」


「そう、わたしは審判です。〇〇さん、あなたはアウト~!」


「……バカバカしい」


 俺はタバコに火をつけた。


 この世の終わりなんて、こんなものなんだな。

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