骨まで愛して

天川裕司

骨まで愛して

タイトル:骨まで愛して


ト書き〈出版社〉


俺は出版社に勤める編集長。

俺の元にはいろんな原稿が舞い込んでくる。


そんなある日、妙な原稿…と言うより写真が舞い込んできた。


「なんだこれ?……レントゲン写真?…骨…?」


どう見ても病院で見るようなレントゲン写真。

だから多分、中に写ってるのも人の骨?


「ンだよこれ。ここは原稿を持ってくる所だっつうの!」

と気に留めず、ゴミ箱にポイ。


でもそれから毎日のようにその写真が送られてくる。


「ほんといい加減にしろよなこいつ!一体誰なんだよ!誰だぁ!」


なんてことを言ってたら、その翌週の月曜日。


彼女「あ、あの、前からずっと好きでした」


と部下の恩田香織くんが俺の元へ寄ってきてそう言った。

恩田くんはこの出版社の中でもまぁまぁ高嶺の花で、

器量はそれほど良くなかったが男臭いこの職場ながら

その効果が発揮され、高嶺の花にまで育っていたのだ。


「え?…お、おれ?(オレでいいの?」w」

的な妄想が俺の恋心を芽生えさせ、

恩田くんをその日から愛してしまったのだ。


そしてホテルへ直行して愛の営みをしていた時、彼女はポツリ…


彼女「フフ、編集長はもう私の骨まで愛してくれたんだから、これからもずっと一緒よね♪」


みたいなことを言ってきた。


実は俺、あれからのちレントゲンの骨の写真をゴミ箱から拾い上げ、

自分の引き出しにずっとしまっておいたのだ。

なぜか妙に気が惹かれ、初めは興味本位だったのだが、

そのうち愛着のようなものを覚えてしまい、

これも何故かわからないけど

その骨の持ち主にまで愛情のようなものを芽生えさせてしまっていた。


そして今夜、恩田くんを抱いた時、

これもなんとなくだが、懐かしい感じがした


彼女「フフ、きっと懐かしい感じがしたのは、あの写真のせいよ♪」


俺が彼女を愛したすべてのことがわかってしまい、

俺はゴミ箱から拾い上げ、自分の引き出しに

しまっておいたあの骨の写真をさらに高く掲げ、

「これこそ『骨まで愛して』を実践したような恋なんじゃないか!?」

と一人勝手に感動し、ちょうどその時

『骨まで愛して』

という書籍が流行に乗っていたのもあって、

特集を組む上でその表紙にその骨の写真を掲載し、

巻頭を飾ってしまったのだ。


そう、これが何年かして改めて流行り始めた

あのレントゲン写真集の先駆けである。


人間、理性を捨ててこんなモノまで作り上げると言うのだから

想像力・独創力の領域は、やはり計り知れないものがあるらしい。

俺と恩田くんはその後、結婚した。

まぁ今まで子供はできなかったけど。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=Gpk-jQO7v6g

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骨まで愛して 天川裕司 @tenkawayuji

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