チャイナドレスから始めるメンヘラブコメ
秦波多乃
第1話
真っ赤なチャイナドレスから覗く一見すると華奢だがよく見ると骨張った手足。そして何より、布越しでもわかる局部の膨らみ。
正直に言おう、俺はエロい。生まれて初めて女装をしてみたがこんなにも似合うとは思わなかった。昔から顔だけが取り柄だったが余りに似合いすぎている。同級生が見たら性癖がぶっ壊れるレベルだ。
ちょっと待て、一度落ち着こう。このままだと絶対過ちを犯してしまう…、流石のナルシストでも自分自身で抜くのはまずい、男としても人としても終わってしまう。そう判断した俺は手早く写真だけ撮るとすぐにチャイナドレスを脱いだ。正直に言うと名残惜しい気持ちもあったが理性を優先した結果である。
こんな時は好きな人の事を考えよう。思考を真っ当な男子高校生に寄せるんだ。俺、佐久間葵は恋をしている。同じ部活の涼野そら先輩だ。今入っている化学部も正直に言うと化学なんて興味ないのに先輩目当てで入部した。しかし俺の通う高校は何を隠そう工業高校、そのため男女比が極端に偏っておりライバルが多い。しかも噂では涼野先輩には好きな人がいるとか…、考えただけで萎えてきた…。
俺は顔には多少自信があるが不思議と本当にモテないのだ。何か原因があるなら誰か教えて欲しい。まあおそらく性格だろうが、周りが見る目がないだけということにしておこう。なんだかむしゃくしゃしてきた。さっきの自撮り(もちろん上半身のみ)をストーリーにでもあげて高校のやつらの工業病を悪化させてやるか…、
ストーリーをあげて数分後、ある人からDMが届いた。部活の三浦先輩…、一応…女子らしい。
三浦先輩「これあおちゃん?!やばすぎるだろ、痴女じゃんこんなの」
俺「そうだよ、可愛いでしょ僕」
三浦先輩「キッツ…、モブおじ手配しとくね(ピースの絵文字)」
俺「最悪、セクハラですよそれ」
三浦先輩「ちがうよ、教育だよ」
俺「はあ……、」
リアルでもため息が出た。涼野先輩と比べて何なんだこいつほんとに、色気も何も無い。だが悔しいことにおそらく一番仲のいい先輩でもある、かなりの頻度でラインをするしテスト期間には遅くまで電話をする事もある。
内容は男友達と話すことよりもひどいため中々周りに自慢できない、というかこいつと電話したところでなんの自慢にもならない。ほんとになんでこんなに違うんだ…、
ふと思いつく、そういえば涼野先輩はこの自撮りをもう見たのだろうか、すこし胸を高鳴らせながらストーリーの足跡を確認する。____既読だけだ。キモいと思われたのだろうか……、一応文化祭で着るための試着の体なのだが引かれていたらちょっと立ち直れないかもしれない。そんな事を考えてると三浦先輩からギョッとする内容の通知が来た、慌てて確認する。
三浦先輩「あおちゃんってさー、そらの事好きなの?」
バレてる…だと…、こいつにバレるのは一番やばい。絶対いじり倒される。ほんとうにまずい。慌てて訂正をする。
俺「え」
俺「どうしたゆすか急に」
まずい、誤字った。
三浦先輩「なんかそらと話すときだけ露骨に目キラキラしてるよお前」
「正直に言いな」
詰んだ…、もうだめだ…
俺「はい…」
「入部のときからです…」
三浦先輩「青春だね〜(なんかニヤニヤしてる絵文字)、先輩にもっと教えてよ〜」
カスカスカスカス、だからこいつにはバレたくなかったのに。
俺「いや〜汗、厳しいっす…」
三浦先輩「拒否権はない、電話かけるぞ」
徹夜コース確定だ。もうどうせなら全部話してやる。
俺「ちょっと待て」
「イヤホンだけ取ってくるから」
三浦先輩「早くしろ」
俺「はい」
「いけます」
そんなこんなで俺と先輩の電話という名の事情聴取が始まったのだった___。
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