第14話:やっぱり沢城君は優しいなぁ……(瑠香視点)

 飲み会が終わった後。


「いやー、今日も凄く美味しいご飯だったね」

「うん、そうだね。でも今日は色々と食べちゃってもうお腹いっぱいだよ」

「あはは、俺もいつもよりも食べすぎてもうお腹いっぱいだよ。でも外食だと色々な種類の料理を食べれるから良いよね。最近はずっと自炊してたから今日は色々な料理が食べれて楽しかったよ」

「ふふ、そうだよね。私も今日は色々な料理を食べれて楽しかったよー」


 私と沢城君はそんな他愛無い話をしながら駅の方へと向かって歩いて行った。


(ふふ、でも今日の飲み会は本当に楽しかったなぁ。出来る事ならまたすぐにでも沢城君と二人で飲み会をしていきたいなぁ……)


「あ、そうだ! それじゃあさ、これからも良かったら定期的に飲み会とか開かない? また二人きりで一緒に飲みたいなって……」

「え? これからも?」

「うん、そうそう! ほ、ほら、沢城君はサークルを追放されちゃったじゃない? でも私達は普通に友達同士だしさ、だからこれからも定期的に二人きりで飲み会を開催したいなーって思って……駄目かな?」


 という事で私は沢城君に思い切ってそんな提案をしていってみた。すると沢城君は……。


「うん、全然良いよ! でも四条さんの場合はお酒飲めない方だし、どっちかという飲み会よりも食事会にした方が良いんじゃないかな? だからどうかな? 良かったらこれからはサークルでやってたような飲み会じゃなくてさ、普通に美味しいご飯を食べに行くご飯会にしないかな?」

「え……い、いいの? それは私はお酒が苦手だから、そっちの方が嬉しいけど……でも沢城君はお酒が好きでしょ? それならやっぱりいつものサークルみたいな飲み会の方が良いんじゃないかしら?」

「あはは、そんな事ないよー! 俺は料理も結構するから普通にご飯を食べるのも大好きだしね。それにさ……俺はお酒なんて飲まなくても四条さんと普通にご飯を食べながら話をするだけで十分楽しいからね!」

「さ、沢城君……」


 沢城君にそんな嬉しい事を言われて、私はお腹の奥の方がきゅんと温かくなっていくのを感じとっていった。


 沢城君はサークルの中では一二位を争う程にお酒に強いタイプで、もちろんお酒も大好きな男の子なんだ。


 そんなお酒が強くて好きなタイプなのに……沢城君はお酒が苦手な私のために私に合わせると言ってきてくれた。しかもそれだけじゃなく、私と一緒にいるだけで十分楽しいとまで言ってくれた。


(あぁ、本当にもう……沢城君は凄く優しいなぁ……)


 本当に沢城君は凄く優しい男の子だよね。思い返してみれば私は大学の入学式の日から沢城君に助けて貰ったし、それ以降も沢城君は私の事を何度も助けてくれたんだよね。


 しかも沢城君は他の男達……いや、私の身体目当てで近づいてくるような野蛮人とは違って、沢城君は純粋に善意のみでいつも私の事を助けようと思って毎回手を差しのべてきてくれるんだ。


(こんなにも紳士な男の人は……世界中を探しても絶対に見つからないよ……)


 という事で私はそんな事を思っていきながらも、私は満面の笑みを浮かべて沢城君にこう言っていった。


「ふふ、沢城君にそう言って貰えて凄く嬉しいよ。それに私も沢城君と一緒にご飯を食べてお話出来るだけで楽しいよ。だからこれからは……色々と美味しいお店を探して一緒にご飯会をしていきましょうね!」

「うん、わかった! それじゃあ早速美味しそうなお店とか探しておくね!」

「うん! それじゃあ私も色々と美味しそうなお店の情報を沢山探していくよ!」


 という事でこれからも私達は二人きりで楽しくご飯会を開く事が決定した。思い切ってそんな提案をしてみて本当に良かったわ。


(それに今日は凄く重要な話も聞けたし……ふふ、最高の一日だったわね……)


 今日の飲み会で私は沢城君の新たな情報を得る事が出来た。


 それは沢城君がまだ誰とも一度もお付き合いをした事がないという情報だ。という事はやっぱり……沢城君は女性経験はまだ一度もないという事になるよね?


 いや、まぁもしも沢城君が私に黙ってえっちぃお店に行ってるとかなら別だけど……でも沢城君はあのクソ男共とは違って真面目な男の子だからそんなえっちぃお店には行ってないはずだ。うん、という事は沢城君は女性経験はないはずね!


(あぁ、本当に良かったよ……私の沢城君が……他の誰かに寝取られたなんて事が一度もなくてさ……)


 沢城君のサークル追放の理由が、私以外の女とエッチしまくってたからなんて聞いた時には気が狂いそうになったけど、でもやっぱりそれらは全部嘘だったという事だ。あぁ、本当に良かった。


 ……って、あれ? でもさ、それらが全部嘘だったという事は……。


(……ふふ、そっかそっかぁ……それじゃあやっぱり……あのクソ男共が……沢城君をハメたという事なのね……?)


 クソ男共とはもちろんサークルの部長である久住と取り巻きの鳴海の事だ。


 アイツらはいつも飲み会の時に酔っぱらったフリをしながら私の胸や太ももを触ってこようとするゴミカスだ。しかも何とかして私の事を抱きたいと思っている本当にどうしようもない野蛮人共だ。


 でもそんなセクハラをしてくる度に沢城君が私とクソ男の間に入っていつも私の盾になってきてくれるんだ。しかも沢城君はそんなゴミカス共とは違って私の身体を無暗に触ったりなんて絶対にしてこないんだ。


(ふふ、そんな素晴らしい紳士のような優しい精神を持っているなんて、本当にすっごくカッコ良いわよね……沢城君って……)


 でもそんな優しい沢城君は突然ゴミカス共によって理不尽にサークルを追放されてしまったんだ。しかも沢城君の名誉を激しく傷つけるような形でだ……。


 ふふ、でもあの時に言った追放理由が全部嘘だったって言うのなら……あんなにも優しくて紳士的な沢城君の名誉を激しく傷つけて追放したあのカス共には……それ相応の報いを受けさせなければならないわね……くすくす……。


「……? どうしたの四条さん? 何だかちょっと怖い笑いを浮かべてない?」

「くすくす……って、え? そんな事はないわよ? ほら、いつも通りでしょ?」

「う、うん? まぁそう言われてみればそうかも? うーん、それじゃあ俺の見間違いかな?」

「ふふ、そうよ? もしかしたら沢城君は久しぶりの飲み会で疲れてるのかもね。今日は早くに寝た方が良いんじゃないかな?」

「はは、確かにそうかもね。うん、わかった。それじゃあ今日は早めに寝る事にするよ……って、あぁ、もう駅に着いちゃったね」

「え? あ、本当だね……」


 という事でそんな雑談をしていたらついに駅前に到着してしまった。お互いに使っている路線は違うので今日はこれでもう沢城君とはお別れだ。とても悲しいけど仕方ない事だよね。

 

「それじゃあ今日は楽しかったよ。ありがとう、四条さん」

「うん、私こそ本当に楽しかったよ。今日はありがとう沢城君!」

「それなら良かった。それじゃあまた明日ね」

「うん、また明日ね」


 そう言って私達は駅前で解散をしていった。そして私は先に改札に入って駅の中に入って行くと、沢城君は改札前で私に向かって手を振っていってくれていた。


「ふふ……本当に優しいなぁ……沢城君は……」


 私はそんな愛くるしい沢城君の姿に胸をキュンとさせつつ、私は満面の笑みを浮かべて沢城君に手を振りながら駅のホームに向かって歩いて行った。


 という事で今日は最初から最後までとても楽しく最高の飲み会となったのであった。本当に沢城君には感謝だね!


「ふふ……ふぅ、さてと」


 駅のホームから沢城君が見えなくなる所まで満面の笑みで手を振っていった後、私は一瞬にしてスンっと真顔に戻していった。


 それはもちろんあのクソ男共に制裁を加える算段を考えていくためだ。ふふ、この報いは必ず……。

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