鏡供養 二十句

みきくきり

鏡供養 二十句


 春眠や白蛇はくだに呑まれゆくがごと


 吐息ひとつふたつ揺れつつちらす夢桜ゆめざくら


 穢れなきこと恥辱なり少年の指


 十字架を小函に寝かせ春終はる


 紋白蝶もんしろてふまどふがためのいのちなり


 夢見つつ喰はれゆきたる緋鯉かな


 刺青しせい彫られゆく少年のや初夏のそら


 根の国につまおくる夜雨甘し


 夏燕なつつばめなみだぞらにもまるを


 水中花ぬすみ棄つ初恋をおそれし


 絵蝋燭ゑらふそくのをとことけゆく憎悪ぞうをかな


 母知らぬ少年の夏蛇を裂く


 悪夢降る夜に飽きし自瀆じとくかな


 夏宙なつぞらや海をわたりし象ねむる


 鏡供養かがみくやうへてかへれば我をらず


 筆相ひつさうの示すや千年後の嬰児殺し


 ゆくさきはくらそらなりとりむし


 検屍解剖されつつ夢を見る花弁はな一枚


 恋へて天象儀てんしやうぎうごくときを待つ


 それなりに生きるふりする小蝿こばへかな


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